言語構造論A

普遍文法とは何か、人間言語の最適設計や経済性原理、言語への生物学的アプローチなどを概述した上で、いくつかの統語現象をとりあげ具体的な分析を紹介しながら人間言語の主に計算系(統語派生システム)のしくみを理解できるよう努める。また近年、学際的研究が推進されている言語の起源・進化についても考察する。

講義詳細

年度
2010年度
開講部局名
総合人間学部
教員/講師名
藤田 耕司(人間・環境学研究科 教授)

シラバス

開講年度・開講期 ~2010 対象学生 全学・2回生以上
教員
藤田 耕司(人間・環境学研究科 教授)
授業の概要・目的
理論言語学の立場から、人間の言語能力、特にその根幹をなす統語計算能力に関して解説する。

第1回 現代の理論言語学が言語能力の解明を通じて人間の本性に迫る企てであることを理解し、生成文法の基本的な問題設定と方法論を学ぶ。
第2回 人間言語が音声と意味を構造を介して繋ぐシステムであることを確認し、言語の構造依存性や転移特性について実例を通して理解する。
第3回 初期理論から原理・媒介変数理論に至る生成文法の理論展開を概観し、文法モデルがどのように整備・統合されてきたを理解する。
第4回 様々な移動現象とその制約を、一般操作としてのα移動および痕跡の認可条件によって説明する可能性について紹介する。
第5回 原理・媒介変数理論の基本的な考え方を、特に理論のモジュール性や主要部媒介変数を中心に解説する。
第6回 言語の句構造を規定するXバー理論と各語彙項目が持つ語彙情報の関係について解説する。
第7回 モジュール間の緊密な関係の一例として、格フィルタを中心にした格理論と束縛原理から構成される束縛理論を取り上げ、紹介・解説する。
第8回 現在の研究戦略であるミニマリスト・プログラムの基本的な方法論や、従来のアプローチとの主な違いを解説する。
第9回 生物言語学の立場から、言語進化とはどのような問題であり、生物進化との関係をどのように理解すべきであるかを解説する。
第10回 言語の成立経緯を外適応のプロセスに求める可能性について検討する。また生物学におけるモジュール進化や「エボデボ」の考え方について紹介する。
第11回 言語の基本的演算操作である「マージ」とその回帰的適用能力の進化・発生のプロセスについて多角的に検討する。
第12回 物体の系列的操作に見られる階層関係の構築と言語演算の形式的類似性に着目して、マージの前駆体としての「行動文法」の可能性を検討する。
第13回 人間言語固有の生産的な語彙能力の起源をマージとチャンク化に求めることを提案し、回帰性が統語論や言語のみならず、人間の多様な心的機能に広く見られる一般特性であることを確認する。
授業計画と内容
まず現代の認知科学における理論言語学の位置づけを確認した後、言語科学・統語論研究の基本的な方法論を紹介する。次に生成文法(Generative Grammar)のこれまでの発展に焦点をあて、人間の言語能力についてどのようなモデル化が試みられてきたか、多様な統語現象が一般法則によってどのように統一的に説明されてきたか、具体例をあげながら解説する。特に現在の研究プログラムであるミニマリスト・プログラムの特徴について、詳しく説明する。さらに、生物言語学(Biolinguistics)の立場から、生物進化の一例としての言語進化の問題を取り上げ、その研究の現状と展望について概説する。
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