日本古典文学入門

作品:(1)『伊勢物語』(つづき); (2)『源氏物語』 河上 志貴子(国際交流センター准教授)

授業の特色
日本古代から近世までの代表的な作品を通じて、繰り返し現れる日本古来の、さまざまな文学的理念、規範、価値等について考察すると共に、それらの文学的理念等が、どのように形成され、またどのような変遷を経て、現代にまで継承されてきたかについて考察を試みる。

授業の紹介
種々の作品を残した日本古典文学の作者達は、一体どのような出来事、事柄、性質によって刺激を受け、触発され、そして、その刺激に対し、いかに文学的に答えようとしたのだろうか。どのようなものを好み、どのようなものを敬遠したのだろうか。また、さまざまな文学的理念、規範や価値の中で、現代にまで継承されてきた概念には、どのようなものが見られるのだろうか。一方、変容されたものは、どのようにその変貌を遂げたのだろうか。
本授業では、奈良時代から江戸時代にかけての代表的な作品の精読を通じ、上記のような問題について考察する。日本の古典には、「もののあはれ」、「をかし」、「いろごのみ」、「無常」、「幽玄」、「花」、「風雅・風流」、「わび」、「さび」、「勧善懲悪」等々といった、幾つか重要なテーマを見出すことができる。同時に、「妻問ひ」、「隠遁」、「ますらを(振り)・たをやめ(振り)」、「判官贔屓」、「粋・いき・通」、「義理人情」等々、さまざまな社会的慣習、生き方、価値観等の類も見られる。これらの文学的理念、規範、価値等が、日本文学歴史上どのように形成、維持され、あるいは衰退していったかについて検討すると共に、現代において、どのように受け入れられ、あるいはどんなふうに変容されたかについて考察する。

講義詳細

年度・期
2010年度・後期
開催日
2010年11月04日 から 12月02日
開講部局名
全学共通科目
使用言語
英語
教員/講師名
河上 志貴子(国際交流センター 准教授)

シラバス

授業の概要・目的
本授業で取り扱う主なジャンル:
- 和歌(『萬葉集』、『古今和歌集』、『新古今和歌集』等)
- 史書(『古事記』、『日本書紀』等)
- 日記(『土佐日記』等)
- 物語、説話(『源氏物語』、『今昔物語(集)』、 『平家物語』等)
- 随筆(『枕草子』、『方丈記』、『徒然草』等)
- 歌論等(『無名抄』等)
- 能、浄瑠璃、歌舞伎(世阿弥、近松門左衛門等)
- 俳諧(『奥の細道』等)
- 浮世草子、読本等(『好色一代男』、『雨月物語』等)

また、上記の作品の作風や文体、表現技法等にも注目し、それらの役割について考察する。
授業計画と内容
11月4日 作品:『竹取物語』
時代:平安時代
ジャンル:物語
テーマ:理想の女性, 難題婿, 求婚等

11月11日 作品:(1)『竹取物語』(つづき); (2)『伊勢物語』
時代:平安時代
ジャンル:物語
テーマ:(1) 厭離穢土, 羽衣伝説等; (2) 理想の男性, みやび, 貴種流離等

11月18日 作品:(1)『伊勢物語』(つづき); (2)『源氏物語』
時代:平安時代
ジャンル:物語
テーマ:(1) みやび, ひなび, 色好み等; (2) 理想の男性・女性, 宿世, 一夫多妻制等

11月25日 作品:『源氏物語』(つづき)
時代:平安時代
ジャンル:物語
テーマ:貴種流離

12月2日 作品:(1)『源氏物語』(つづき); (2)『枕草子』
時代:平安時代
ジャンル:(1) 物語; (2) 随筆
テーマ:(1) 因果応報, 輪廻転生(平安時代と仏教),(ものの)あはれ; (2) をかし
成績評価の方法・観点
(1) 出席及び、授業への参加態度
(2) レポート
学生は各自で、好きな作品(またはその一部)を対象に、本授業で取り上げたテーマ(複数選択可)との関連について分析・考察したものをレポートにまとめ、提出することとする。また、授業期間中、レポート作成について授業担当の教員と相談できる機会もある。
教科書・参考書等
参考文献
Donald Keene (editor)『Anthology of Japanese Literature: from the earliest era to the mid-nineteenth century』(Grove Press)

Helen Craig McCullough (editor)『Classical Japanese Prose: An Anthology』(Stanford University Press)

Steven D. Carter (translator)『Traditional Japanese Poetry: An Anthology』(Stanford University Press)

Miner, Earl et al., The Princeton Companion to Classical Japanese Literature, Princeton University Press, 1985
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