臨床薬物学

授業の特色
薬剤師国家試験で問われる学習内容の4分の1以上を占める薬理学のうち,特に生活習慣病など,薬物治療が主となる重要な疾患領域を対象にする。初回の講義において,学習の到達目標が具体的な55種類の薬物リストによって提示される。

授業の紹介
循環器,血液系,泌尿器,呼吸器,消化器で発生する疾病の治療に用いられる薬物の薬理について,これら臓器の生理,疾患の疫学や発生機序,薬物治療のターゲットとなる生体分子と薬物の分子作用メカニズム,臨床応用での薬物選択における注意点や問題点に加え,新薬の開発動向や関連する学問領域の最新知見について講述する。受講者は解剖生理学や生化学など,人体に関する基本的な生物学的知識を有していることを前提としている。

講義詳細

開講部局名
薬学部
教員/講師名
金子 周司(薬学研究科 教授)
備考
過去問、模範解答例、成績分布、国試の追跡調査結果は下記URLに掲示。http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/channel/

試験
*各薬物の()内に記している数値は平均得点率です。
*採点方法
2回の試験を両方とも受験のこと
最終成績(点)=a+b/2
ただし,a=中間試験の点数,b=定期試験の点数,各100点満点

[2004年 臨床薬物学中間試験問題]
問 以下のA〜Dの薬物について,それぞれ(1)から(4)までの観点を含めて説明せよ.(2002.5.21)

(1) 適応症および期待される薬効
(2) 作用点および作用機序
(3) 投与ルート,副作用,薬物相互作用,禁忌症などの特徴
(4) 同じ薬効を有する他の薬物(2つ以上)との差異,比較,使い分け(ただし、AとDについては構造類似体2つ以上について説明せよ)

A.ジゴキシン(75.6%)
B.カプトプリル(66.4%)
C.ベラパミル(65.6%)
D.プロカインアミド(73.6%)

[2004年 臨床薬物学期末試験問題]
問 以下のA〜Eの薬物について,それぞれ(1)から(4)までの観点を含めて説明せよ.(2004.7.30)

(1) 適応症ないしは期待される薬効
(2) 作用点および作用機序
(3) 投与ルート,副作用,薬物相互作用,禁忌症などの特徴
(4) 同じ適応症に用いる他の薬物との差異,比較,使い分け(少なくとも各々2つ以上の薬物名を挙げよ)

A.クロフィブラート(73.5%)
B.シメチジン(76.5%)
C.スピロノラクトン(76.0%)
D.ヘパリン(77.5%)
E.ベクロメタゾン(63.0%)

成果
[臨床薬物学 成績追跡調査]
注意
*薬学部3回生向けに前期に開講している臨床薬物学の成績と,その1年後の大学院入試の成績,および1年半後の薬剤師国家試験の結果との相関性を解析した結果です。

平成15年度卒業生(14年度履修生)

第89回薬剤師国家試験
受験者数 合格者数 合格率
15年度新卒全体 75 59 79%
3回生受講者 76 58 76%
成績「優」以上 46 59 91%(#1)
成績「良」または「可」 19 12 63%(#2)
単位未認定(不合格)者 11 4 36%(#3)

#1, #2, #3群の間にカイ二乗検定で有意差あり (P < 0.001)
この学年で薬学研究科大学院修士過程に合格した人は59名で、そのうち臨床薬物学で「優」以上は39名、「良・可」は13名(他研究科への進学者は数えていません)。

その他,成績およびアンケート情報をwebにて開示
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/channel/ja/education/rinsho2004.html

シラバス

開講年度・開講期 〜2010
教員
金子 周司(薬学研究科 教授)
授業計画と内容
1. 導入講義:薬物リストによる授業目標の設定、国試傾向の分析、循環器導入
2. 不整脈治療薬:心臓の興奮伝導系、イオンチャネルへの作用と薬物分類
3. 心不全治療薬:うっ血性心不全の病態、強心配糖体から新薬まで
4. 狭心症治療薬:労作狭心症と安静狭心症、発作治療薬と発作予防薬
5. 高血圧治療薬(1):高血圧の疫学、多様な降圧薬の作用点と作用機序
6. 高血圧治療薬(2):合併症による薬剤の選択、より新しい降圧薬
7. 中間試験
8. 血液凝固系作用薬:血小板凝集メカニズムと抗血小板薬,凝固系と線溶系
9. 血液産生系作用薬:貧血の種類、造血系サイトカインとバイオ新薬
10. 高脂血症治療薬:動脈硬化の発生機序、コレステロールとリポ蛋白の代謝
11. 泌尿器系治療薬:浮腫と利尿薬、老齢化と排尿障害の社会問題と薬物治療
12. 呼吸器系作用薬:呼吸の生理、呼吸興奮剤、アレルギー性気管支喘息
13. 消化性潰瘍治療薬:胃酸分泌抑制薬と胃粘膜保護薬、ピロリ菌除菌
成績評価の方法・観点
第7回に行う中間試験の成績と、定期試験での成績を平均して算出する
教科書・参考書等
[1] 田中 千賀子 : 加藤 隆一 : NEW薬理学(改訂第4版), 南江堂, 2002

[2] Louis Sanford Goodman : Joel G. Hardman : Lee E. Limbird : Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics -Tenth Edition-, McGraw-Hill, 2001
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