Physical Chemistry I (Quantum Chemistry)

Numbering Code U-SCI00 22602 LJ60 Year/Term 2022 ・ First semester
Number of Credits 2 Course Type Lecture
Target Year 2nd year students or above Target Student
Language Japanese Day/Period Thu.1
Instructor name SUZUKI TOSHINORI (Graduate School of Science Professor)
Outline and Purpose of the Course 微視的な粒子である原子や分子は量子力学に支配され、特に電子は質量が小さいため量子効果が顕著です。現代化学は量子化学の基礎の上に積み上げられており、量子化学は化学の基礎として必須です。一方、量子化学は高校と大学の化学で大きく異なる部分であり、1回生対象の「基礎物理化学」の講義では、いろいろな事が天下り式に出て面食らう人も少なくないでしょう。本講義では、量子力学の基礎原理から学習を始め、1次元問題、調和振動子、剛体回転子、水素原子、変分法・摂動論までの学習を丁寧に進めます。この講義の目的は、厳密解が求まるような簡単な系を対象として量子力学の学習を進め、量子論の基礎概念を習得することです。分子の本格的な量子論は、この講義の後に続く量子化学1,2で学習しますが、本講義はその基礎となる知識を確実なものにします。
Course Goals シュレディンガー方程式の固有値と固有関数を求めることで、観測可能な物理量を予測する量子論の構造を理解します。1次元問題では、階段型のポテンシャルにおけるな物質波の反射や透過のイメージを掴み、トンネル効果についても理解します。調和振動子と剛体回転子では、離散的なエネルギー準位の構造と波動関数の形状(腹や節)、さらに昇降演算子の有効性などが理解できれば十分でしょう。水素原子では、量子数とその意味、波動関数の性質・形状の理解が非常に重要です。ここまでは、量子力学の概念、波動性の理解が主となります。変分法と摂動論では、上記のような厳密解が求まらない場合に、どのようにして物理量の期待値を求めるかを学習します。これは現実の物質・分子の計算を行う上で日常的に必要となる知識ですので、しっかり学習します。
Schedule and Contents 概ねMcQuarrieの本の流れに沿って次の様に進めます。括弧の中は予定している授業の回数です。量子論の夜明け(1), Schrodinger方程式と箱の中の粒子(1), 量子力学の一般原理と1次元問題(3), 調和振動子(3), 剛体回転子と水素原子(3), 摂動論と変分法(3)。PandAに授業資料をアップロードします。2021年の授業に関するフィードバックで、基礎物理化学を修得している学生諸君から、量子論の必要性などの前半部分よりも後半部分にもう少し時間をかけて欲しいという要望がありましたので、2022年は少しバランスを調整したいと思います。授業では、将来どの分野に進むにしても化学の学生として確実に学ばなければならないことは繰り返しにならざるを得ませんが(化学のカリキュラムは意図的にそうなっています)、着実に身につけている学生諸君が学習を深めるべき少しアドバンストな内容にも触れていきます。できるだけ安積先生の無料のテキストなど自学自習できる資料もあげてありますので、自分の興味でどんどん勉強して頂ければと思います。
Course Requirements None
Study outside of Class (preparation and review) 授業の前に該当する箇所をざっと予習しておくことを勧めます。
Textbooks Textbooks/References Quantum Chemistry 2nd edition, Donald A McQuarrie, (University Science Books), ISBN:978-1-891389-50-4
この本は非常に丁寧で良いのですが、高価なのが残念です。同じ著者が書いたマッカリー・サイモンの物理化学(東京化学同人)でも概ね代用できます。アトキンスの物理化学も詳しい内容を含んでいます。
References, etc. 学部学生のための量子化学講義ノート, 安積徹, (分子科学会), https://www.jstage.jst.go.jp/article/molsci/5/1/5_1_AC0005/_article/-char/ja/
量子化学ノート, 朽津耕三, (分子科学会), http://j-molsci.jp/archives/index.html
化学のための数学・物理, 河野裕彦, (裳華房), ISBN:978-4-7853-3421-5, 2019年出版の非常に新しい本。物理化学を学ぶ上で必要な数学を分かりやすく纏めており、web上にはより高度な内容の解説も纏めている良書。本講義で基礎数学などの部分が分からなかった場合は参照してください。
量子力学(I), 小出昭一郎, (裳華房), もう古いのだろうと思いますが、自分が学部学生時代わかりやすいと思った本なので。
Introduction to Quantum Mechanics (3rd edition), Griffiths and Schroeter, (Cambridge), ISBN:978-1-107-18963-8, 昔我々が勉強した格調高い量子力学の本(そういうのしか無かった)と比べると、随分プラクティカルな本です。
Principles of Quantum Mechanics as applied to Chemistry and Chemical Physics, Donald D. Fitts, (Cambridge), ISBN:978-0-521-65841-6, この講義の範囲と概ね合っているようですが、量子化学全体から言うと基礎の部分に特化しています。
安積徹先生、朽津耕三先生の講義ノートは無料でダウンロードできます。また、量子化学の他に自分が分かりやすいと思う量子力学の教科書を1冊持っていると学習に役立ちます。
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