特別講義「倒産処理法(総論・法人破産)」

Numbering Code U-LAW00 31832 LJ41 Year/Term 2022 ・ First semester
Number of Credits 2 Course Type Lecture
Target Year Target Student
Language Japanese Day/Period Wed.1
Instructor name YAMAMOTO KATSUMI (Graduate School of Law Professor)
Outline and Purpose of the Course 【全面オンライン方式】

 法的な主体が経済的な危機に陥った(倒産した)場合、法は、その者の財産的な法律関係を集団的なスキームで処理するための手続である倒産処理手続を用意している。破産手続はこのような倒産処理手続の一種であり、かつ、最も基本的な倒産処理手続である。
 この破産手続を定める破産法は、手続法的な側面をも有しているが、私法的な法律関係についての民法などの民事実体法の特則(破産実体法)をも定めている。この破産実体法は、債務者の破産という一種の究極的な状況において、担保物権、債権、契約関係などがどのように扱われるかを規律するものであり、これを学ぶことは、民法のうち財産法の理解に非常に有益である。また、実社会においても、取引先が破産した場合の法律関係を知っていることは、職種によっては大いに役に立つ。特に金融機関に勤務する者にとっては必須の法律知識である。
 この授業では、この破産実体法に重点を置いて、破産法の概要を講義する。その目的は、社会人として倒産現象に遭遇した場合に、その法的な処理がどうなるかについて、概略的な理解を得させることにある。そして、破産制度の経済的な意義に留意しながら、法人破産に焦点を当てて、破産法の全体像を明らかにする(なお、個人破産の詳細は、特別講義「再生・更生・個人破産」に譲る)。破産法は倒産処理法の基本法であるので、この講義は倒産処理法総論的な意味合いをも有している。
 この科目は、法科大学院との共通科目である。
Course Goals  破産法(特に破産実体法)の諸概念や諸制度とともに、債務者の破産という究極的 な状態において、債権、担保権、契約などがどのように扱われるかを理解し、実社会においてその知識を活かすことができるようになる。また、民事再生法・会社更生法を理解するための基礎的な素養を身につける。
Schedule and Contents 第1回 倒産処理の必要性と倒産処理手続の種類
経済現象としての倒産とそれに対する集団的な処理の必要性、倒産処理の2つの方向性(清算と再建)、倒産処理手続の種類、任意整理
第2回・第3回 破産能力者と破産手続上の機構
破産手続の対象となる債務者の属性、法人破産と自然人破産の相違、破産手続上の機構(破産裁判所、破産管財人、債権者集会など)、破産管財人の地位
第4回 破産手続の開始1 開始要件と開始手続
開始要件(支払不能と債務超過)、破産手続開始申立権者、保全処分、開始原因の審理、破産手続開始決定と同時処分・付随処分、不服申立て
第5回 破産手続の開始2 破産手続開始の効果
破産手続開始の人的な効果(法人の解散)、破産財団の形成(法人破産における固定主義の意義)、破産債権と破産債権者の権利行使(個別的権利行使の禁止)、多数当事者債権債務関係
第6回 破産者に対する権利の処遇1 各種の債権者の地位、取戻権
財団債権(共益費用性を持つ財団債権と政策的考慮に基づく財団債権)、破産債権とその種類、取戻権
第7回 破産者に対する権利の処遇2 別除権・相殺権・社員権
別除権(別除権となる権利、不足額の原則)、相殺権の拡張、破産法人の社員の権利
第8回 破産財団の回復1 否認の一般的要件
有害性(詐害否認と偏頗否認)、債務者行為性の要否、詐害行為の否認、適正価格売買の否認、無償否認、偏頗行為の否認
第9回 破産財団の回復2 特別の否認要件、否認の効果、相殺禁止
特別の否認要件(執行行為の否認、対抗要件否認など)、否認の効果(詐害否認と偏頗否認)、相殺禁止
第10回 継続中・未解決の法律関係の処理1 存続中の契約の処理
双方未履行契約についての一般的な処理枠組、特殊な契約(継続的供給契約、労働契約、請負契約、賃貸借契約、委任契約など)
第11回 継続中・未解決の法律関係の処理2 係属中の手続の処理、法人の役員の処遇
係属中の訴訟手続と行政手続、他の倒産処理手続との関係、民事執行手続・保全手続・滞納処分等、破産法人の役員の地位とこれに対する責任追及
第12回 破産債権の届出・調査・確定
債権の届出とその追完、債権調査の方式、債権確定の手続と効果 破産財団の管理・換価と配当
第13回 破産手続の進行
破産財団の管理と管財人の監督、破産財団の換価(特に営業譲渡、別除権の目的物の売却)、配当の手続
第14回 破産手続の終了
最後配当による破産手続の終結、破産の取消し、破産手続の廃止
第15回 フィードバック
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