ILAS Seminar :Introduction to Advanced Future Studies - The dialog among natural science, philosophy and arts

Numbering Code U-LAS70 10001 SJ50 Year/Term 2022 ・ First semester
Number of Credits 2 Course Type seminar
Target Year Mainly 1st year students Target Student For all majors
Language Japanese Day/Period Wed.5
Instructor name MURASE MASATOSHI (Yukawa Institute for Theoretical Physics Associate Professor)
Outline and Purpose of the Course 未来創成学への招待

このILASセミナー集中型は、前期ILASセミナー「ILASセミナー :人間とは何か?-生命現象の自然科学的・哲学的基礎」とリンクしています。このセミナーに抽選漏れされた学生さんは、本セミナーを受講されることをおすすめします。

知識を学ぶだけでは飽き飽きしたみなさん。学術の世界は、「仮説が事実をつくり、思考が現実をつくる」時代に入っていることに気づいていますか?私たちは、問題発見-仮説提唱-検証作業のサイクルを回しながら、ヒッグズ粒子の発見、重力波の発見から、iPS細胞の発見、あるいは無意識世界の発見を行ってきました。創造性、アイデアこそ、未来世界を作り出す人間力なのです。このゼミでは、そうした学術創成にみなさんとともに挑みます。

【学問創成の意義】
グローバル化時代を迎え、現代社会は、科学・技術・環境・教育・医療・政治・経済といった多様なシステムと人間が複雑に絡み合う巨大な「生きた」システムと化してしまった。その結果、私たち人類は、ミクロな素粒子の世界からマクロな宇宙の世界に至るまで、奇跡的な出来事を次々と可能にしてきた。ところが、その一方で、一部のシステムを最適化・効率化するあまり、全体システムが破綻しかねない脆弱性をはからずも生み出してしまうという予期せぬ事態に直面することになった。これがシュンペーターの有名な表現である「創造的破壊」に他ならない。社会全体としての「生きた」システムの複雑性や不安定性によって、ちょっとした出来事が大混乱を招いてしまい、あとになって隠れていた依存関係が明らかとなることが多い。切迫した問題は多様なシステムの境界領域で発生する。そのために、個々のシステムを深く理解していても、問題自体が発生することを予想することは不可能に近い。ここに異分野統合による新たな学問創造を目指す意義がある。

【目的】
本講義では、「ものの見方」を根本からみなおした上で、明るい未来を創成可能とする新しい「未来創成学」を構築し、身近な対象において実践的に検証していくことを目的とする。ここで、新たな「ものの見方」とは、自然災害などの想定外の事態が起こること、人間が間違いをおかしてしまうことを「前提」とした上で、学問の創成を試みることである。極論するならば、アンドリュー・ゾッリが指摘するように、失敗や誤りを必要とするシステムの基本原理を探求することが急務である。そのためには、一度に、一つの方法、一つの範囲、一つの尺度で行動するのではなく、ある部分領域に関心を向けるならば、それよりも小さな領域と大きな領域を並行して捉えるとともに、一つの領域の変化過程に関心を向けるならば、それよりも速く変化する過程と遅く変化する過程にも注目する必要がある。生物学、経済学、教育学、看護学、生態学という異なるシステムにおいて、それぞれ異なる研究者が似たような問題に直面している。そのため普遍的な枠組みができれば、ある分野で成功した方法を別の分野に応用する可能性が期待できる。それは「臨床経済学」「臨床環境看護学」といった新たな学問創成につながる。こうした発展可能性が「未来創成学」の醍醐味である。
Course Goals 知識を知るということと、知識の活用方法を知るということには、根本的な違いがある。本ゼミでは、知識をただ学ぶことはしない。そうではなく、1つの知識からみなさん自身が主体的に様々な知識を作り出すことができることを体験したい。この体験は、単なる大学の学習世界のレベルを超え、日常生活、クラブ活動、社会活動など、様々な分野で応用可能となる。ゼミでは、自然科学、人文科学、芸術、運動学など多様な分野から、普遍的な原理の探求が捉えられるよう、話題提供と議論をバランス良く取り混ぜながら、自ら考え・学び・実践できることを目指します。
Schedule and Contents 本ゼミは、前期実施の「ILASセミナー 人間とは何か?:生命現象の自然科学的・哲学的基礎 」と相補的な内容から構成します。

第1回 参加学生の自己紹介およびゼミの進め方について概説する。

第2~4回 「生命基礎論」について課題を提示し、それをもとに討論を行う。
特に、『歴史としての生命』を参考にしながら、生命現象を考察してみたい。ここでのポイントは、生命現象の認識と「認識についての認識」、すなわちメタ認識を体験する試みにある。

第5~9回 生命現象とその現象の意味をさらに全体論・システム論的に探ることによって、現象に対する理解と認識がどのように深まるかを、各自の体験にもとづいて検討したい。『The Systems View of Life』(Cambridge University Press)を参考としながら、以下のポイントを検討する。認識にもメタ認識があるように、生物学にもメタ生物学という観点があることを自得することにある。

第10~15回 上記において試みた2種類の、いわゆる「高次化」のプロセスが、実は生命現象そのものの本質にほかならないことを再度確認する。特に、最終回では、考えることの意義、難しさを実感してもらいながら、問題を発見するとはどういうことか、解決への道筋とはどういうプロセスかなどを全体を振り返って、包括的に考えたい。『The Self-organizing Universe』(MIT press)の論考を踏まえながら、新たな展望『未来創成学の展望』を展開する。

「授業はフィードバックを含め全15回行う」
Evaluation Methods and Policy 出席と参加の状況、意見の発表、課題への取り組みを総合的に判断します。
(レポート50%、出席と参加の状況30%、意見発表10%、課題への取り組み10%)
Course Requirements None
Study outside of Class (preparation and review) このセミナーでは、「想定外事態」にどのように対処するかを、学びの世界で体験することが、1つの狙いです。そのため、セミナーでは、学生と教員の議論、学生同士の議論、グループ学習など、メンバーの構成を随時変えながら、多くの課題に挑戦します。さらに、講義時間外において、各自が講義内容を振りかえり、日常生活の中で実践的に取り組むことが、極めて重要です。その方法については、セミナー中で指示します。
Textbooks Textbooks/References 増補・復刻版 歴史としての生命-自己非自己循環理論の構築, 村瀬雅俊・村瀬智子, (ナカニシヤ出版、2022年)

-------------------------
参考までに:

村瀬雅俊『歴史としての生命-自己・非自己循環理論の構築』京都大学学術出版会2000年
山極壽一・村瀬雅俊・西平直『未来創成学の展望-逆説・非連続・普遍性に挑む-』ナカニシヤ出版 2020年
村瀬雅俊・村瀬智子『未来共創の哲学-自己・非自己循環理論の展開-』
言叢社 2020年
ジェフリー・サックス『世界を救う処方箋』早川書病 2012
アンドリュー・ゾッリ『レジリエンス 復活力』ダイヤモンド社 2013
ジョン・マッキー『世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー』 SE出版 2014
References, etc. 未来創成学の展望-逆説・非連続・普遍性に挑む-, 山極壽一・村瀬雅俊・西平直, (ナカニシヤ出版), 15章からなる文理融合研究の成果をまとめています。2020年3月の出版。
未来共創の哲学-自己・非自己循環理論の展開-, 村瀬雅俊・村瀬智子, (言叢社 ), 生命の大統一理論、自己・非自己循環理論について20年の研究成果をまとめています。2020年3月の出版。
PAGE TOP