Physical Anthropology I

Numbering Code U-LAS14 20010 LJ68 Year/Term 2022 ・ First semester
Number of Credits 2 Course Type Lecture
Target Year Mainly 1st & 2nd year students Target Student For all majors
Language Japanese Day/Period Wed.2
Instructor name NAKAMURA MICHIO (Graduate School of Science Associate Professor)
Outline and Purpose of the Course 「私はいったい何者なのか?」「人間とは、人間性とは何なのか?」
誰もが一度は問うたことがあるのではないでしょうか。

自然人類学は、人間もまた一つの生物種(ヒト)であると捉えることでこの問いにアプローチする学問です。その際に重要な視点の一つが、ヒトをヒトに近縁な他の生物種と比較してみることです。前期開講の「自然人類学I」では、フィールドワークを通して分かってきた現生の野生霊長類の社会や生態、行動に関するさまざまな知見を紹介しつつ、上記の問題について考えます。

人間について知ろうとする学問の多くは、しばしば人間の特殊性を強調することが多いですが、本講義ではできる限りヒトを相対化し、他の霊長類や動物と比較することを通じて人間を知ることに繋げたいと思います。
Course Goals 霊長類の社会・生態・行動などに関する基礎的な知見を身につけるとともに、自分自身が属する種(ヒト)をその中に位置付けるという考え方を養う。
Schedule and Contents 第1回 イントロ:自然における「人間」の位置
ヒトはしばしば「人間と動物」という区分で自分自身を特別視しますが、ヒトもまた一動物種です。霊長類をはじめとした他の動物との比較によって、生物としてのヒトについて考えます。

第2回 霊長類の特徴と分類
種の概念や上位分類群名など生物分類を理解する上での最低限の知識を把握し、実際に現生霊長類がどのような特徴に基づいてどのように分類されているのかについて学びます。

第3回 日本霊長類学の研究史
野生霊長類の研究は、古くから日本人研究者(とくに京都大学の研究者)が先導してきた分野です。ここでは、日本での霊長類研究史を概観し、それが現在の研究動向にどう関わっているのかを考えます。

第4回 野生霊長類の調査方法
フィールドでの霊長類調査はどういった形でなされているのでしょうか。ここでは霊長類学の調査方法についての概要を理解し、研究における方法論の重要性について考えます。

第5回 生態
すべての生物は、必ず他の生物と関わり合って暮らしています。野生の霊長類が何を食べているか、捕食者に襲われることはあるのかなどを学びつつ、それらがヒトの場合どうなっているのかを考えます。

第6回 社会
霊長類の多くは社会的な生活を送ります。霊長類の社会構造・社会関係・インタラクションに関する知見を概観しつつ、ヒトの社会がどのように成立したかについて考えます。

第7回 生涯
発達・繁殖・出産・老化など、個体の一生の間に生じるイベントなどを学び、霊長類の中でのヒトの生涯の特徴について考えます。

第8回 歴史
人間の社会に歴史があるのは当然ですが、ヒト以外の霊長類の社会はどうでしょうか。ここでは集団の盛衰・デモグラフィーの変化など、個体を超えるレベルでの時間変化を検討し歴史性について考えます。

第9回 悪
殺人や戦争など、人間社会では「悪」が尽きることはありません。霊長類社会での殺し・暴力・ハラスメントについて検討し、人間社会で「悪」と考えられる現象の起源について考えます。

第10回 平等性
全ての人間は平等であると言われます。ここでは、霊長類の順位関係・順位序列や食物分配、公平さ、遊びなどに関する知見を概観しつつ、平等性について考えます。

第11回 知性
知性はヒトを特徴付ける特徴であり、また霊長類を特徴付ける特徴の一つだと考えられています。道具使用・社会的知性・欺瞞などの例から、霊長類における知性の進化について考えます。

第12回 文化
人間の行動はしばしば生物学的にではなく文化的に決定されると言われます。ここでは、霊長類における文化的な行動の違いや社会的学習などについて学び、文化の起源について考えます。

第13回 言語
分節化された音声言語を持つことはヒト独特の特徴です。霊長類の音声コミュニケーションや身振りの研究、さまざまな言語進化仮説等について学び、ヒトの言語の起源について考えます。

第14回 霊長類の危機と保全
多くの霊長類の絶滅が危惧されており、霊長類を知ることと霊長類を保全することはもはや完全に切り離すことができません。絶滅を防ぐために身近なところで私たちができることなどについて考えます。

第15回 試験
第16回 フィードバック
Evaluation Methods and Policy 定期試験(筆記)で評価します。この評価は絶対評価(素点)で行います。
Course Requirements 自然人類学IIもぜひ受講してください。
高校での「生物」の履修は不要です。授業中必要になる知識については、授業内で適宜補足します。
Study outside of Class (preparation and review) 自分なりにノートを整理するなどして、授業中に分からなかった点をクリアにしておくとよいでしょう。
References, etc. 「サル学」の系譜, 中村美知夫, (中公叢書), ISBN:978-4120047565, 2015年,1,900 円+税
人間性はどこから来たか, 西田利貞, (京都大学学術出版会), ISBN:4-87698-079-9, 1999年(2007年),2,800円(学術選書版1,800円)
人類進化論-霊長類学からの展開, 山極寿一, (裳華房), ISBN:ISBN978-4-7853-5217-2, 2008年,1,900円
霊長類学を学ぶ人のために, 西田利貞・上原重男編, (世界思想社), ISBN:4-7907-0743-1, 1999年,2,400円
”ふつう”のサルが語るヒトの起源と進化, 中川尚史, (ぷねうま舎), ISBN:98794906791514, 2015年、2,300円
日本のサル学のあした:霊長類研究という「人間学」の可能性, 中川尚史,友永雅己,山極寿一(編), (京都通信社), ISBN:9784903473529, 2012年、2,000円
チンパンジー, 中村美知夫, (中公新書), 2009年、724円(現在電子書籍で入手可)
野生動物の行動観察法:実践 日本の哺乳類学, 井上英治,中川尚史,南正人, (東京大学出版会), ISBN:9784130622233, 2013年、3,200円
上記以外は、必要に応じて授業中に紹介します。
Related URL http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/nakamura/
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