複雑システムのモデル化と問題解決

Numbering Code G-INF05 63549 LJ10
G-INF05 63549 LJ77
Year/Term 2022 ・ Second semester
Number of Credits 2 Course Type Lecture
Target Year Target Student
Language Japanese Day/Period Wed.2
Instructor name KANOU MANABU (Graduate School of Informatics Professor)
Outline and Purpose of the Course 複雑な社会における様々な問題を解決するために役立つ,対象の捉え方および問題への取り組み方の習得を学習目標とする.提供する方法論を構成する基本要素は,対象システムのモデル化,問題解決の枠組みとしてのフィードバック制御,種々の制約や要望を考慮した最適化問題としての定式化およびその解法である.前半では,収支に着目することで,製造装置,人口動態,経営状態,地球環境等が動的システムとして同じ枠組みで扱えることを示すほか,データに基づく汎用的なモデル化方法,意思決定や行動のモデル化方法を取り扱う.後半では,不確実な環境下で目的を達成するための枠組みを提供するフィードバック制御の考え方,および問題解決を最適化問題を解くこととする考え方を提供する.具体的な問題について全員で検討・討議を行い,演習形式を採り入れながら,本講義で提供する道具を活用できるようになることを目指す.
Course Goals 複雑な社会における様々な問題を解決するために役立つ,対象の捉え方,モデル化の方法,および問題への取り組み方を様々な例を通して習得する.
Schedule and Contents 【第1回】 序
 本講義の目的や進め方等の説明を行う。
 対象や目的に応じて様々なモデルがあることを述べ,それらの特徴を概説する.モデルを構築するに際しては,どのモデルを用いるかに加えて,モデル化する範囲(境界)およびモデルの詳細度(抽象度)を決める必要があり,それらがモデルの妥当性に重大な影響を及ぼすことを指摘する。

【第2回】 恋愛微分方程式と軍拡モデル
 具体的なモデル化の一例として,恋愛する男女の心情や行動を表現する単純な微分方程式を取り上げ,極めて複雑に見える現象であっても,その特徴を簡単な数式で表現し,解析できることを示す。さらに,同じ微分方程式を用いて軍拡競争などもモデル化できることを述べる。

【第3~4回】 収支に着目したモデル
 モデル化の対象となるシステムは,その状態が時間と共に変化する動的システムであり,入力と出力と内部での生成・消滅によって時間変化を表現できる。原料を製品に変換する製造装置,ある地域の人口動態,組織の経営状態,地球環境等を,収支に着目して統一的に扱うモデル化方法について講述する。

【第5回】 回帰分析
 対象の入力,出力,状態の測定データが与えられる場合に,そのデータを最もよく表現するモデルを構築する統計的方法について述べる。まず初めに,基礎となる単回帰分析と重回帰分析について講述する。

【第6~7回】 主成分分析と多変量統計的プロセス管理
 代表的な多変量解析手法のひとつである主成分分析について後述する。さらに,主成分分析を利用して異常検出を行う方法である多変量統計的プロセス管理(MSPC)について述べる。

【第8回】 PLS
 統計モデルを構築する際に注意すべき多重共線性の問題を指摘し,この問題に対処できる方法として,Partial Least Squares(PLS)について講述する。

【第9回】 仮想計測技術
 PLSを含む統計モデルの応用として,仮想計測技術について後述する。仮想計測技術とは,オンライン計測が困難な製品品質などを,計測が容易な変数から推定する技術であり,ソフトセンサーやバーチャルメトロロジーといった名称で,様々な産業で活用されている。そのような産業応用事例についても紹介する。

【第10~11回】 統合化定義IDEFに基づく意思決定や行動のモデル
 社会的な問題は人間の行動と切り離すことができないため,IDEF0(アイデフゼロ;機能モデリングのための統合化定義)を用いて,人間の意思決定や行動をモデル化する方法について講述する。IDEF0は階層化された線図によるモデル化方法であり,業務プロセスのモデル化などに広く利用されている。 さらに,継続的な改善活動を支えるPDCAサイクルをIDEF0で表現する方法を紹介するとともに,PDCAサイクルとフィードバック制御の関連について解説する。

【第12回】 データ解析の実務
 データ解析は広く用いられているが,その簡便さゆえに誤用も目立つ。このため,正しく統計モデルを構築するために注意すべき点を指摘する。

【第13~14回】 問題解決
 現実の問題解決に際しては,様々な制約条件の下,複数の評価指標を考慮しつつ,最も良い解が何であるかを総合的に判断する必要がある。このような複雑な最適化問題を解くことを念頭に,問題を定式化する方法および最適化問題を解く方法について講述する。
 さらに,現実に意思決定や問題解決が求められる場面では,必ずしも適切に定式化された最適化問題が解かれるわけではない。組織や構成員が陥りやすい罠であるCapability Trap等を取り上げながら,留意すべき課題について述べる。

【第15回】 結
 講義全体の総括を行うと共に,いくつかの話題を提供する。
Evaluation Methods and Policy 期末レポート試験(60%)と平常点(40%)により評価する。なお,平常点には,講義への積極性や講義時に課すレポートの評価を含む。
Course Requirements 線形代数と微分積分の基礎知識を有することが望ましい。
Study outside of Class (preparation and review) 新しい概念や方法を修得するために,講義時にレポート課題を出すので,指示に従って提出する.
Textbooks Textbooks/References 必要に応じて資料を配付する。
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