言語教育設計学2
Numbering Code | G-HUM34 5F030 LJ37 | Year/Term | 2022 ・ Second semester | |
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Number of Credits | 2 | Course Type | Lecture | |
Target Year | Target Student | |||
Language | Japanese | Day/Period | Thu.3 | |
Instructor name | YANASE YOSUKE (Institute for Liberal Arts and Sciences Professor) | |||
Outline and Purpose of the Course |
この授業では言語教育の設計を、「全体性」、「個人」、「共同体」、「言語教育研究」の4つの観点から考察します。この授業の目的は、これら4つの観点から、言語教育における授業およびカリキュラムの設計について理論的に考察し、さらにそれを改善・再構築する力をつけることです。この力により、履修者が実際に教壇に立った際に、言語教育の改良に貢献できることを目指します。 なおこの授業での「言語教育」として考察する事例は主に日本における英語教育ですが、その他の事例にも時に言及します。またここでの「設計」として主に考えるのは、教師が(学習者からの協力をえながら)構想・実施できるレベルの設計・改善・再構築です。 |
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Course Goals |
・理論的目標:言語教育における授業やカリキュラムの設計において、単に自分の経験から考えるのではなく、理論的な観点から検討を加えることができるようになる。 ・理論的下位目標 (1):現在、軽視されがちな言語教育の身体的な側面にも配慮し、言語教育の全体性という観点から理論的に考察できるようになる。 ・理論的下位目標 (2):言語教師と言語学習者が個人として行う実践・技能修得、および個人を起点とする行為という観点から理論的に考察できるようになる。 ・理論的下位目標 (3):言語教育の当事者(学習者および同僚教師)の間での対話という共同体的な観点から理論的に考察できるようになる。 ・理論的下位目標 (4):言語教師が自ら行う言語教育研究という観点から理論的に考察できるようになる。 ・実践的目標:言語教育の授業やカリキュラムの設計・改善・再構築について、自分なりの解決法を提案し、それを共同体的観点からも研究的観点からも再検討することができるようになる。 |
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Schedule and Contents |
この授業は上記の4つの観点に基づき、4部から構成されています。 【第1部 全体性の観点からの言語教育設計】 第1回 人間と言語の全体性から考える言語教育 第2回 認知意味論の身体論から考える言語教育 第3回 神経科学の身体論から考える言語教育 第4回 第1総括:全体性の観点から考える言語教育の設計 【第2部 個人としての教師と学習者の観点からの言語教育設計】 第5回 実践者論から考える言語教育 第6回 技能修得論から考える言語教育 第7回 行為論から考える言語教育 第8回 第2総括:実践者・技能・行為の観点から考える言語教育の設計 【第3部 教師と学習者の共同体の観点からの言語教育設計】 第9回 対話論から考える言語教育の設計 第10回 当事者研究から考える言語教育 第11回 オープンダイアローグから考える言語教育 第12回 第3統括:共同体の観点から考える言語教育の設計 【第4部 言語教育研究からの言語教育の設計】 第13回 物語論から考える言語教育研究 第14回 実践者研究からの言語教育設計 第15回 フィードバック 第1-3、5-7、9-11、13-14回(以下、精読回)の授業では、履修者が指定されたテクストを読んだ上で自分なりの理解や疑問を明確にし、それをもとに参加者全員で討議します。 第4、8、12回(以下、統括回)の授業は、それまでの総括を行い、履修者がそれまでに学んだ観点を整理した上で、授業では各自が発表し参加者全員で討議します。 第15回の授業ではフィードバックとして、授業全体を通じた学びを再確認しそこから新たな学びにつながるような情報提起・対話を行います。 |
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Evaluation Methods and Policy | 精読回の授業での予習状況(25点満点)と積極的な対話(25点満点)、および統括回における予習(25点満点)と実際の発表(25点満点)の合計得点(100点満点)で評価する。なお、それぞれの予習の仕方については最初の授業で説明する。 | |||
Course Requirements | None | |||
Study outside of Class (preparation and review) |
精読回の授業では、資料を読んだ上で自分が理解できたこと、疑問に思ったことなどをPandAの所定の欄に予め書き込んでおくことを予習とする。 総括回の授業では、精読回の授業で学んだことを復習した上で、その学びを整理した文章をPandAの所定の欄に予め書き込んでおくことを予習とする。 |
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Textbooks | Textbooks/References | 以下の「参考書等」に掲載した文献を教師が要約した資料をPandAで配布します。 | ||
References, etc. |
・浦河べてるの家 (2002)『べてるの家の「非」援助論』医学書院 ・浦河べてるの家 (2005)『べてるの家の「当事者研究」』医学書院 ・樫葉みつ子・中川篤・柳瀬陽介 (2018)「卒業直前の英語科教員志望学生の当事者研究 -- コミュニケーションの学び直しの観点から」『中国地区英語教育学会研究紀要』, No. 48, 95-105. ・斎藤環 (2015)『オープンダイアローグとは何か』医学書院 ・セイックラ、アーンキル (2019)『開かれた対話と未来』医学書院 ・ダマシオ (2005)『感じる脳』ダイヤモンド社 ・ダマシオ (2013)『自己が心にやってくる』早川書房 ・ダマシオ (2018)『意識と自己』講談社学術文庫 ・中川篤・樫葉みつ子・柳瀬陽介 (2019)「当事者研究が拓く、弱さを語るコミュニケーション --校内のコミュニケーションリーダーとなる英語教師を目指して」『全国英語教育学会紀要』, No. 30, 271-286. ・バレット (2019)『情動はこうしてつくられる』紀伊國屋書店 ・ブルーナー (2016)『意味の復権』ミネルヴァ書房 ・ボーム (2007)『ダイアローグ』英治出版 ・ホワイト (2017)『実用的な過去』岩波書店 ・ポラニー (1980)『暗黙知の次元』紀伊国屋書店 ・ポラニー (1985)『個人的知識』ハーベスト社 ・柳瀬陽介 (2014)「人間と言語の全体性を回復するための実践研究」『言語文化教育研究』, No. 12, 14-28. ・柳瀬陽介 (2017)「英語教育実践支援研究に客観性と再現性を求めることについて」『中国地区英語教育学会研究紀要』, No. 47, 83-93. ・柳瀬陽介 (2018)「優れた英語教師教育者における感受性の働き --情動共鳴によるコミュニケーションの自己生成」『中国地区英語教育学会研究紀要』, No. 48, 11-22. ・柳瀬陽介 (2018)「なぜ物語は実践研究にとって重要なのか?読者・利用者による一般化可能性」『言語文化教育研究』, No. 16, 12-32. ・ユング (1987)『タイプ論』みすず書房 ・ラトゥール (2019)『社会的なものを組み直す』法政大学出版局 ・レイコフ、ジョンソン (2004)『肉中の哲学』哲学書房 ・レイコフ (1993)『認知意味論』紀伊國屋書店 ・Bruner, J. (1986) "Actual Minds, Possible Worlds" The Harvard University Press ・Schon, D. (1984) "The Reflective Practitioner" Basic Books ※翻訳書がある場合は、原著の掲載は省略した。 |