文明交流論演習1B

Numbering Code Year/Term 2022 ・ First semester
Number of Credits 2 Course Type Seminar
Target Year Master's students Target Student
Language Japanese Day/Period Mon.5
Instructor name OKA MARI (Graduate School of Human and Environmental Studies Professor)
Outline and Purpose of the Course テーマは「思想としてのパレスチナ」。
しかし、ここでいう「パレスチナ」とは、単に地理的なパレスチナと、そこで生起しているパレスチナとイスラエルの紛争のみを指すのではありません。また、「パレスチナ人」の経験のみを指すのでもありません。「パレスチナ問題」とは、パレスチナに移植された「ユダヤ人問題」であり、その淵源はヨーロッパ・キリスト教社会の歴史的宿痾たるユダヤ人差別と、とりわけ近代の反ユダヤ主義というレイシズム、そして、アジアに対する植民地主義的侵略にあります。その意味で「パレスチナ」と東アジアの近現代は歴史の地脈によって繋がっていると言えます。
74年前の1948年、パレスチナ人はナクバ(パレスチナにおけるユダヤ国家建設にともなう民族浄化による民族離散と祖国喪失の悲劇)によって現代における第二のユダヤ人となり、74年の歳月のあいだに、パレスチナ人のディアスポラはグローバルなものとなりました。依然、占領下や周辺アラブ諸国の難民キャンプに生きる者たちがいる一方で、欧米世界の「市民」となる者たちもいます。そこには、人間が「難民となる」こと、「難民として生きる」こと、「市民となる」こと、移住先の社会でのレイシズム、Homeland をめぐる問題(パレスチナという Homeland への帰還、移住先の社会を新たな Homeland とすること、人間にとって Homeland とは何か)など、現代世界でグローバルに人間の身に生起している出来事のエッセンスが凝縮している。「思想としてのパレスチナ」を考えるとは、《パレスチナ》を通して、現代世界の思想的課題を考えることに他なりません。
本授業では、演習を通して、《パレスチナ問題》とは何か、その基本を理解すると同時に、現代世界についての自身の問題意識を展開するための基盤をつくることを目指します。
Course Goals 「パレスチナ問題」が、旧約聖書やクルアーンに遡るような民族問題、宗教対立ではなく、近現代の歴史にその起源をもつものであることを理解する。
そして、ナクバから今日にいたる70余年間のパレスチナ問題の展開と広がりについて知る。
さらに、パレスチナ問題が提起する問題が、地理的な《パレスチナ》に限定される問題ではなく、現代世界を生きる私たちにとって、さまざまな思想的課題を提起しているものであることを学び、今後、「思想としてのパレスチナ」についてさらに理解を深めていくための、知的基盤を作る。
Schedule and Contents バシール・バシール他編の「ホロコーストとナクバ トラウマと歴史の新たな文法」(Bashir Bashir et.al edsl, "The Holocaust and the Nakba: A New Grammar of Trauma and History")所収の、短めの論考を数本、精読します。

パレスチナ人は、ヨーロッパでジェノサイドを経験したユダヤ人が「祖国」を得たことによって、祖国を喪失し民族が分断、離散しました。パレスチナ問題の起源である「ナクバ」、それはホロコーストがもたらした結果のひとつでした。
パレスチナ人の悲劇をホロコーストという歴史的、思想的文脈のなかに位置付けて論じる本書所収の論文の精読を通して、ヨーロッパで起きたジェノサイドの悲劇と、中東のパレスチナの悲劇が、どのように繋がっているのかを考えます。

毎回担当者を決めて、担当部分について発表していただき、その内容について議論します。
Evaluation Methods and Policy 課題への取り組み方(随時、小レポートを課すこともあります)、議論への積極的参加度、および期末レポートで総合的に判断します(6段階評価)。詳しくは授業中に説明します。
Course Requirements None
Study outside of Class (preparation and review) 従来は、上の参考文献に挙げた『パレスチナの歴史』、『イスラエルに関する10の神話』、『世界史の中のパレスチナ』、『双方の視点から描く イスラエル/パレスチナ紛争』など、《パレスチナ問題》を俯瞰的、通史的、総合的に描いた書籍をテクストに前期の演習を行っていました。
今期は、通史的なテーマではなく、ホロコーストとナクバという特定テーマについて書かれた英語論文を精読しますので、パレスチナ問題についての通史的、総体的理解は、各自、上記参考文献を通して、基礎的な知識を把握してください。
また、授業の冒頭で毎回、担当者に任意のテーマに関するミニ発表をおこなってもらい、いま、パレスチナで、あるいはパレスチナ問題に関連して世界で、どのような具体的な問題が生起しているか、知見を広めます。

また、授業では、関連する書籍や映画などを随時、紹介します。それらも可能なかぎり、フォローしてください。
Textbooks Textbooks/References プリントを配布します。
References, etc. パレスチナの歴史, 奈良本英佑, (明石書店)
イスラエルに関する10の神話, イラン・パペ, (法政大学出版局)
世界史の中のパレスチナ問題, 臼杵陽, (講談社現代新書)
双方の視点から描く パレスチナ/イスラエル紛争, ダン・コンシャーボク、ダウド・アラミ, (岩波書店)
パレスチナの民族浄化, イラン・パペ, (法政大学出版局)
パレスチナ問題, エドワード・サイード, (みすず書房)
シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年, 川上泰徳, (岩波書店)
ガザに地下鉄が走る日, 岡 真理, (みすず書房)
その他、参考文献については、授業中に随時、指示します。
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