数理科学特論A

Numbering Code G-HUM34 5D015 LJ55 Year/Term 2022 ・ Intensive, Second semester
Number of Credits 2 Course Type Lecture
Target Year Master's students Target Student
Language Japanese Day/Period Intensive
Instructor name Hideo KOZONO (Part-time Lecturer)
Outline and Purpose of the Course 本講義では3次元外部領域におけるr-乗可積分ベクトル場のHelmholtz-Weyl分解とそのナビエ・ストークス方程式への応用を解説する.
コンパクトで滑らかな曲面の内部または外部領域におけるベクトル場を発散ゼロの部分とスカラーポテンシャルを有する部分に分解するHelmholtz分解がr-乗可積分空間にまで拡張されることはよく知られている.しかし,その様な分解定理を調和ベクトル場まで込めて直和の形に表現することが可能であることが明らかになったことは比較的最近である.
本講義では3次元外部領域に焦点を当て,まずはr-乗可積分調和ベクトル場の空間が有限次元であることを証明する.次にr-乗可積分ベクトルポテンシャルを変分法によって特徴づける.更にスカラーポテンシャルの空間の選び方が,可積分指数rによって異なることを解説する.外部領域においても,コンパクトRiemann多様体と同様にBetti数を定義し,r-乗可積分ベクトル場のコホモロジー群の調和表現を与える.応用として,多重連結外部領域における定常Navier-Stokes方程式の可解性と安定について考察する.
Course Goals ポテンシャル論の手法によってr-乗可積分調和ベクトル場が有限次元空間であることを認識する.その際,外部領域の特徴である調和函数の無限遠方の漸近挙動を考察することで,可積分指数rによって次元数が異なる事を明らかにする.
次に,ベクトルポテンシャルの構成を連立楕円型方程式系の境界値問題の弱解を求めることに帰着させる.手法は一般のBanach空間におけるLax-Milgram定理を用いるが,その際,双線形形式から自然に定義される有界線形作用素の核空間が有限次元であり,かつ値域が閉部分空間であることが本質的であることを理解する.スカラーポテンシャルの構成はPoisson方程式のDirichletまたはNeumann境界値問題の弱解を求めることに帰着されるが,前者は可積分指数rによって可解性が著しく異なることを理解する.
多重連結外部領域における定常Navier-Stokes方程式の可解性の困難さは,将に領域の位相幾何学的な問題に起因することを明らかにする.
Schedule and Contents 次のような内容について,それぞれ数回ずつ使って講義する.

1) 講義の概要

2) L^r-調和ベクトル場
・有限次元性
・外部領域におけるBetti数の定義
・領域の位相幾何学的不変量によるL^r-調和ベクトル場の特徴付け

3) ベクトルポテンシャルおよびスカラーポテンシャル
・連立楕円型方程式系の境界値問題とそのL^r-弱解
・Poisson方程式のL^r-弱解
・L^r-変分不等式とL^r-弱解の存在と一意性

4) L^r-Helmholtz-Weyl分解
・外部領域における一般化されたStokesの積分公式
・分解定理と反例

5) 定常Navier-Stokes方程式の可解性と安定性
・与えられた境界値のソレノイダル拡張
・変分不等式とガレルキン法による解法
・線形化作用素の生成半群とそのL^r-L^q-型評価
Evaluation Methods and Policy レポートによる.
Course Requirements 関数解析の初歩(Banach空間における有界線形作用素,コンパクト作用素など)
Study outside of Class (preparation and review) 復習を行うこと.
References, etc. J.L.Lions, E.Magenes 『Non-Homogeneous Boundary Value Problems and Applications』 (Springer, 1972) ISBN:3-540-05363-8
G.Duvaut, J.L.lions 『Inequalities in Mechanics and Physics』 (Springer,1976) ISBN:3-540-07327-2
R.Temam 『Navier-Stokes equations Theory and Numerical Analysis』 (North-Holland, 1977) ISBN:0-8218-2737-5
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