Case Study: Current Policy Issues based on Public Philosophy
Numbering Code | P-GOV24 66250 SJ45 | Year/Term | 2022 ・ First semester | |
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Number of Credits | 2 | Course Type | Seminar | |
Target Year | 1st & 2nd year students | Target Student | ||
Language | Japanese | Day/Period | Thu.2 | |
Instructor name | SHIMADA-LOGIE HIROKO (School of Government Professor) | |||
Outline and Purpose of the Course |
行政はサービスとしてとらえられがちであるが、公権力の独占的行使という本質を有している。特に、日常的な政策の多くが利益の配分よりも負担の強制という側面を持つ現代では、その政策判断を正当化する拠り所が必要となる。 民主主義国家においては、民意(≒選挙・議会における多数決)が価値判断の物差しの基本となる。ただ、多数が熱烈に支持した政策が人々に災厄をもたらした事例も少なくない歴史の教訓に照らせば、その時々の多数決ではすくい取れない価値にも目を向ける必要がある。とりわけ何かを守るために別のものを犠牲にせざるを得ない政策に携わる行政官は、「命令に従った」だけでは免責されず、後世の審判を受ける覚悟が必要となる。 本授業では、そうしたディレンマを伴う実際の政策を題材とした上で、歴史の教訓や政治思想からの学びに照らしてより良い判断があり得るのかを考える。自分が当事者であってもその理想どおりに行動できるのかという観点から発表・討議を行う。 |
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Course Goals |
(1) 公権力にまつわる近現代の名著のエッセンスを理解し、その示唆を現代の具体的事例に照らして解釈できるようになる。(※自らの悩みへの支えを求めるこうした読み方は、教養として読むだけでは見落とす示唆に気づく利点があるが、「時代の文脈や思想家の本来的意図の軽視につながり邪道」という批判があることには十分注意する必要。) (2) 様々な思想家の示唆や歴史の教訓を元に、自分なりの一貫した倫理的判断の基軸を形成する。 (3) 政策に携わる際にどうすれば(2)が貫けるのか、当事者意識を持って考える。 |
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Schedule and Contents |
二つの大テーマにつき、着眼すべき点や参照文献を講師から紹介。各人が大テーマに沿った近年の主要政策課題を選び、経緯や最新情勢の把握、課題解決に向けた提言を含む個人発表を行う。他の者は、割り当てられた特定思想家の立場から歴史的教訓も踏まえて建設的に批判する。 相手をやりこめるディベートではなく、気づき・相互理解の場となることを期待する。 1 序論① 趣旨と個別課題研究の進め方の説明、思想家の割り当て 2 序論② 公共政策における歴史的・倫理的考察の意義 (価値相対主義・多元主義、神々の闘争、自己責任の罠、「行政の無謬」、専門知の限界、民主主義の本質、政府の失敗・市場の失敗、「悪の凡庸さ」、二つのディストピア、フィリッパ・フットの思考実験) 3~8 個別発表 テーマⅠ: 政府が「幸せづくり」をするのか (政策例:少子化対策、格差・貧困対策、健康増進策、文化芸術支援、不登校対策) 批判側:バーリン、ロールズ、ハイエク、ノージック、サンデル等 9~13 個別発表 テーマⅡ:誰の「安心・安全」を守るのか (政策例:伝染病者等の隔離、入国管理、テロ対策、ヘイトスピーチ規制、情報産業規制) 批判側:カント、アーレント、シュミット、フーコー、ハーバマス等 14 振り返り討議 歴史の教訓や賢人の警告を今後の政策にどう生かすべきか 15 フィードバック(方法は授業中に説明する。) 上記に掲げた政策や思想家は例示であり、各人の関心、社会情勢の変化を踏まえて適宜変更する。 |
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Evaluation Methods and Policy | 担当分の発表内容(30)と、割り当てられた思想家の立場からの毎回の討議への貢献度(70)とで総合評価する。 | |||
Course Requirements |
憲法の事前履修が望ましいが、未修者も相談に応ずる。 人数上限あり。担当割り当てのため、初回に欠席した場合は履修不可。 |
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Study outside of Class (preparation and review) |
担当分の発表のほか、毎回、担当する思想家になり切った上での発表に対する建設的批判を求める。もとより正解などないが、その場での思いつきでの意見にならないよう、報告への討論として参考文献を読み込む予習は必須。例年、回を追うごとに各哲学者の「憑依」度合が高まり、白熱した討議が実現している。 国内外の政治や社会のニュースに目を配り、身近な家族や友人のことだけでなく、遠い他者の痛みに対する想像力、共感力を高めることも心がけてほしい。 |
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Textbooks | Textbooks/References |
講師作成のレジュメと参考資料を配付する。 現代政治思想・政治哲学を未履修の場合は、下記参考書のうち、宇野(第5章~結章)と川崎・杉田の2冊を開講前に読んでおくこと。既修者にも一読を勧める。 |
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References, etc. |
西洋政治思想史, 宇野重規, (有斐閣、2013年) 現代政治理論(新版), 川崎修・杉田敦編, (有斐閣、2012年) 政治思想の知恵, 仲正昌樹, (法律文化社 、2013年) レジュメでは各名著の抜粋しか紹介できないが、琴線に触れたものがあれば全体を通読して、生涯の伴走者となる著作に出逢ってほしい。 なお、行政官志望者は、特に下記の本に目を通すことを勧める。 ・H.アーレント(大久保和郎他訳)『全体主義の起原1~3』(みすず書房、2017年) ・C.シュミット(田中浩他訳)『政治的なものの概念』(未來社、1970年) ・J.M.ケインズ(救仁郷繁訳)『講和の経済的帰結』(ぺりかん社、1972年) |