International Politics and Japan's Diplomacy

Numbering Code P-GOV00 64C40 SJ42 Year/Term 2022 ・ First semester
Number of Credits 2 Course Type Seminar
Target Year 1st & 2nd year students Target Student
Language Japanese Day/Period Sat.1・2
Instructor name OTSURU TETSUYA (Graduate School of Law Visiting Professor)
Outline and Purpose of the Course ・国際関係研究職はもとより、それ以外の如何なる職業選択を行った場合でも、日々変貌する国際情勢を正確に読み取り、今後の世界の動きを着実に見透す能力は、今後益々重要なスキルとなってくる。

・特にわが国を取り巻く国際環境は今猛烈な勢いで急速変転しつつあり、今後の情勢把握には、透徹した観察眼と高度の分析能力が必須となる。
 この2つのスキルは、相当レベルの幅と深みをもった経験知と、効率化・合目的化された情報処理手法に支えられてはじめて体得され、また、その相互作用により一層のレベルアップが可能となるものである。

・こういった観点から本講義では、戦後日本がこれまで積み上げてきた外交経験を振り返り、国際社会の現状を確認しつつ、今後世界が向かう未来を見据える能力・思考軸を履修者各々が獲得・構築できる状態に持って行くことを目標地点とする。
 またこの間、コース中の演習作業をこなすことで、自らのスキル向上の程度を体感し、現役外交官である担当講師からのコメント/示唆を得ることで、継続的なフィードバック・プロセスを体験学習する。
Course Goals ・本講義履修により以下3点を体得する。

①戦後日本外交の主要課題と経験知についての基礎知識(再整理)。

②現下の国際情勢の理解と、10~20年後の世界についての見通し能力獲得。

③国際情勢の見方、情報の収集・分析・活用の手法、についての基本スキルの向上。
Schedule and Contents ・基本的に以下のプラン(日程)にしたがって講義を進める。但し、講義の進行具合等により、また履修者からの要望に応じ、テーマの内容や講義順に一部内容を加えることがあり得る。
・授業は,前期土曜日のうち7回を使用して1限と2限の連続で実施する(土曜7回×各2コマ=計14コマ)。具体的日程の割振りは以下のとおり。
・各コマとも、その最後に質疑応答の時間を設ける。そこでのパフォーマンスは期末採点の対象とするほか、講義全般に新たな視点や気づきの点を与えてくれる効果もあるため、履修者は積極的に質問・意見表明を行うこと。
・下記の通り、第2コマと第8コマにおいて「ミニ演習」を、また第12コマ/第13コマに「本演習」を実施する。(=これにより履修者は各々、ミニ演習2回、本演習1回、都合3回の発表(プレゼン)の機会を持つこととなる。)
・以上の他、本講義への要望、質問、感想、議論、学習進捗報告などを目的に、各履修者からのレポート提出(形式自由)を随時受け付ける。(が、右は義務とはしない。)
・上記発表(プレゼン)やレポートと成績採点の関係については、下記「成績評価の方法・観点」の欄を参照のこと。

【講義プラン(日程割振り)】
(4月16日)
第1コマ 「外交とは」
・担当講師より自己紹介を兼ね、過去30年間の外交官生活、その間に経験したエポックメイキングな事件・イベントを紹介する。これにより、外交実務が世界各地で日々どのように展開されているかを学ぶ。
<事前準備>
・特に無し。(→ ★但し、下記「教科書」の欄を参照のこと。以下、同様。)
<副読本>
・「日米の絆」加藤良三(吉田書店)

(注)↑ 各コマ毎に掲げる<副読本>は、初学者が拾い読みするのに適した入門レベルの推薦書籍である。下記「教科書」とは違い、必読書に指定するものではない。
 余力と関心がある向きは、本講義と併行して(事前・事後に)適宜参照されたい。
 以下、同様。

第2コマ <ミニ演習> 「本講義の意義・目標 / 現下の国際情勢と日本外交」
・本講義の意義・目標や、計14回の全体スケジュール(課題等)を確認し、全般のトーンセッティングを行う。
 その際、①本講義への要望(期待)や質問事項、②国際情勢・日本外交の現状に関する問題意識・意見などについて、全履修者より、それぞれ簡潔・短時間の口頭プレゼンを行い、内容に応じ担当講師/他履修者との間で質疑応答・ディスカッションを行う。(=第一回ミニ演習。)
 このプレゼン内容自体は成績採点対象としないが、期末の「本演習」はじめ全体成績採点時に、比較対照データとして参考活用する。
・上記ミニ演習終了後の残り時間を使って、現下の国際情勢と日本外交の全体像について、それらを概括する講義を行う。
<事前準備>
・上記①②合わせて各自3ー5分間程度の口頭プレゼンが出来るよう、適宜準備をして臨むこと(レジュメ等の資料提出は特段求めない)。
<副読本>
・「IDENTITY」フランシス・フクヤマ(朝日新聞出版)

(4月30日)
第3コマ 「安全保障」
・安全保障とは何か、日本の安全保障の現状と今後(含「自由で開かれたインド太平洋」)、について学ぶ。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「戦略的思考とは何か」岡崎久彦(中公新書)
・「One Minute to Midnight」Michael Dobbs (Vintage)
(=邦訳「核時計零時1分前」ドブス(日本放送出版協会)<絶版)

第4コマ 「アメリカ情勢 / 日米関係」
・現下のアメリカ合衆国情勢、昨今の日米関係の展開、について学ぶ。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「アメリカ大統領制の現在」待鳥聡史(NHKブックス)
・「記者、ラストベルトに住む」金成隆一(朝日新聞出版)
・「反知性主義」森本あんり(新潮選書)
・「アメリカ外交50年」ジョージ・F・ケナン(岩波現代文庫)

(5月14日)
第5コマ 「中国情勢 / 日中関係」
・現下の中国情勢、昨今の日中関係の展開、その他関連事項、について学ぶ。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「中国4.0」エドワード・ルトワック(文春新書)
・「兵法三十六計」守屋洋(知的生き方文庫)
(・「アメリカ人の中国観」井尻秀憲(文春新書)<絶版)

第6コマ 「韓国、北朝鮮、ロシア情勢 / 日本との関係」
・現下の韓国、北朝鮮、ロシア情勢、日本とそれぞれの関係の現在、について学ぶ。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「反日種族主義」李榮薫(文藝春秋)
・「朝鮮民族を読み解く」古田博司(ちくま学芸文庫)
・「イチから分かる北方領土」北海道新聞社

(5月28日)
第7コマ 「中南米情勢 / 日系人社会」
・現下の中南米情勢、日系人社会の存在を中心に日本と中南米との関係、について学ぶ。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「ラテン・アメリカ社会科学ハンドブック」ラテン・アメリカ政経学会編(新評論)
・「移民と日本人」深沢正雪(無明舎)

第8コマ <ミニ演習> 「中間発表 / 本演習テーマ決定」
・全履修者より、過去7コマの授業で学んだこと、問題意識が深まった点、疑問が浮かんだこと、足下の国際情勢やニュースへのコメント、などについて自由に発表を行う。
 発表内容は、特定のテーマについてのものでも、外交・国際情勢全般についてのものでも、或いはまた本講義で取り扱われない事項に関するものでも、何でも構わない。
 各自、A4紙一枚程度の簡潔なレポートを提出し(出来る限り事前にメイル等で提出し他履修者に共有しておく)、それに基づき各自5分間程度の口頭プレゼンを行う。
 その後、全履修者との間での質疑応答を行う。(=以上:第二回ミニ演習。)
 この第二回「ミニ演習」に事前提出されるA4レポート、口頭プレゼン、質疑応答でのパフォーマンス内容、については期末成績の採点対象とするので、各自積極的な準備・参画が求められる。
・上記「ミニ演習」終了後に、期末の「本演習(=第12コマ/第13コマに予定)」で各自担当する発表テーマの選定/調整を行う。
 このため、「本演習」時に発表したいテーマの候補を、各自第1希望から第3希望まで上記A4レポートの末尾に簡潔に(項目名のみで可)記載し、第8コマ当日までに予め提出しておくこと。(発表テーマの内容については、下記(第12コマの項)参照のこと。)
<事前準備(詳細は上記参照)>
・A4一枚程度のレポートを事前提出の上、当日の口頭プレゼン/質疑応答の準備。
 同レポート末尾に、期末「本演習」での発表希望テーマを記載。

(6月11日)
第9コマ 「経済外交 / 経済安全保障」
・経済分野に関する日本外交・国際情勢、について学ぶ。昨今話題の経済安全保障についての最新の動きや今後の見通しについても、併せ取り上げる。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「我が国の経済外交2020」外務省経済局(日本経済評論社)

第10コマ 「資源外交と中東情勢」
・資源をめぐる国際情勢を概観し、特に石油をめぐる観点から、中東情勢について学ぶ。
 その際、日本との関係、日本への影響という視点を中心に据える(時間的制約も勘案しつつ、イスラム教、宗派対立、中東和平といったテーマには過度に立ち入らない)。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「石油の呪い」マイケル・L・ロス(吉田書店)
・「石油と日本」中嶋猪久生(新潮選書)
・「オスマン帝国の解体」鈴木董(講談社学術文庫)

(7月2日)
第11コマ 「安全保障の新ドメイン / マルチ外交」
・宇宙、サイバーなど、新しいドメインにおける外交、国際政治の最近の展開、について学ぶ。
・それら新分野での外交や、人権問題、環境問題、経済秩序の維持・管理において、国連をはじめとする国際機関、マルチラテラリズムが果たせる役割とその限界、並びに、日本のマルチ外交の今後のあり方について考察する。
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「宇宙と安全保障」福島康仁(千倉書房)
・「国際連合 その役割と機能」植木安弘(日本評論社)

第12コマ <本演習・第一回>
・全履修者は、第12コマ/第13コマのいずれか一回において、予め選定されたテーマについて、各自プレゼン(発表)を行う。
 プレゼンの形式は自由とするが、各自最低15分間(<履修者数など勘案し適宜時間調整する可能性あり)の口頭発表を行い、また当日までに、レジュメ或いはパワーポイント等の配布資料(形式・ボリューム自由)を予め準備・メイル共有しておく。
・各自が発表するテーマについては、第8コマにおいて選定/調整する(上記第8コマ部分参照)が、その内容は、第8コマのミニ演習時同様、特定のテーマについてのものでも、外交・国際情勢全般についてのものでも、或いはまた本講義で取り扱われない事項に関するものでも、何でも構わない。(自身が第8コマ時のプレゼンで扱ったテーマと同一でも、全く違うものでも、いずれでも可。)
・各自の口頭プレゼンに続き、他の履修者との間で、質疑応答・議論を行う。(ここでの他履修者からの質問や発表者との議論の内容についても、期末成績の採点対象とするので、全履修者が積極的に準備・参画すること。)
<事前準備>
・各自最低15分間の口頭プレゼンと、右実施時に使用する配布資料の作成・事前共有。(詳細は上記のとおり。)

(7月16日)
第13コマ <本演習・第二回>
・上記(第12コマ)に同じ。
・第12コマと第13コマのいずれの回での発表とするかは、履修者各自の希望を踏まえつつ(第8コマ時に)調整を行うが、全体のバランス等を見つつ最終的には担当講師の方からいずれかを指定することとなるので、各履修者は、第12コマ/第13コマのいずれでも対応できるよう心づもりをしておくこと。(また上記のとおり、質疑応答・議論の部分も採点対象となることから、自身のプレゼン回ではない方のコマにおいても、積極的な参画が勧奨される。)
<事前準備>
・同上。

第14コマ 「総評 / 国際実務対応の基礎スキル」
・過去2コマの「本演習」について担当講師が総評を行い、気づきの点について議論する。
・過去13コマの学びを踏まえつつ、次の諸点について担当講師より講話を行い、質疑応答を行う。
 -国際情勢を見る際に必要な基本スキルの向上
 -収集した情報の処理と分析の仕方
 -国際的な業務に従事する際の実務家としてのノウハウ/留意点
<事前準備>
・特に無し。
<副読本>
・「高坂正堯」服部龍二(中公新書)
・「三酔人経綸問答」中江兆民(光文社古典新訳文庫)


 なお、フィードバックについては別途指示する。
Evaluation Methods and Policy ・期末試験は行わない。

・以下の各課題における各自パフォーマンスを対象に成績評価を行う。各課題の実施方法と準備のあり方については上記「授業計画と内容」欄を参照。(下記、各項目末尾の<>内がおおまかな配点(見込み)<100点満点。)

-本演習(第12/13コマ)<35点>

-第二回ミニ演習(第8コマ)<10点>

-毎回授業への参加状況、そこでのパフォーマンス<55点>
(=授業における討論、意見表明、質問・応答等で積極的な役割を果たすこと、自分の考えを適切に表現すること、本講義内容の理解度、などを重視する。
  また、随時提出可としているレポート(上記「授業計画と内容」欄冒頭部分参照)については直接採点対象とはしないが、授業でのパフォーマンスについての採点に際しての補足材料として参考活用する。)
Course Requirements ・予備知識等は特段必要無いが、国際情勢や外交問題への関心、政治・経済分野での知的好奇心を有していること。

・学士課程等で国際法の単位を取得していない者は、本講義開始に先立ち各自可能な範囲で国際法の基本書・概説書を斜め読みする等して、その特徴(国内法体系との違い)について基本的な理解を得ておくと良い。(但し、それが無いと本講義が理解できないという訳ではない。)
Study outside of Class (preparation and review) ・毎回授業に先立ち、上記教科書(染谷)の各回テーマ該当部分を必ず一読してから授業に参加すること。

・加えて余力がある場合には、上記「参考書」や各回指定<副読本>を講義の事前・事後に参照する。

・以上のほかに参照すべき書籍や資料について、必要に応じ、各回授業の中で紹介する予定。

・課題(ミニ演習、本演習、自由レポート)の実施要領・留意点は、それぞれ事前に授業の中で補足説明を行うが、予め上記「授業計画と内容」欄の記載事項を各自熟読し理解しておくこと。
Textbooks Textbooks/References 入門講義 戦後日本外交史, 染谷芳秀, (慶應義塾大学出版会), ISBN:978-4-7664-2583-3, 必読。早めに通読の上、毎回テーマ該当箇所を熟読してから授業に臨むこと。
References, etc. 戦後日本外交史, 五百旗頭真(編), (有斐閣アルマ)
ハンドブック戦後日本外交史, 宮下明聡, (ミネルヴァ書房)
(上記2冊はいずれも必読書には指定しない。)

 五百旗頭は、教科書(添谷)以外に、戦後日本外交を概観できる書籍の一つ。余力がある人は、教科書と併行して通読する。

 宮下「ハンドブック」は、主要な事件・出来事を簡潔に概要(但し記述範囲は2010年まで)をまとめたもの。
 関連参考資料も事項毎に挙げられており、特に自身の基礎知識が欠けていると思われる項目についてリファレンスとして使用すると良い。

 この他、外交各分野や各国情勢等については、必要に応じ外務省HP等に当たって各自理解を深めることが推奨される。(各回の授業の中でも適宜紹介する。)

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