History of Social Thought in Comparison

Numbering Code G-ECON31 6A602 SJ41
G-ECON31 6A602 SJ38
G-ECON31 6A602 SJ34
Year/Term 2022 ・ Second semester
Number of Credits 2 Course Type Seminar
Target Year Target Student
Language Japanese Day/Period Tue.3
Instructor name TAKEZAWA HIROYUKI (Graduate School of Economics Associate Professor)
Outline and Purpose of the Course この授業の目的は、20世紀後半以降の英語圏での思想史の方法論上の特徴である、過去の思想家のテクストを、その著述が向けられた他のテクストを特定しつつ当時の論争の中で理解することの重要性を理解し、かつ、思想史的センスを養成することである。
 今年度は、英語圏で2000年代以降に注目が集まっている女性の思想家による社会論や歴史解釈の検討、具体的には、18世紀後半の共和主義思想家キャサリン・マコーレイ(Catharine Macaulay, 1731-1791)に関する一次・二次文献の精読をおこなう。
Course Goals 1.【文献読解能力】人文社会科学に関する高度な内容を十分に読みこなす能力を身に着けること。
2.【調査能力】大学院レベルの高度な調査能力を身に着けること。
3.【説明能力】自分自身の意見や解釈を明快に提示できる能力と技術を身に着けること。
4.【分析能力】歴史的なコンテクストとの連関を十分に意識しつつ、テクストが持つ含意を的確に分析する能力を身に着けること。
Schedule and Contents  物事の認識や判断に関して、その主体の属性はどこまで、そしてどのような影響を及ぼすものなのかは、人文社会系の学問分野では常に問題にされてきたと言えるであろう。このような属性のなかで、性別にかかわる問題は、常に注視されていたとはいえ、必ずしも十分に取り扱われてきたわけではない。
 しかしながら2000年代初頭から英語圏において明確な形をとるようになった、女性の思想家や歴史家による社会把握や人間理解への強い関心や、それらによる通史的な展望が、欧米の有力出版社から論文集の形でしばしば世に問われるようになる。この授業では、そのような研究でも頻繁に言及される18世紀後半の英国のウィッグ的な思想家であるキャサリン・マコーレイに関する近年の研究文献を講読する。彼女のフランス革命論、エドマンド・バークやメアリ・ウルストンクラフトなどの同時代人との対話や論争、そして女性教育に関する提言などに関しては、かなりの程度の分析の蓄積が存在するが、その共和主義解釈や歴史叙述の面の分析は、相対的に等閑視されてきたと言えるであろう。
 この授業で取り上げるテクストは、前記の共和主義理解などの未開拓の領域に踏み込む、ブリジット・ヒルの先駆的な業績(The Republican Virago, Oxford, 1992)以降の重要な研究成果である。共和主義思想が参照する古典古代の市民像や政治空間把握における性別の問題は、市民の家長的側面や性別面、そして兄弟団などの様々な人的関係を前提に分析されるべきことが繰り返し指摘されてきたが、近世以降の共和主義研究においては、これらの視点を充分に組み込んだ解釈が出されているとは言い難い状況にある。このテクストを精読することで、マコーレイが理解する政治空間はどのようなものであり、そこでは性別の問題や、マコーレイ自身の属性がどのような影響を及ぼしているのかを考えたい。
 前期に開講する「社会思想史」と一体的に授業を行うので、連続しての参加を標準とする。
 この授業の主たる目的は、思想史的センスの養成と最先端の研究動向を把握することにあるが、参加者自身が自らの個別の研究テーマを扱う際にも役立つような、歴史系・思想史系の研究の進め方のトレーニングとしても位置づけられている。したがって、当該分野の研究者としてこれから研究を進めるためには不可欠の各種のデーター・ベース(Early English Books Online、Eighteenth Century Collections Online、The Making of the Modern World, Web of Science、Bibliography of British & Irish Historyなど)や、研究用CD-ROMの紹介や利用法の解説なども随時行う予定である。
 なお初回の授業は、授業のイントロダクションとともに、前期からの授業参加者を中心に、研究発表を行う。初めて参加するものは、相談のうえ、発表日を決めて後日、研究発表をするものとする。
  授業の進行は、文献の読解の程度などを考慮して変更することがあるが、現時点では以下のような進み方を想定している。
 第一回:イントロ(別に指定する雑誌論文や書籍を対象)
 第二~八回:文献講読(おおむね第1-5章を対象)
 第九~十四回:文献講読(おおむね第6-9章を対象)
 第十五回:全体のまとめ
 なお講読に合間に、各自の研究報告を行います。
Evaluation Methods and Policy 恒常的な出席と報告の分担(50%)、ターム・ペーパーの執筆(50%)(詳細は授業の中で明示します)。
Course Requirements 1.16世紀から18世紀の英国史とその思想史の概要の把握、もしくは、授業開始までに、今井 宏編著『世界歴史体系 イギリス史2 近世』山川出版社、1990年、を読了すること。
2.邦文ならびに英文の読解能力。
3.学部卒業レベルの文献調査能力(図書館、インターネット、電子資料の利用)。
Study outside of Class (preparation and review) 1.当該文献の精読だけでなく、その内容が受講生自らの研究テーマにおいてどのような意味を持ちうるのかを授業に先立って十分に考えておくこと。そして授業での解説や議論を踏まえて、同様のことを十分に反芻すること。
2.文献読解にあたって、専門書誌や電子データベースなどを使用して関連する情報や前提知識を適宜補充すること。
Textbooks Textbooks/References Catharine Macaulay's Republican Enlightenment, Karen Green, (Routledge, 2020), ISBN:9780367358976
References, etc. Women, Writing, and the Public Sphere 1700-1830, E. Eger et all., eds., (Cambridge University Press, 2001), ISBN:9780521771061
Women Writers and the early modern British political tradition, H.L. Smith ed., (Cambridge University Press, 1998), ISBN:9780521585095
社会契約と性契約, キャロル・ぺイトマン, (岩波書店、2017年), ISBN:9784000611909
トマス・ホッブズの母権論, 中村敏子, (法政大学出版局、2017年), ISBN:9784588625336
その他の文献は授業中に紹介します。
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