Anglo-American Law

Numbering Code U-ECON00 30916 LJ41 Year/Term 2022 ・ Second semester
Number of Credits 4 Course Type Lecture
Target Year 3rd & 4th year students Target Student
Language Japanese Day/Period Mon.3・Thu.3
Instructor name ITAMOCHI KENGO (Part-time Lecturer)
Outline and Purpose of the Course  本授業では、コモン・ローという法体系において使用される基本用語と考え方について講じ、「授業計画と内容」に示す事項のほか、それに関連する事柄を取り上げる。英語で書かれた判決文などに触れ、また英語圏のリーガル・リサーチの初歩的技術についても解説し、受講生にも実践を通してその基本を身につけてもらう。
 そもそも「日本法」について数十単位(かつ数年)をかけて学ぶことが予定されるのであるから、コモン・ロー(英米法。英国と米国にすら限定されない)の全体を4単位で広く深く学ぶことは(受講生諸君に他の科目のみならず寝食をも忘れて英米法の学修のみに専念させたとしても、おそらく)不可能である。授業担当者自身、その全てに精通しているともとても言えない。それゆえ、本授業ではコモン・ローの法域の中でも米国、英国、シンガポールに対象範囲を限定する。これらの3か国に限定する理由は授業内で説明するが、内容についても次のとおり限定する。すなわち、前半でアメリカ法を題材に私法・公法・刑事法などを幅広く取り上げて概説し、もって様々な法領域におけるコモン・ローの特徴を学習する。後半ではイングランド法およびシンガポール法を題材に、私法、特にビジネス法についてヨリ具体的な検討に踏み込む。後半で扱う内容は日本企業も国際取引などでまさに実定法として使用する可能性があり、その意味で実用的でもあるが、受講生には「すぐに役に立つか」という観点を超えて、日本法を相対化する意識も涵養してほしい。
 日本法との違いを意識してもらうために日本語で日本の法律用語との比較も交えつつ議論を行うが、法の理解のためにはそれぞれの法源を読まないことはありえない。条文や裁判例を一度も読まずに民法や刑法を学習したことにはできないのと同じ理屈である。それゆえ、英米の法令や判例は英語の原文をしばしば引用・配布する(もちろん日本語で解説する)。また、受講生には必ず一度は英文判例に取り組んでもらう(取り組み方の詳細は初回および授業用ウェブサイト(後掲)で説明する)。英語に苦手意識を持たずに頑張ってみてほしい。高校英語の知識だけでもコツさえつかめば「意外と読める」ものである。そのコツをつかむ(ないしそのきっかけを得る)ことも本授業の目的である。また、こうした作業の前提となる何が法源でどうやってそれを見つけるか、という調査技法の基礎についても身につけてもらう。こうした知識は授業後には一旦忘却の彼方へと葬り去られるであろうが、仮に将来必要になった場合には、存外、ふと思い出したり、「あのとき何かあった」と探し出すきっかけになったりするものである。
 以上を要するに、本授業は、アメリカ、イングランド、シンガポールの法を題材にコモン・ロー法体系において使用される基本用語や考え方について修得し、今後必要になった場合にさらなる取材調査のために自ら英語の法源で裏を取って確認するための基礎的素養を身につけ、日本法を外国法と比較する初歩的技能を獲得することを目的とする。
 なお、授業担当者が基礎疾患を有するため、感染症の状況および大学・学部の方針によっては、オンラインでの実施もありうる。大学から、または授業用ウェブサイト等を通じた授業担当者からの連絡に留意されたい。
Course Goals 以下の①から③の能力ないしその前提となる基礎を身につける。
① コモン・ローの法体系において使用される基本用語や考え方を理解する。たとえば、イギリスの法律関係のニュースに接した際に素人に解説でき、または不明な点を調べることができるようになる。
② コモン・ローの法体系における具体的な法律問題や法制度について、適切な論拠たりうる法源を探し、議論を組み立て、また分析・批判することができるようになる。たとえば、日本法について「これはアメリカの◯◯という制度に由来する」といった言明に接した際、その論拠とされる法源(まともな論者であれば何らかの典拠を示しているはずであるところ、その原典)を見つけて検討し、当該言明が適切なアメリカ法の説明たりえているかを判定できるようになる。
③ ①②に基づき外国法としてのコモン・ローを精確に把握し、これを日本法との比較において議論することができるようになる。たとえば、上記言明に関し、「実際にはアメリカの◯◯は△△を前提にしたものであるから、同様の前提を持たない日本では□□のように解しなければならない」といった評価を行えるようになる。
Schedule and Contents  基本的に以下のプランに従って講義を進める。ただし講義の進みぐあい、時事問題への言及などに対応して順序や同一テーマの回数を変えることがある。
 *授業予定の修正や詳細については、授業用ウェブサイト(後掲)でも案内する。逐次(少なくとも毎回の授業前には)確認すること。また、授業資料等は同ウェブサイト上で配布し、原則として印刷物の形では配布しない。

《前半:アメリカ法》
第1回 憲法史
第2回 アメリカ法の多元性
第3回 法曹制度
第4回 民事手続法
第5回 契約法
第6回 物権法
第7回 法の調べ方  *この回はアメリカのみでなくイギリスとシンガポールも扱う
第8回 信託法
第9回 会社法
第10回 M&A、資本市場法
第11回 統治機構
第12回 基本権
第13回 刑事法
第14回 刑事法史

《後半:イングランドおよびシンガポールのビジネス法》
第15回 英国とシンガポールの立法と司法
第16-18回 牴触法(国際私法)、国際民事訴訟法、紛争解決法
第19-20回 契約法
第21-23回 財産法・物権法、エクイティと信託
第24-25回 会社法
第26-27回 担保法
第28回 不法行為法

《期末試験》

《総まとめ》
第29・30回 フィードバック
Evaluation Methods and Policy 以下を組み合わせて、授業の到達目標に対する達成度を評価する。なお、①は法学部生と共通であるが、②と③は経済学部生に独自の評価対象である。
①期末試験(110分) 50%
②判例調査の密度 50%
③その他、クラスへの貢献度の大きい発言や質問は加点することがある。

実際の試験問題等の難易度に応じて合格点を設定し、基準に達した者を相対評価して優や良といった成績評点を与える。合格点や採点基準はフィードバックの際に提示する予定である。
Course Requirements  事前に履修しておく必要のある科目は特にない。たとえば民事訴訟法や刑事訴訟法、国際私法などは、法学部生にとっても、特に3年生にとってはこれから履修するであろう内容も含まれ、あわせて日本法も学習することを推奨するが、事前または同時に履修していなくともかまわない。知らないことを想定して授業を行う。
 ただし、経済学部高学年の学生として備えるべき法に関する初歩的な理解と標準的な批判能力を備えていること、また大学受験程度の英語および世界史に関する理解を有することを前提に講義を行う。(初歩的な質問を認めないという趣旨ではなく、むしろ質問は(その字に反して質を問わず)積極的に推奨する。)一般教養ないし経済学部生向けの授業でかまわないので、法学や民法などの基本的な科目を履修済み、または自習済みであることが望ましい。
 もっとも、重要なのは「覚えている知識」の量ではなく、未知の問題を発見して創造的に想像力をはたらかせる技能であることは言うまでもなく、創造的想像力強化のために様々な素材に触れるのである。幸いにしてわれわれは、調べればすぐに分かることはコンピュータにやらせておけばよい時代に生きている。
Study outside of Class (preparation and review) ① 毎回の授業の前に、事前に考えてきてほしいことを授業用ウェブサイトに記載することがあるので、思索を及ぼしておくこと。もっとも、これは手間のかかる事前学習を強いるものではなく、講義で扱うトピックに馴染みやすくするための思考の練習であって「ちょっと考えてみる」以上の何らの負担を要せず、もちろん成績評価にも影響しないから気楽に取り組んでほしい。
② 教科書の該当箇所を指定するので事前に予習して授業に臨むことを期待する。短期的に忙しくて手が回らなくても、期末試験までに復習しておくこと(教科書に記載されていることは、講義で触れなくとも、期末試験の範囲内とする)。(授業1回あたり20頁程度以内の予定)
③ 授業で指定する判例のうち、最低でも一つは自分で読んでまとめ、できる限り該当する授業中にその説明を受講生自ら行うことを求める。(初回にもう少し詳しく意図を説明する。)
Textbooks Textbooks/References 基礎から学べるアメリカ法, 岩田太ほか, (弘文堂、2020年), ISBN:978-4-335-35810-4, 授業の前半:アメリカ法の内容に相当する。2022年の早いうちに初版の誤り等の訂正を反映した第二刷が出るので、これを使用すること。
シンガポール・ビジネス法のエッセンス, 平野温郎ほか, (中央経済社、2022年), 授業の後半:イングランドおよびシンガポールの取引法の内容に相当する。2022年5月刊行予定。
 授業用ウェブサイト(後掲)上で授業資料(レジュメ、参考資料など)を配布する。レジュメは原則として授業日の2日前にはアップするので、資料を手持ちのデバイスにダウンロードしたり印刷したりするなど、各自で事前に準備をすること。
 その他の連絡事項も同ウェブサイトに記載する。受講生が頻繁に確認することを前提にする。
References, etc. 参考となる文献および資料は授業中または授業用ウェブサイトにて紹介または配布する。
Related URL https://sites.google.com/view/ku-eibeiho2022/home
PAGE TOP