労使関係と法[Industrial Relations and Law]

Numbering Code P-LAW2076660SJ41 Year/Term 2022 ・ 後期
Number of Credits Course Type 各回の授業において扱う判例について事案と判旨、疑問点などを報告してもらい、議論を行う。報告は、履修者の人数に応じて個人又はグループごとに行う。議論では、判例を鵜呑みにするのではなく、その疑問点や問題点も検討し、正確な理解に努める。また、設例をもとにした課題起案で理解の到達度を検証する。
なお、履修者人数の上限を公共政策大学院の受講者を含めて30名とする。
Target Year 3 Target Student
Language Day/Period 月5
Instructor name 鎌田 幸夫
Outline and Purpose of the Course 集団的労働関係法上の様々な問題に関して、重要判例や学説、さらには労使関係の現状を素材として検討を加える。裁判例や実務で生起する様々な問題の分析、検討を通じて労働組合や労使関係のあり方、および集団的労働関係における労働条件決定について、現行法がいかなる法的枠組みを設定しているか、それが裁判所によってどのように解釈されているかを明らかにするとともに、その問題点や課題および将来的な労使関係法のあり方についても検討する。
Course Goals 上記「授業内容」記載の各項目について理解・修得し、上記「概要」記載の成果を得ることである。
Schedule and Contents 1.わが国の労使関係と労働法・労組法の基本スキーム
わが国の労使関係の特徴とその変化を概観した後、現行労組法の制定経過と憲法28条が定める団結権、団体交渉権、団体行動権を基礎とする集団的労働法の労働法全体のなかでの位置づけ、およびその基本的枠組みと内容を、概括的に検討する。
2.労組法上の労働者概念と管理職組合
労基法上の労働者概念とは異なるものとして定められた労組法上の労働者概念について検討するとともに、労働者のうちでも管理職に関する労組法の態度に関しても検討を行う。
3.労組法上の使用者概念
労組法上の使用者概念は団交応諾義務者をめぐる紛争において問題となることが多いため、団交拒否事件の命令や裁判例を素材に、労働委員会及び裁判所が使用者概念をどのようにとらえているかを検討する。労基法、労働契約法上の使用者概念との対比も行う。
4.団体交渉の意義と機能および団体交渉拒否
団体交渉によって労働条件が設定され、集団的な労使関係が形成されていくが、団体交渉の意義と機能、労使協議との違い、団体交渉の実施や団交拒否をめぐっていかなる問題が発生するかを、裁判例を素材に検討する。
5.争議行為の正当性と違法争議の責任
憲法上、また、労組法上、刑事・民事の責任を免れるのは「正当な」争議行為に限定される。しかし、この「正当な」争議行為について展開されてきた学説や裁判例を素材に、争議権保障の意義や限界、さらには集団的労使関係の意義について検討する。また、争議行為の「正当性」が否定されると、争議行為は違法となる。その場合における責任の内容や範囲に関して検討を行う。
6.組合活動の権利と限界
組合活動には様々なものがあるが、中には使用者側の権利や利益と衝突するものの存在する。争議行為とは評価できない組合活動に関して、そのような使用者利益との調整をどのように図るべきかという問題に関し、裁判例を素材に検討する。
7.争議行為、組合活動と賃金
争議行為、組合活動の正当性を考えるとともに、賃金請求権がどうなるのか、実務上の救済方法はどうなるのかなどを、設例、裁判例を素材に総合的に検討する。
8.労働協約の書面性要件と規範的効力
労組法14条で規定される書面性要件、及び、労組法16条で規定される規範的効力について、その認められるべき範囲、労働条件を変更できる範囲などをめぐる問題について、裁判例や学説を素材にして検討を行う。あわせて、労組法17条との対比して検討する。
9.労働協約の拡張適用と労働協約終了後の労働条件決定
労組法17条で規定される拡張適用を巡る問題、及び、協約が期間満了により、あるいは、解約により終了した後、新たな労働協約が締結されない場合、どのような労働条件が適用されることになるのか、又、使用者が就業規則の改定により労働条件を不利益に変更することが許されるのか、といった問題に関して、裁判例や学説を素材に検討を行う。
10.採用の自由と不当労働行為
募集や採用にあたり、使用者が労働組合員を排除したり、あるいは、労働組合の活動に参加したことを不採用の理由にすることは不当労働行為となるのか、又、そのような行為に対して労働組合はどのような救済を求めることが可能か、といった問題に関して、裁判例、命令、学説を素材に検討を行う。
11.不当労働行為禁止の類型と査定差別 
不当労働行為の禁止類型、特に、不利益取扱いと支配介入の成立要件を概算する。昇進や昇格にあたり組合員に対して低い評価がなされ、処遇面での不利益が生じることがあるが、このような行為が不当労働行為に該当するか否かの判断方法や、不当労働行為と評価された場合の救済方法といった問題に関して、裁判例、命令、学説を素材に検討を行う。
12.支配介入と中立保持義務
労組法7条3号は不当労働行為の一類型として支配介入を挙げるが、使用者のいかなる行為が支配・介入と評価されるのか、また、複数組合がある場合に、使用者のいかなる行為が支配・介入と評価されるのか、といった問題に関して、裁判例、命令、学説を素材に検討を行う。
13.救済命令の限界と不当労働行為の司法的救済
労働委員会は不当労働行為を認定した場合、救済命令を発し、その内容の決定については一定の裁量が認められるが、その限界はどこにあるのか、という問題について、裁判例、命令、学説を素材に検討する。
あわせて使用者の不当労働行為が裁判所で争われた場合、労組法7条各号の規範は私法的効力を有するのか、裁判所は不当労働行為に対してどのような救済を与えることができるのか、といった問題に関して、裁判例、学説を素材に検討を行う。
14.まとめ
最後に、課題起案の講評を行う。
また、現在の労使関係および将来的な労使関係法の在り方と法律家の役割について考える。
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