知的財産法事例演習[Seminar on Intellectual Property]

Numbering Code P-LAW2076400SJ41 Year/Term 2022 ・ 後期
Number of Credits Course Type 演習形式:
一般には、課題が事前に配布され、全員が予習をし、担当者は担当する授業の10日前までに課題となった法的文書を全員に配布する。授業では担当者による報告を受けて、全員で議論する。学生は、報告担当となっていない回においても、十分に予習を行って、積極的に議論に参加することが期待されている。
Target Year 3 Target Student
Language Day/Period 木5
Instructor name 平野 惠稔
Outline and Purpose of the Course 知的財産法は、特殊なものと思われがちだが、その解釈において実は一般の法的思考の延長線上にあるべきものである。ただ、知的財産法は目に見えない情報を保護するものであり、また、文化やサイエンスと密着している法であることから、一定の特別な考慮を必要とする分野であることも確かである。本講座では、知的財産案件について実務的な観点から深く考え、それぞれの問題点について各種書面を作成し、議論をすることを通じて、知的財産法における法律実務家としての考え方の基礎を習得することを目標とする。学生は、事前に与えられた具体的事案を前に、何が問題かを発見し、それに関する判例・学説・その他をリサーチし、重要判例・学説への当てはめや区別をし、問題の解決を見出す。授業では、担当者が課題に応じた各種法的文書を作成して報告し、この文書を題材としてさらに全員で議論をして理解を深める。各人が単独または共同で最低1回は報告者となる。本演習では、知的財産権法全体、特許法、著作権法の法律全体を体系的に網羅することを目的とせず、あくまで実務法律家を目指す者が有すべき具体的事例への対応能力を学ぶ。また、法的文書の作成が課題となるが、そのフォーマリティや文章の書き方に授業の重点を置くものではなく(したがって作成された法的文書の添削はしない)、法律実務家として主張に説得力を持たせるための調査や論理展開がどのようなものであるべきかを討論を通じて学ぶ。
Course Goals 上記「授業内容」記載の各項目について理解・修得し、上記「概要」記載の成果を得ることである。
Schedule and Contents 1.イントロダクション
各種経済活動において知的財産権がどのように創造され、保護、活用されているか、知的財産の創造、保護、活用のサイクルについて考えるとともに、各種知的財産権の保護の対象とその限界を考える。また、知的財産法が隣接する各種法律、民法・独占禁止法・事業法などとどのような関係にあるのか理解する。授業の終わりに第3回以降の報告の割り当てをする。
2.知的財産事例演習1(いわゆる物のパブリシティ)
いわゆる物のパブリシティについて、広く権利付与を認めるべきであるとする者と否定する者によるディベート形式による討論を行う。最高裁の競走馬名パブリシティ判決(H16.2.13民集58巻2号311頁)ピンクレディー判決(H24.2.2民集66巻2号89頁)およびその下級審判決・関連事件などを参照する。
3.知的財産事例演習2(職務発明)
退職後会社に対し職務発明の相当対価を請求したいとの依頼者の相談を受けた事例において、依頼者から聞き取るべき事項についての手控えを作成する。発明者の認定、特許を受ける権利の帰属、旧法と新法の対比についての理解を深める。オリンパス事件(最判H15.4.22民集57巻4号477頁)、青色ダイオード事件(東地判H16.1.30判時1852号36頁。東京高裁H17.1.11和解)、平成16年度および平成27年度特許法改正の経過などを参照する。
4.知的財産事例演習3(知的財産と消尽)
新規事業として使い捨てのインクつぼの販売を計画している会社の依頼で新規事業についての適法性に関する弁護士の見解書を作成する。キャノンインクジェット事件(最判H19.11.8民集61巻8号2989頁)などを参照する。
5.知的財産事例演習4(特許権侵害訴訟と準拠法・国際裁判管轄)
所属する法律事務所のパートナーからの依頼で、特許権侵害訴訟と準拠法・国際裁判管轄について、日本の学説・判例についての状況をまとめたメモを作成する。FM信号復調装置事件最高裁判決(H14.9.26民集56巻7号1551頁)を中心に、関連判例を参照する。
6.知的財産事例演習5(並行輸入)
独占的販売代理店から並行輸入品の国内での販売を差止訴訟によって止めて欲しいとの依頼を受け、弁護士として特許権および著作権に基づく並行輸入差止めについての警告状を作成する。BBS並行輸入事件(最判H9.7.1民集51巻6号2299頁)などを参照する。
7.知的財産事例演習6(著作権に基づく差止請求権の範囲)
インターネットによって配信するサービスなどに対して差止め請求権が認められるかについて、法律実務家として法律意見書を作成する。まねきTV事件(最判H23.1.18民集65巻1号121頁)などを参照する。
8.9.10. 特許侵害訴訟演習1、2、3
まず、特許権侵害事件の事例に基づいて、原告側の弁護団として、訴状に記載すべき事項、訴訟において問題となりえ、検討しておくべき事項についての内部検討用メモを作成する。また、同じ特許権侵害事件の事例に基づいて、被告側の弁護団として、答弁書に記載すべき事項、訴訟において主張すべきであり、検討しておくべき事項についての内部検討用メモを作成する。文言解釈、均等論、間接侵害、公知技術の参酌、104条の3、出願禁反言、先使用などについての理解を具体的事例の解析を通じて深める。
11.特許侵害訴訟演習4
特許侵害訴訟に関する侵害訴訟での攻撃防御方法の問題、無効審判との関係などについて検討する。プロダクトプロセス事件(最判H27.6.5民集69巻4号700頁)とその下級審判決などを参照する。
12.知的財産事例演習7(著作権の制限)
依頼者が企画するエコ美術展の開催で生じうる問題点についての質問に対し、回答を作成する。問題となる著作権の制限規定について検討し、日本法にフェアユース規定が必要か否かについても考える。パロディモンタージュ写真事件(最判S55.3.28民集34巻3号244頁)などを参照する。
13. 知的財産事例演習8(医学・バイオ研究における諸問題)
医学・バイオ領域における特許法の諸問題、医療方法の特許可能性、試験研究の範囲、冒認特許の取扱いなどについてアドバイスのポイントをまとめたメモを作成する。
14.知的財産契約
某キャラクターのライセンスを受けて、文房具を販売したい依頼者からの相談を受けた場合に、契約上注意すべき点について、講義または契約ドラフトの骨子の作成を行う。キャンディキャンディ事件最高裁判決(H13.10.25判時1767号115頁)とその下級審判決、ポパイ・ネクタイ事件最高裁判決(H9.7.17民集51巻6号2714頁)などを参照する。
なお、上記の内容及び順序は、各種状況に鑑み変更することがあるので、予め留意されたい。
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