国際私法1[Private International Law I]

Numbering Code P-LAW2066000LJ41 Year/Term 2022 ・ 前期
Number of Credits Course Type 講義形式を基本とするが、時間的に可能な範囲で、双方向・多方向形式を交える。
Target Year 2・3 Target Student
Language Day/Period 火5
Instructor name 中西 康
Outline and Purpose of the Course 国際私法について、導入部に続き、総論のうちの基本的問題、国際民事手続法の概説、各論のうちの財産法関係を扱う。
外国企業と日本企業との売買契約や外国での航空機事故に基づく損害賠償など、外国と関係する要素を持つ国際的な私法上の法律関係からは、純粋の国内的な法律関係とは異なる特別の法律問題が生じる。わが国の裁判所が事件を審理することができるのか(国際裁判管轄)、どこの国の法を判断基準とするのか(準拠法)、すでに外国で判決が下されている場合にその判決はわが国で効力を持つのか(外国判決の承認執行)などであり、これらの問題を規律するのが国際私法である。
今日、外国と全く無関係で国内だけで完結するような法律関係はまずない。そこで、民法などとは違う点がある国際私法的なものの考え方が必ず必要となる。少なくともこの国際私法1については、実務法曹になる者のたしなみとして、なるべく多くの学生が受講することを期待している。
Course Goals 上記「授業内容」記載の各項目についてその内容を具体的に説明できるように理解して、上記「概要」記載の成果を得ること。
Schedule and Contents 1.国際私法の意義、性質と考え方、基本理念と正義、法源
渉外的法律関係を国際私法によらずに規律するとどのような問題が生じるかを考えて、国際私法の必要性を確認する。引き続き、国際私法の基本理念、性質、法源などにふれる。
2.準拠法指定過程の基本構造・連結政策
第2回から第5回では、狭義の国際私法総論について講義する。国際私法1では総論のうち、原則としてつねに問題となる基本的問題を扱う。
この回ではまず、準拠法指定過程の基本構造を概説する。次いで、わが国の抵触規則を概観して、どのような連結点が用いられてどのような準拠法が選択されているを整理し、様々な連結方法について解説する。
3.法律関係の性質決定・連結点
各抵触規則は「相続」(通則法36条)のような概念を用いて単位法律関係毎に類型的に準拠法を定めているので、いずれの抵触規則が適用されるかを決定するためには、法律関係の性質決定が問題となり、これを検討する。
次に、それぞれの抵触規則は、準拠法を決定するための基準として、目的物の「所在地」(通則法13条)のような法的概念を用いており、連結点と呼ばれる。連結点について詳細は各抵触規則ごとの解釈問題であるが、多くの抵触規則で用いられている常居所について概説する。国籍は国際私法2に譲る。
4.外国法の適用
外国法の性質、外国法の解釈・適用・証明、不明の場合の処理、適用違反に対する上告の可能性について検討する。
5.国際私法上の公序
準拠法として選ばれた外国法の適用が、わが国において耐え難い結果を生ずる場合に安全弁として発動する、国際私法上の公序を扱う。
6.国際裁判管轄
第6-7回では、国際私法のうち、手続上の問題を扱う国際民事手続法の概略を説明する。具体的には、関連する民訴法3条の2以下、118条をあてはめて、主要な問題に関する簡単な設例の処理ができることまでを目指す。これより詳しい検討は、「国際民事手続法」に譲る。
この回では、わが国の裁判所が事件について実体審理することが可能であるかという、国際裁判管轄の問題について民訴法3条の2以下を概説する。
7.外国判決の承認執行
すでに外国で下された判決のわが国における承認執行について、その根拠と民訴法118条の各承認要件の概略を説明する。
8.自然人・法人
この回以降は、国際私法各論のうち、財産法分野について講義する(ただし知的財産権は時間配分の都合上、国際私法2で扱う)。
この回では、取引の主体について、自然人について行為能力(通則法4条)、法人について従属法の意義と適用範囲などを説明する。なお、自然人に関して通則法5,6条は、国際私法2で扱う。
9.契約1
契約に関して、当事者自治(通則法7、9条)、当事者による準拠法の指定がない場合の客観的連結(通則法8条)について説明する。ただし、時間配分の都合上、一部は第10回に回す。
10.代理・方式
前回の続きに引き続き、法律行為自体の実質的成立問題のうち、代理を取り上げてから、形式的成立要件である方式一般について説明する。
11.契約2(弱者保護)
消費者および労働者といういわゆる弱者を保護する特則である、通則法11条、12条について説明する。さらに、国際的強行法規の適用についてもふれる。
12.法定債権
契約に基づかない法定債権について、不法行為を中心に通則法の規定の順序に従って説明し、事務管理・不当利得にもふれる。
13.物権
取引の客体となる、物権について説明する。
14.債権法の諸問題
取引の客体となる、債権について、その移転に関する債権譲渡、相殺、対外的効力などの諸問題を説明する。
なお、時間があれば最後に、授業全体についての質問を受け付ける。
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