生命倫理と法[Bioethics and Law]

Numbering Code P-LAW2065020LJ41 Year/Term 2022 ・ 後期
Number of Credits Course Type 初回を除き、事前に配付する資料に基づき、基本的には講義方式により行う。 毎回、授業終了前に、その回の授業内容にかかわる小レポートを作成し、提出することとする(今年度は、新型コロナ感染防止のため、PandAの課題提出ツール等を用いる予定)。
Target Year 2・3 Target Student
Language Day/Period 水1
Instructor name 服部 高宏
Outline and Purpose of the Course 生命科学と医療技術の著しい進展によって生命現象への人為的介入の可能性が拡がるにつれて、人々の死生観も流動化し、医療の在り方をめぐって、医師の専門職倫理を超えて、社会倫理的な関心を集める問題が次々と生じ、新たな法的対応を迫られている。生命倫理をめぐる法的対応の在り方について、代表的な論点を重点的に取り上げ、生命倫理の基本原理と思考枠組をふまえた上で、比較法的観点から内外の立法・裁判などの具体的事例にもふれながら、検討を加え、理解を深める。
Course Goals 上記「授業内容」記載の各項目についてその内容を具体的に説明できるように理解して、上記「概要」記載の成果を得ることである。
Schedule and Contents 1【生命倫理の歴史と考え方】主としてアメリカにおける生命倫理の成立と深化・変容の過程を概観した上で、日本に生命倫理が受入れられてきた経緯も検討する。また、生命倫理の問題を検討する上で必要な、規範倫理学の基本的な考え方(義務論、目的論等)を概観し、生命倫理の四原則(自律尊重原則、善行原則、無危害原則、正義原則)の内容とその用い方に検討を加える。
2【生命倫理問題への法的介入】 生命倫理問題への法規制の様々な手法・在り方について考察を加えた上で、主な国々(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ)における生命倫理問題に関する法制度・議論の状況を概観し、それらを相互に比較しながら検討を加える。
3【インフォームド・コンセント】患者の自己決定権とその具体化である医療におけるインフォームド・コンセントの原理の意義と内容について、日本やアメリカの具体的な事例を検討素材としながら考察を加えた上で、医師・患者関係の在り方についての様々な考え方や、医師の専門職制(とくに日本の制度状況)について理解を深める。
4【生殖補助医療】人工授精、体外受精、代理懐胎など、生殖補助医療の様々な種類、現状、倫理的・法的問題点について、技術毎の違いにも注意しつつ、網羅的に理解した上で、わが国における規制をめぐる議論の状況や、とりわけこうした先端医療技術がもたらす家族法上の今日的課題について検討を加える。
5【人工妊娠中絶】人工妊娠中絶について、日本おける世界各国における法的対応の歴史・現状・類型、倫理的問題の所在、さらには日本における法的対応の特徴とその倫理的問題点について検討を加える。
6【出生前診断・着床前診断】出生前診断および着床前診断にはどのような技術があり、それがいかなる倫理的問題をもたらすかを理解した上で、法的規制の在り方について検討を加えるとともに、着床前診断については胚保護との関連で、また出生前診断については人工妊娠中絶との関係でどのような問題があるかについて考察する。
7【脳死と臓器移植】脳死という考え方が出てきた背景、その概念、判定方法などについて理解した後に、脳死移植をめぐる倫理的・法的諸問題と過去の経緯、さらに現在のわが国の法制度と課題および最近の法改正後の動向・問題点について、検討を加える。また、わが国では諸外国より活発に行われている生体移植の現状と倫理的・法的諸問題についても、併せて考察する。
8【終末期医療】安楽死・尊厳死をめぐる議論の歴史と、わが国においては主に裁判所の判例がリードしてきた安楽死の合法化要件をめぐる議論の概要を理解し、それに検討を加えた上で、終末期における延命治療の差控え・停止が許容されるのはどのような場合かについての議論状況を検討する。
9【小児医療と法・倫理】医療におけるインフォームド・コンセントの同意能力を全くあるいは不十分にしか持たない未成年者に対する医療の在り方について、親権者の果たすべき役割も視野に入れつつ、検討を加え、とくに重度障害新生児の治療停止をめぐる議論について、日本やアメリカの事例を取り上げつつ考察する。
10【公衆衛生と法】公衆衛生をめぐる倫理と法の問題の全体像を理解したうえで、感染症に対する人類の闘いを振るとともに、感染症の蔓延を防止するための個人の自由の制約の根拠について検討し、また成人病予防の目的での個人のライフタイルへの干渉の妥当性について考察を加える。
11【臨床試験、ES細胞・iPS細胞、ヒト由来物質、エンハンスメント】臨床試験に対する規制の在り方およびその正当化根拠と限界について、憲法が保障する学問の自由との関連も考慮しつつ、検討を加え、それとの関連で、再生医療の新たな道として期待されるES細胞・iPS細胞研究についても考察する。また、移植目的や研究目的で利用価値が高いとされるヒト由来物質をめぐる法的・倫理的問題についても、併せて検討を加える。
12【クローン・ヒト胚、遺伝子研究・遺伝子診断】ヒト・クローンの作成はなぜ禁止されるべきなのかについて、とくに人間の尊厳の理念と関連づけつつ、検討加える。また、個人または一個人を超えた個人情報ともいうべき遺伝子情報のデリケートさに注意を払いつつ、遺伝子研究・遺伝子診断の問題点について考察する。
13【精神医療と法・倫理】精神医療の在り方について、精神保健福祉の在り方と触法精神障害者の処遇の二側面から、これまでの議論および制度の変容を概観した上で、倫理的・法的な問題点・課題を指摘し、とりわけ精神障害者に対する自由の拘束・制限の許容性、正当化根拠およびその限界について検討を加える。
14【看護・介護と法・ケア】キュア(治療)とは区別されうるケアをその本質とする看護・介護の業務について、医療や福祉におけるその独自の意味を問う。とりわけ、原理に基づく普遍主義的な正義思考と対置される、個別主義的・関係志向的なケア思考の意義とその射程について、検討を加える。
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