民法総合2[Civil Law (Advanced) II]
Numbering Code | P-LAW2062240LJ41 | Year/Term | 2022 ・ 後期 |
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Number of Credits | Course Type | 双方向・多方向形式 | |
Target Year | 2 | Target Student | |
Language | Day/Period | 月5 | |
Instructor name | 西内 康人 | ||
Outline and Purpose of the Course | この授業では、物権変動・原状回復・民事責任に関する法律問題を総合的に取り扱う(債務不履行責任については、民法総合1で扱われる)。民法典は、物権変動・原状回復・民事責任に関する問題につき、物権法・契約各論・事務管理・不当利得・不法行為の各所で多様な規律を用意している。本講義は、それらの規律に関する基礎的な知識を修得していることを前提として、これらの規律が具体的な問題の処理にあたってどのように作用するのかを複合的に考察するとともに、それが要件・効果規範を形づくる要件事実へとどのように収斂していくのかという点に関する理解を獲得することを目的とするものである。民法の実体法規範に関する理論と要件事実論との関連づけを図る授業である。上記分野にかかる民法理論を咀嚼し、かつ、要件事実の理解に秀でたトップレベルの学生を育成することを、達成目標としたい。 | ||
Course Goals |
上記「授業内容」記載の各項目についてその内容を具体的に説明できるように理解して、上記「概要」記載の成果を得ることである。 民法関係の基礎科目と基幹科目を通じての到達目標については、別に掲載する「京都大学法科大学院の到達目標」(民法)のとおりである。 |
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Schedule and Contents |
(2022年2月現在、問題内容を改訂中であり、具体的な内容は変化することがありうる。) 1.物権変動Ⅰ―不動産の譲渡と対抗問題 既に対抗要件の主張・立証責任に関する基礎知識を修得していることを前提として、民法177条が定める不動産物権変動における対抗要件の意味を再確認する。あわせて、対抗問題をめぐる民法理論の対立が、どのような意味と問題をはらんでいたのかを、明らかにする。 2.物権変動Ⅱ―不動産物権変動と占有の承継・取得時効 相続による占有の承継が取得時効に関係してくるケースを素材として、既に修得した占有理論に関する理解を再確認するとともに、この問題を不動産物権変動の対抗問題とつなげることにより、輻輳する事柄を選りだして要件・効果を関連づけていく実践的能力を開発する。 3.物権変動Ⅲ―動産物権変動と即時取得・原状回復 動産の転々譲渡に関するケースを素材として、即時取得の要件事実に関する基礎的理解を修得させる。あわせて、所有権の追跡のための法的手段とそれを阻止するための防御の理論的手法を磨く。 4.物権変動Ⅳ―相続と物権変動 相続と物権変動に関する諸問題を扱う。とりわけ、2018年相続法改正(平成30年法律第72号)もふまえて、法定相続、遺言による物権変動のあり方について検討する。 5.原状回復Ⅰ―物の付合と原状回復 不動産に他人の物が結合した事例を用いて、そこにおいて生じる法律問題と事実関係の処理のあり方(規範適用の要件・効果、事実のあてはめ)を、付合、侵害利得、不法行為その他の観点のもと、当事者それぞれの立場から検討する。 6.原状回復Ⅱ―金銭の不当利得と原状回復 誤振込みの事例を用いて、金銭的価値が連鎖的に移転した場合に生じる法律問題と事実関係の処理のあり方(規範適用の要件・効果、事実のあてはめ)を、原因関係の扱いも踏まえて、当事者それぞれの立場から検討する。 7.原状回復Ⅲ―管理物への費用投下と不当利得 他人からの委託を受けて管理する不動産に対して管理者が費用を投下した場合に生じる法律問題と事実関係の処理のあり方(規範適用の要件・効果、事実のあてはめ)を、当事者間での委託契約の内容を踏まえ、当事者それぞれの立場から検討する。 8.不法行為Ⅰ―交通事故 交通事故に関する設例の検討を通じて、不法行為に基づく損害賠償責任の基本的な要件・効果の仕組みおよび当てはめにおける具体的事実の抽出・評価の手法を習得する。 9.不法行為Ⅱ―人格権侵害 名誉、プライバシー、パブリシティといった各種の人格的権利の侵害に関して展開された判例法理を、その理論的意味および射程を明らかにしつつ学習する。また、不法行為における原状回復および差止めといったいわゆる特定的救済の要件・効果を検討する。 10.不法行為Ⅲ―医療過誤 医療の場面で医師に過失があった場合の不法行為法上の処理を検討する。とりわけ、医師の過失と生命侵害との間に因果関係が認められない場合につき、どのような判例法理が展開されているのかを、その理論的意味とともに学習する。 11.不法行為Ⅳ―工作物責任 いわゆる瑕疵責任の1つとして工作物責任を取り上げ、その要件の判断枠組が過失責任および(狭義の)危険責任とどのように異なるのかを踏まえつつ、その特色を学習する。 12.不法行為Ⅴ―共同不法行為・競合的不法行為 ある物質から一定期間潜伏したのちに多数の者に対して人身被害が生じる事例を用いて、重合的競合の扱いも含め、共同不法行為・競合的不法行為の要件と効果、さらには求償問題について、当事者それぞれの立場から検討する。 13.団体の法律関係 団体をめぐる法律関係については、民事訴訟法においても当事者論で扱われる予定であるが、今回は、団体代表者による契約締結の意味、団体財産をめぐる法律関係を中心として、代理・代表制度の理解を再確認しながら、要件・効果に関する理解を深めることとする。代理・法律行為に関する民法総合1での学習成果を再確認する場も兼ねる。 14.総括 以上の講義を総括し、重要な問題についての知識を再確認するとともに、時間不足で検討が足りなかった部分の補足をおこなう予定である。 |