公法総合3[Public Law (Advanced) III]

Numbering Code P-LAW2072060LJ41 Year/Term 2022 ・ 前期
Number of Credits Course Type 主に判例を素材として、双方向・多方向形式で行う。
指定された範囲の予習は必ず行うこと。
Target Year 3 Target Student
Language Day/Period 月4
Instructor name 毛利 透
Outline and Purpose of the Course 本科目は、基本的人権の基礎理論や憲法訴訟論の基本的な考え方、行政法総論及び行政事件訴訟に関する基本的な理解を有していることを前提として、基本的人権に関わる問題を具体的な事例においてどのように構成し主張すべきかについて学習する。その際には、違憲審査基準論や立法事実論の実際的な展開の仕方に留意するとともに、憲法と行政法その他の法分野との融合的な課題についても検討を加える。
Course Goals 上記「授業内容」記載の各項目についてその内容を具体的に説明できるように理解して、上記「概要」記載の成果を得ることである。
憲法関係の基礎科目と基幹科目を通じての到達目標については、別に掲載する「京都大学法科大学院の到達目標」(憲法)のとおりである。
Schedule and Contents 1.幸福追求権とプライバシー
幸福追求権条項による補充的基本的人権保障の基本的な考え方について考察した上で、住民基本台帳ネットワーク訴訟判決などを素材として、憲法により保障されるプライバシー権の内容・範囲及びその制約について考察する。(第2章第1、2節)
2.家族と平等 Ⅰ
平等条項をめぐっては近年、特に家族法に関係する訴訟で積極的な判例形成が進んでいる。平等関連訴訟における目的・手段審査のあり方の一般論をふまえつつ、法定相続分不平等や国籍法違憲訴訟に関する判例を取り上げて、検討を行う。(第3章第1、2節)
3.家族と平等 Ⅱ
引き続き、近時示された女性の再婚禁止期間についての判例を扱うとともに、夫婦同氏制の合憲性についての判決も、14条以外の争点も含めて検討する。
4.思想及び良心の自由
思想及び良心の自由の意義、保障範囲及びその制約について、謝罪広告請求事件や君が代斉唱事件などを素材にして、信教の自由の問題にも言及しつつ、考察をする。(第4章第1節)
5.政教分離の違憲審査基準
政教分離に関する違憲審査基準について考察する。その際には、相当な関わりあいの基準が実際の事件においてどのように用いられるか、どのような事実が裁判所の判断を左右しているかという点に注目して検討を行う。(第5章第2節)
6.営利的表現・わいせつ表現と表現の自由
営利的表現・わいせつ表現に対する刑事的・民事的制約について、憲法21条の観点から考察する。具体的には、表現の自由の意義を確認したのち、典型的な内容規制である両者について、その規制根拠や表現の自由の保護の範囲・程度について検討を行う。 (第6章第1-3節)
7.公務員の政治活動に対する規制
公務員の政治活動に対する規制について考察する。具体的には、公務員の地位の特殊性からどのような制約が認められるのか、また、どのような判断枠組みが用いられるべきか、公務員の争議活動に対する制約の場合と適宜比較しつつ、検討を行う。(第1章第2節)
8.選挙権と選挙運動の自由
選挙権の保障の保障範囲及びその制約の違憲審査の在り方について、在外国民選挙権訴訟などを素材として検討する。また、選挙運動の規制に対する判例について、表現の自由の制約に関する一般論とも関連させつつ、考察する。(第6章第5節)
9. 結社の自由
結社の自由について、団体とその構成員との関係に着目して検討を行う。特に強制加入団体においては、団体の統制権と構成員の選挙権や思想・良心の自由との衝突が先鋭化するが、どのように考えるべきか、判例を素材に考察する。あわせて、司法審査の限界の問題についても触れる。(第4章第1節、第9章第3節、第13章第3節)
10. パブリック・フォーラム
公園、市民会館、道路といった、いわゆるパブリック・フォーラムにおける表現活動の規制について考察する。具体的には、公園、市民会館における集会の規制及び道路での集団行進の規制について検討を加える。(第6章第4節、第9章第1、2節)
11.情報の自由な流通とマス・メディア
情報の自由な流通システムを構築・維持するためには、情報の提供だけではなく、その収集や受領の自由が確保される必要がある。こうした観点から、マス・メディアの憲法上の地位に着目し、その取材の自由に関する問題ついて考察する。具体的には、法廷において取材源を秘匿する権利及び取材フィルム等を証拠として裁判所に提出することを拒否する権利の意義と限界について検討を行う。(第8章第1節)
12. 経済的自由(1)
職業選択の自由をめぐる判例を整理し、目的二分論の射程を確認する。規制緩和の中で、現実の諸法制がどのように正当化されうるのかについても検討を加える。(第10章第1節)
13. 経済的自由(2)
憲法29条が定める財産権保障の意味、その限界について、学説上の議論と判例の関係にも留意しつつ考察する。3項の損失補償をめぐる諸問題も検討する。(第10章第2節)
14.生存権
生存権の基本権としての意義・構造・特質について、自由権(防御権)との異同を意識しつつ、考察する。あわせて、裁量統制のあり方に関する最近の学説にも目を向ける。 (第11章)
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