公法総合2[Public Law (Advanced) II]

Numbering Code P-LAW2062040LJ41 Year/Term 2022 ・ 後期
Number of Credits Course Type 判例を主な素材として、双方向・多方向形式により、かつ予習を前提にして行う。
Target Year 2 Target Student
Language Day/Period 水2
Instructor name 土井 真一・仲野 武志
Outline and Purpose of the Course 司法審査制度は、司法裁判所が、具体的事件・争訟において立法・行政の活動などに対して憲法・法令を解釈・適用し、人権を実効的に救済するとともに、憲法秩序の維持や行政の適法性の確保を図るものであって、法の支配の実現のために非常に重要な制度である。
本科目では公法総合1の授業を受けて、まず行政訴訟において「法の支配の原理」ないし「法治行政の原理」がどのような局面で問題とされるかを、「行為形式」(行政立法、行政処分)、「裁量」、「行政手続」、「実効性確保」などの理論枠組みに即して学ぶ。
その知識をふまえて、次に付随的違憲審査制の基本構造、司法権における「法律上の争訟」の要件など、憲法訴訟の制度・手続に関する問題を扱う。科目全体として現行の司法審査制度について広く検討し、公法の学識に立脚した批判的視点からその問題点の把握にも努める。
Course Goals 上記「授業内容」記載の各項目についてその内容を具体的に説明できるように理解して、上記「概要」記載の成果を得ることである。
憲法及び行政法関係の基礎科目と基幹科目を通じての到達目標については、別に掲載する「京都大学法科大学院の到達目標」(憲法及び行政法)のとおりである。
Schedule and Contents 1.行政立法の仕組みと法的統制
行政立法すなわち政令・省令などの制定行為に関する法的仕組み、実体的統制法理、事前手続による統制、さらには司法的統制のあり方を検討する。法律と条例の関係の問題もここで扱う。また、裁量基準についてもここで一度触れる。
2.行政行為(行政処分)
行政行為(行政処分)は、現行行政法秩序のキー概念の1つであるとともに、それについては多様な理論が形成されているので、それらを順次検討する。まず、行政行為(行政処分)の概念・効力、それに関連して、いわゆる取消しと無効の区別(公定力)を扱い、行政行為(行政処分)に関する実体法理として、行政行為の職権取消しおよび撤回に関する法理について検討する。
3.行政手続
適正手続の法理と憲法との関係、行政手続法制定の意義などについて検討したのち、行政手続法が申請に対する処分について定めている仕組み(審査基準、審査応答義務、理由提示など)および同法が定めている不利益処分に際しての事前手続(聴聞などの意見陳述手続、聴聞手続に組み込まれている文書閲覧など)について検討する。
4.行政裁量の法的統制
行政裁量の意義(自由裁量と覊束裁量の区別の問題を含む)および行政裁量を統制する仕組みとしての裁量基準について検討したのち、行政裁量の司法審査の問題を、裁判例に即して検討する。
5.行政指導による行政目的の実現とその限界
行政指導は、わが国行政実務においてよく用いられる手段である。そこで、まず行政指導が行政実務の中において果たしている役割を検討し、それを踏まえて行政指導の法的限界について検討する。その際には、行政手続法における行政指導に関する規定が主たる検討素材である。
6.行政規制の実効性の確保
行政に対して国民が負う義務の強制的な実現に関する問題と、国民が行政上の義務を履行しなかった場合の制裁の問題を「行政規制の実効性の確保」として位置づけ、それぞれについて検討する。行政上の義務の強制的実現の方法としては、行政上の強制執行と司法的執行の双方を扱う。行政上の制裁としては、伝統的な手法である行政罰の他、近年では、公表や行政サービスの提供の拒否などが用いられるようになり、独自の問題を提起しているので、それについても検討する。
7.情報管理
情報公開制度は、国民の「知る権利」を実現するための仕組みであるといわれるが、同時に、政府の活動すなわち行政活動を統制するための仕組みでもある。また、マイナンバー制度やオープンデータに代表される個人情報保護制度の近時の変容を踏まえ、この分野で提起されている諸問題についてもあわせて検討する。
(以上第7回まで仲野が担当)
8.付随的違憲審査制度の基本構造
なぜ日本国憲法第81条に規定されている違憲審査制度が付随的違憲審査制度であると理解されるべきなのかを、「司法権」の概念理解と関係させながら考察する。また付随的違憲審査制度とは具体的にどのような制度を意味するのかという問題についても考える。
9.「法律上の争訟」の要件①-客観訴訟と司法権
客観訴訟と呼ばれる訴訟類型が存在すること、そこでも裁判所が憲法判断を行なっていることを押さえた上で、その憲法上の根拠と限界について考察する。また、民衆訴訟や機関訴訟であるとして却下された訴えを考察することで、逆に事件・争訟性の要件の内容を明らかにする。
10.「法律上の争訟」の要件②-部分社会論
社会に存在する様々の団体内部の紛争について、しばしば、その団体が「部分社会」を構成しており、裁判所の介入には限界があると論じられる。そのような主張の根拠を検討するとともに、いかなる団体になぜ自律的法秩序形成を認めるべきなのかを具体的に考察する。
11.立法行為・立法不作為の違憲審査
立法の作為・不作為により憲法上の権利が直接侵害されている場合、どのような方法で裁判上の救済を受けることができるかについて考察を行う。その際には、公法上の当事者訴訟の射程、立法(不作為)違憲確認訴訟の創設の可否や国家賠償訴訟の活用のあり方に関する問題について検討する。
12. 憲法上の争点を提起する当事者適格
司法審査が具体的事件の解決に付随して行われる以上、そこでは訴訟当事者の権利のみを主張できるのが原則であるが、第三者の憲法上の権利を主張することが許される場合もあると言われる。どのような場合にそのような例外を認めるべきか、違憲審査制の機能論とも関連させて考える。
13.憲法判断回避の原則、合憲限定解釈
付随的審査制の要件が満たされている場合でも、裁判所が憲法判断に踏み込まない場合や法律解釈によって違憲判決を避ける事例が多く存在する。両者の相違に注意しつつ、これらの手法がどのような場合に正当化されるか、それはどのような効果をもつかについて検討する。
14.憲法判断の方法
憲法判断の手法には文面審査と適用審査があるといわれる。両者はどのように相違しているか、どのような基準で使い分ければよいのかについて、前回の授業とも関連させながら考察する。
(第8回から第14回は土井が担当)
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