行政法総合[Administrative Law (Advanced)]

Numbering Code P-LAW2062030LJ41 Year/Term 2022 ・ 前期
Number of Credits Course Type 双方向・多方向形式による。判例を中心とする事例を素材に授業を行うが、判例の蓄積の乏しい事項については、法律の規定や学説を素材にする。各テーマについての十分な予習が望まれる。
Target Year 2 Target Student
Language Day/Period 水4
Instructor name 原田 大樹
Outline and Purpose of the Course 行政活動は、その目的、手段のいずれもが多様であり、国民の権利義務に直接に影響することが多く、さらに、能動的・恒常的に日常生活に介入する。このような行政活動のうちでも特に重要なのは、対外的な(国民に対して行われる)活動である。また、違法な行政活動がなされた場合には、国民の側からその救済を求める手段も重要となる。本講義においては、これらを規律する行政作用法・行政救済法の一般理論を中心にその法的課題を検討するとともに、判例・裁判例で問題とされている個別行政法規の仕組みについても理解を深める。
具体的には、行政活動に対する法的分析の基盤である法律による行政の原理がどのような局面で問題とされるかを、「行政上の規範」「行政行為(行政処分)」、「行政手続」、「行政裁量」、「実効性確保」などの理論枠組みに即して学ぶ。次に、行政訴訟の典型である「取消訴訟」の訴訟要件、審理及び判決の効力について扱う。さらに、その他の行政訴訟の類型、仮の権利救済の順に取り上げることとする。
Course Goals 上記「授業内容」記載の各項目についてその内容を具体的に説明できるように理解して、上記「概要」記載の成果を得ることである。
行政法の基礎、公法総合(行政法部分)と合わせた到達目標は、別に記載する「京都大学法科大学院の到達目標」(行政法)のとおりである。
Schedule and Contents 1.行政上の規範(命令等・計画・条例)
行政立法すなわち政令・省令などの制定行為に関する法的仕組み、実体的統制法理、事前手続による統制、さらには司法的統制のあり方を検討する。行政上の計画や、法律と条例の関係の問題もここで扱う。また、裁量基準についてもここで一度触れる。
2.行政行為(行政処分)
行政行為(行政処分)は、行政法秩序の鍵概念の1つであるとともに、それについては多様な理論が形成されているので、それらを順次検討する。まず、行政行為(行政処分)の概念・効力、それに関連して、いわゆる取消しと無効の区別(公定力)を扱い、実体法理として行政行為の職権取消し・撤回に関する問題を取り上げる。
3.行政手続・行政調査
適正手続の法理と憲法との関係、行政手続法制定の意義、行政調査などについて検討したのち、行政手続法が申請に対する処分について定めている仕組み(審査基準、審査応答義務、理由提示など)および同法が定めている不利益処分に際しての事前手続(聴聞などの意見陳述手続、聴聞手続に組み込まれている文書閲覧など)について検討する。
4.行政裁量
行政裁量の意義(自由裁量と覊束裁量の区別の問題を含む)および行政裁量を統制する仕組みとしての裁量基準について検討したのち、行政裁量の司法審査の問題を、判例・裁判例に即して検討する。
5.行政の諸行為形式
行政指導は、わが国行政実務においてよく用いられる手段である。そこで、まず行政指導が行政実務の中において果たしている役割を検討し、それを踏まえて行政指導の法的限界について検討する。その際には、行政手続法における行政指導に関する規定が主たる検討素材である。また、行政指導に類する機能を持つ行政上の契約についても、併せて取り扱う。
6.行政規制の実効性確保
行政に対して国民が負う義務の強制的な実現に関する問題と、国民が行政上の義務を履行しなかった場合の制裁の問題を「行政規制の実効性の確保」として位置づけ、それぞれについて検討する。行政上の義務の強制的実現の方法としては、行政上の強制執行と司法的執行の双方を扱う。行政上の制裁としては、伝統的な手法である行政罰の他、近年では、公表や行政サービスの提供の拒否などが用いられるようになり、独自の問題を提起しているので、それについても検討する。
7.取消訴訟の対象(1)
取消訴訟の対象は最も論議の多い問題の一つであり、その対象と認められるか、すなわち処分性が認められるかは、実体法の規定に加えて、関連する国民の権利・利益の性質、別の機会における争訟提起の可能性等に係る複雑な問題である。ここではまず、処分性の一般的な定式と、原則的・例外的な処理を扱った代表的な裁判例を中心に検討する。
8.取消訴訟の対象(2)
引き続き取消訴訟の対象を検討し、特に、一連の行政過程の最終段階以前の段階で行われる行為の処分性に係る問題を中心に取り扱う。処分性をめぐる最高裁判例が一般的な定式の枠内に納まっているかも併せて検討する。
9.取消訴訟の原告適格
同じく、最も論議の多い問題の一つである原告適格について、学説の理解を深めると共に、判例の流れを具体的事案に即して検討する。
10.取消訴訟の訴えの利益
訴えの客観的利益(狭義の訴えの利益)について取り扱う。具体的な場合における訴えの客観的利益の存否は、関係する実体法の規定上、当該処分にどのような位置づけが与えられているかが決定的である。そこで、訴えの利益が論点となった具体的な判例・裁判例に即して、検討を進める。
11.取消訴訟の審理・判決
取消訴訟の審理・判決に係る諸問題を検討する。審理に関しては、立証責任、違法判断の基準時、主張制限、複雑な訴訟形態を取り上げる。また、判決に関しては、取消判決の効力及び事情判決について理解を深める。
12.行政訴訟の諸形式(1)
取消訴訟以外の行政訴訟の諸形式のうち、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟、当事者訴訟(確認訴訟を含む)とその利用方法について検討する。
13.行政訴訟の諸形式(2)
前回に引き続き各訴訟形式について検討するとともに、いわゆる客観訴訟のうち住民訴訟にも言及する。
14.仮の権利救済
行政訴訟の仮の権利救済に関する問題、具体的には執行停止、仮の義務付け、仮の差止め、仮処分の制限などの問題を検討する。
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