2021年度アフリカ地域研究資料センター公開講座「工学研究者、アフリカへ行く! ~ ” MNGDプロジェクト” の挑戦」

第4回 質疑応答 宮﨑 祐輔(京都大学工学研究科 助教)、松隈 俊佑(京都大学アフリカ地域研究資料センター 特定研究員)

概要

アフリカでは、古来より人やもの、情報のやりとりを様々に発達させてきました。そのなかでも、物理的な往来を容易くする「道」の存在は欠かせません。航空機や高速道路による長距離移動やSNSなどの情報通信が多用されるアフリカで、ともすれば村と村をつなぐふつうの「道」の重要性は看過されてきました。

今回のアフリカセンター公開講座では、この「道」に注目して2019年からエチオピアで共同研究をはじめた工学研究者たちの挑戦をとりあげます。SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)「特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土質改良材の開発と運用モデル」、通称MNGDプロジェクトの活動について紹介しながら、みなさんと一緒にアフリカの道について考えます。

講義詳細

年度
2021年度
開催日
2021年10月16日 から 2022年2月19日
開講部局名
アフリカ地域研究資料センター
使用言語
日本語
教員/講師名
木村 亮(京都大学工学研究科 教授)
安原 英明(愛媛大学理工学研究科 教授)
福林 良典(宮崎大学 工学部 准教授)
宮﨑 祐輔(京都大学工学研究科 助教)
松隈 俊佑(京都大学アフリカ地域研究資料センター 特定研究員)
澤村 康生(京都大学工学研究科 准教授)
開催場所
京都大学稲盛財団記念館 3階 大会議室およびオンライン

第1回 2021年10月16日(土)

「アフリカに大学を造る」木村 亮(京都大学工学研究科 教授)

MNGDとは、エチオピアの公用語アムハラ語で道を意味します。ネットワークをひろげ地球と地域社会の発展をめざす(Making Networks for Glocal Development)という意味をのせて命名しました。私たちのような工学の研究者がアフリカに赴いてなにができるのか、アフリカの地に工学を専門とする大学を造った動機から、MNGDプロジェクトの発想に至るまでの経緯をおってお話します。

第2回 2021年11月27日(土)

「アフリカで地盤環境工学を考える」安原英明(愛媛大学理工学研究科 教授)

地盤環境工学は、地盤と人間とのなかだちをする学問分野です。現代社会が直面する環境や災害などの社会問題の解決を目指しています。今回の講座では地盤防災技術として、自然界に存在する生物や環境に負荷を与えない原料を用いた地盤改良技術(バイオグラウト)について解説します。また、現在取り組んでいる、バイオグラウトの手法環境負荷を与えない地盤改良技術を応用したアフリカの特殊土壌の改良の試みについて紹介します。

第3回 2021年12月18日(土)

「アフリカで住民と道普請する」福林良典(宮崎大学工学部 准教授)

近年アフリカでは幹線道路の整備が進む一方、人びとが日常的に利用する生活道路は未舗装で、雨季には泥田状態となり車両やバイクの通行や歩行もままならないところがあります。地元の人びとが簡便な道直しの方法を身につけ、協力して修復することができるようになれば、学校や病院へのアクセスも改善し、人やものの往来が活発になって、暮らしをもっと豊かにできるのではないでしょうか。今回の講座では、このような「道普請」を広める活動が、アフリカ各地でどのように受け止められ展開してきたかを紹介します。

第4回 2022年1月22日(土)

「アフリカで土を問う」宮﨑祐輔(京都大学工学研究科 助教)

エチオピア地方部では、雨季に道路災害が発生する箇所でもほとんど対策工が行われていません。これを改善するために、道路災害を引き起こす土の性質を問う必要があります。MNGDプロジェクトを通して、エチオピアの地元住民、学生、研究者、道路庁職員などプロジェクト関係者と道路災害の現状と対策を議論してきました。今回の講座では、エチオピアの土に対する問題意識と解決すべき問題について議論されてきたことをお話しします。

「アフリカで工学研究者になる」松隈俊佑(京都大学アフリカ地域研究資料センター 特定研究員)

ケニアで人類学的な研究を実施した発表者が、工学的な国際共同研究プロジェクトに従事するようになった経緯と、そのきっかけになったタンザニアでの仕事について話します。そして、エチオピアで実施しているSATREPS-MNGDプロジェクトにて現地コーディネーターを務める中で得た学びや新しい発見、プロジェクトの今後について紹介します。

第5回 2022年2月19日(土)

「在来植物でアフリカの道を直す」澤村康生(京都大学工学研究科 准教授)

ドロドロの土があっという間にパサパサの土に? 古紙を微細化加工して得られる天然高分子(セルロース)粉体は、その吸水作用により、対象とする泥土の化学組成を問わず、泥土の流動性を即時に低下させることができます。MNGDプロジェクトでは、エチオピアの在来植物からセルロース成分を抽出して土質改良材を開発しようとしています。雨季はドロドロ、乾季はカチカチになる特殊土、現地に広く分布するこのブラックコットンソイルの上に道を造ることはできるのでしょうか。

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