キリスト教学への招待
授業の特色
本講義は、宗教についての学問的研究における三つの立場、すなわち、神学、宗教哲学、現代宗教学の議論を総合するものとして、キリスト教学を位置付け、キリスト教の具体的な事例に即しつつ、キリスト教学の全体像を説明する。
授業の紹介
前期の講義テーマは、「宗教現象としてのキリスト教」であり、キリスト教という宗教について基礎的な内容の理解をめざす。そのために、現代宗教学の方法論(宗教現象学、宗教社会学、宗教心理学など)に基づいて、キリスト教についての学問的(科学的)な分析を行う。 後期のテーマは、「キリスト教思想史の諸課題」であり、今年度は、キリスト教と科学(自然科学)の関係をめぐる思想展開を歴史的に概観し、その上で、現代の諸問題(生命、環境、情報、心)について、キリスト教思想の観点から考察を行う。 以上によって、キリスト教学とはどのような学問であり、いかなる研究を行っているのか、そしてキリスト教とはどのような宗教であるかについて、基本的な理解が可能になるものと思われる。
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- 第1回 オリエンテーション
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- 第2回 キリスト教の現在─アジアを中心に─
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- 第3回 キリスト教学の課題と方法
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- 第4回 意味の問いとしての宗教
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- 第5回 信仰と自己同一性
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- 第6回 聖なるもの(1)─宗教類型論と人格神─
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- 第7回 聖なるもの(2)─宗教経験の動態─
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- 第8回 宗教的象徴と宗教言語
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- 第9回 儀礼とサクラメント
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- 第10回 聖書を読む─正典論と近代聖書学─
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- 第11回 現代聖書学(1)─イスラエル民族の起源─
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- 第12回 現代聖書学(2)─聖書の構造分析─
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- 第13回 現代聖書学(3)─神の国と終末論─
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- 第1回 宗教思想研究への招待─宗教と科学の関係─
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- 第2回 聖書の思想世界と科学(1)─創造─
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- 第3回 聖書の思想世界と科学(2)─知恵と終末─
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- 第4回 ヘレニズム世界のキリスト教
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- 第5回 キリスト教神学の成立とその諸問題
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- 第6回 自然神学と12世紀ルネサンス
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- 第7回 宗教改革とガリレオ裁判
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- 第8回 ニュートンとニュートン主義の自然神学
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- 第9回 啓蒙的近代とキリスト教
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- 第10回 進化論論争をめぐって
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- 第11回 科学技術とキリスト教(1)─生命と環境─
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- 第12回 科学技術とキリスト教(2)─心と情報─
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- 第13回 学年末試験
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- 前期レポート課題
講義詳細
- 年度
- 2008年度
- 開講部局名
- 文学部
- 使用言語
- 日本語
- 教員/講師名
- 芦名 定道(文学研究科 教授)
シラバス
教員 | 芦名 定道(文学研究科 教授) |
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授業の概要・目的 | 第1回 講義の目的や授業計画、そして受講の注意点などについて説明を行い、また本講義への導入として、キリスト教の起源や歴史的な多様性を論じる。 第2回 オリエンテーションの導入の議論を受け、アジアのキリスト教の現状を概観する。これによって、現代宗教学的アプローチの必要性が確認される。 第3回 神学、宗教哲学、現代宗教学の相互関連に基づいて、キリスト教学の学的な位置付けを論じ、宗教現象のモデル化という方法論を提示する。 第4回 宗教現象を分析する際の前提となる宗教の概念規定について、広義と狭義の区別を紹介し、広義の宗教概念を「意味」の観点から説明する。 第5回 宗教現象の構造モデルを構成する「信仰」について、ティリッヒの究極的関心(宗教現象学)に基づいた説明を行い、自己同一性との関わりを明らかにする。 第6回 信仰対象を「聖なるもの」と規定し、ファン・デル・レーウの古典的研究に基づいて、その多様な諸類型と人格神の位置づけについて検討する。 第7回 聖なるものについての経験の両極構造をオットーのヌミノーゼ論によって分析し、聖と俗のダイナミズムについてのエリアーデの理論を紹介する。 第8回 宗教的象徴を「信仰」と「聖なるもの」との媒介機能の担い手として説明し、宗教言語の問題(隠喩と宗教的実在論)へと展開する。 第9回 宗教な象徴体系の実例として儀礼を取り上げ、現代宗教学における儀礼論を説明する。合わせて、キリスト教のサクラメントについて論じる。 第10回 キリスト教において中心的な宗教言語である「聖書テキスト」について、正典論(霊感説)と近代聖書学という二つの読み方を比較する。 第11回 現代聖書学における議論をもとにして、イスラエル民族を起源神話という観点から分析する。民族概念の脱構築を試みる。 第12回 正典論と近代聖書学(歴史学的文献学的方法)に対する第三の読み方である聖書の構造主義的構造分析について紹介し、その意義を探る。 第13回 現代聖書学おける新しいイエス理解の動向を、近代聖書学以降の神の国と終末論の問題連関を念頭に置きつつ、紹介する。 第1回 キリスト教思想をキリスト教信仰の内的表現として捉え、その歴史的展開を辿るという講義の基本方針を説明する。テーマは宗教と科学の関係論である。 第2回 キリスト教思想の第1の源泉は聖書であるが、創造論と契約思想は、その中心に位置している。創造論が宗教と科学の関係論の基盤である点に注目。 第3回 創造論は、バビロン捕囚期以降の知恵文学と黙示文学において大きな展開を見せる。キリスト教思想との関連に留意して、ポイントを解説する。 第4回 パレスチナで誕生したキリスト教は、ヘレニズム世界(とくにヘレニズム都市)に広まり、「無からの創造」論などの独自の思想を生み出してゆく。 第5回 古代におけるキリスト教神学の成立について、その背景(制度化・国教化)と意義を、ギリシャの哲学的神学との関わりなどに留意しつつ、検討する。 第6回 古代から中世へのキリスト教の歴史的展開を、自然神学の発展という観点から概観し、キリスト教神学と自然科学との有機的連関を解明する。 第7回 「宗教と科学の対立図式」の典型とされるガリレオ裁判の真相を、宗教改革がもたらした聖書解釈をめぐる新しい問題状況の中で再検討する。 第8回 ニュートンの神学者としての側面に注目することによって、ニュートン主義の自然神学が近代自然科学の成立にいかに関わっていたかを論じる。 第9回 啓蒙主義は近代自然神学の思想的枠組みを解体することよって新しい思想状況を生み出した。それに対してキリスト教がいかに対応したかを論じる。 第10回 19世紀後半以降の進化論をめぐる複雑な問題状況を自然神学との関わりに留意しつつ整理する。アメリカを中心とした創造科学にも言及したい。 第11回 現在、宗教と科学の関係が問題化している背景には、生命や環境をめぐる現代の危機的状況が存在する。新しいキリスト教思想の動向に注目。 第12回 心や情報の問題は、今後、キリスト教と自然科学との関係を論じる上での焦点となると思われる。「宗教と科学」関係論の将来的展望を論じる。 第13回 後期の講義内容についての受講者の理解度を評価するために、学年末試験を実施する。その意図と内容について解説。 |
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授業計画と内容 | 講義は、前期に行われる「Ⅰ:宗教現象としてのキリスト教」と後期に行われる「Ⅱ:キリスト教思想史の諸問題」とにわかれる。前期は、キリスト教を一つの宗教現象とみなし、現代宗教学(経験科学としての宗教学)の諸方法によって客観的な分析に基づく理解を目ざす。同時に、これによって、現代宗教学の基本を学ぶことができる。後期はキリスト教の思想史を聖書から現代まで概観し、キリスト教思想の内在的理解を試みる。これによって、神学と宗教哲学を含むキリスト教思想の基本的な思考方法と、その現代的意義について知ることができる。今年度のテーマは、「宗教と科学」(キリスト教と自然科学)の関係論である。 以上の講義を通して、キリスト教学の全体とその基礎についての理解が可能になるであろう。 [各回の授業体制] 授業は、スケジュールにしたがって、講義形式で進められる。まず、前回の講義の内容の確認が行われ、その日の問題が提起される。そして、最後にさらに学習を深めるための参考文献(各回の「講義ノート」の最後に収録)が示される。 |
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履修要件 | 受講に際しては、キリスト教についての専門的な予備知識は必要ではないが、受講者には、人間や社会、そして思想についての知的好奇心と積極性が求められる。 |