物性化学1
授業の特色
Gibbsの自由エネルギーによって凝縮相(液相・固相(結晶))の熱力学を論じ,固相の結晶構造とその欠陥(格子欠陥),格子振動,原子の拡散現象,相転移熱力学などについて論じ,物質の性質の原子論的な側面からの理解について論述している.
授業の紹介
固体結晶が示す様々な性質を,熱力学ないしは原子論的立場から講述する.主な内容は,凝縮層である固体結晶や液相の熱力学と平衡状態図論,結晶構造論と構造因子,結晶の不完全性(格子振動,格子欠陥:点欠陥,ディスロケーション,積層欠陥,ボイド)と格子振動の量子論的モデル(比熱のアインシュタイン・モデル,デバイ・モデル),結晶中の原子の運動(拡散現象),相転移熱力学(平均場近似やランダウの現象論を用いて)などである.図のプリントを多く配布し,例題などを解説しながら,物性研究の基礎についてわかり易く講述する.
講義詳細
- 年度
- 2006年度
- 開講部局名
- 理学部
- 使用言語
- 日本語
- 教員/講師名
- 吉村 一良(理学研究科 教授)
- 備考
- 課題 第1章 固体結晶の熱力学と平衡状態図論から,相平衡・相分離の問題,平衡状態図作成の問題(問題1,2)を.第2章 固体の結晶構造と構造因子から,X線回折パターンからその構造を解析・決定する問題(問題3)を.第3章 格子欠陥から,固体の比熱を量子論的に説明したアインシュタインモデルとデバイモデルに関する問題(問題4)を.第1章~第5章から,語句説明の問題(問題5)を出し,全5題から4題選択で課題を出した.
シラバス
教員 | 吉村 一良(理学研究科 教授) |
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授業計画と内容 | 1章.固体結晶の熱力学と平衡状態図論 1-1 平衡状態図論と平均場近似 1-2 ギッブスの相律(Gibbs - Phase Rule) 1-3 相の平衡条件と自由エネルギー組成曲線 1-4 正則溶体近似 1-5 液相?固相,固溶体:合金の熱力学 1-6 ブラッグ-ウィリアムズ(Bragg-Williams)近似の応用例 2章.固体の結晶構造と構造因子 2-1 固体の結晶構造と対称操作 2-2 面指数(Miller指数) 2-3 結晶での散乱・回折現象 2-4 様々な結晶での結晶構造因子(単位格子のキャラクター) 3章.格子欠陥 3-1 静的な格子欠陥 3-1-1 点欠陥 3-1-2 転位(dislocation,一次元的格子欠陥) 3-1-3 積層欠陥(2次元的面欠陥),結晶粒界・ボイド(3次元的欠陥) 3-2 動的な格子欠陥としての格子振動 3-2-1 固体中の弾性波としての格子振動 3-2-2 固体中の素励起としての格子振動(フォノン) 4章.拡散(固体中の原子の運動) 4-1 フィック(Fick)の第一法則 4-2 自己拡散,相互拡散 4-3 Fickの第二法則と俣野の補正式 4-4 真の拡散係数の求め方 5章.相転移熱力学 5-1 相転移としての結晶変態 5-1-1 規則・不規則転移 5-1-2 相分離(Phase Separation) 5-2 電子状態の相転移 5-2-1 強磁性体の統計力学:キュリー則 5-2-2 強磁性体の平均場近似(ワイスの分子場モデル) 5-3 相転移の現象論:ランダウ(Landau)理論 第1回 初めに 1章.固体結晶の熱力学と平衡状態図論:1-1 平衡状態図論と平均場近似 第2回 1章.固体結晶の熱力学と平衡状態図論:ギッブスの相律(Gibbs - Phase Rule) 第3回 1章.固体結晶の熱力学と平衡状態図論:1-3 系の平衡条件と自由エネルギー組成曲線 第4回 1章.固体結晶の熱力学と平衡状態図論:1-4 正則溶体近似 第5回 1章.固体結晶の熱力学と平衡状態図論:1-5 液相?固相,固溶体:合金の熱力学 第6回 1章.固体結晶の熱力学と平衡状態図論:1-6ブラッグ-ウィリアムズ(Bragg-Williams)近似の応用例 第7回 2章.固体の結晶構造と構造因子:2-1 固体の結晶構造と対称操作 第8回 2章.固体の結晶構造と構造因子:2-2 面指数(Miller指数) 第9回 2章.固体の結晶構造と構造因子:2-3 結晶での散乱・回折現象 第10回 2章.固体の結晶構造と構造因子:2-4 様々な結晶での結晶構造因子(単位格子のキャラクター) 第11回 3章.格子欠陥:3-1 静的な格子欠陥 第12回 3章.格子欠陥:3-2 動的な格子欠陥としての格子振動 第13回 4章.拡散(固体中の原子の運動) 第14回 5章.相転移熱力学:5-1 相転移としての結晶変態 第15回 5章.相転移熱力学:5-2 電子状態の相転移 |
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成績評価の方法・観点 | 出席と試験によって評価する. |
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教科書・参考書等 | ◎「無機ファイン材料の化学」中西・板東編、三共出版 ◎「固体物理学入門(上)、(下)」キッテル著、丸善 ○「相転移と臨界現象」スタンリー著、東京図書 ◎「磁気工学の基礎I」太田恵造著、共立全書 ○「強磁性体の物理(上)」近角聰信著、裳華房 ◎「平衡状態図の基礎」P.Gordon著、平野・根本訳、丸善 ◎ 丸善固体物性シリーズ「1.格子欠陥」B.ヘンダーソン著 ◎ 丸善固体物性シリーズ「2.結晶構造」P.J.ブラウン著 ○ 丸善固体物性シリーズ「6.固体の磁気的性質」J.クラングル著 ○「相転移の統計熱力学」中野藤生・木村初男著、朝倉 ○ 岩波講座 現代物理学の基礎「物性I・II」 ◎「基礎転位論」J.Weertman and J.R.Weertman著、中村訳、丸善 ◎「X線回折要論」カリティ著、松村訳、アグネ ○「回折と散乱」加藤範夫著、朝倉 ○「不定比化合物の化学」小菅皓二著、培風館 ○「固体論」ハリソン著、丸善 ◎「応用物性論」青木昌治著、朝倉 ○ 共立出版 物性物理学講座「結晶物理学」、「界面現象・格子欠陥」 ○ アグネ現代金属物理シリーズI「金属結晶の物理」宮原監修 ◎「材料組織学」杉本孝一他著,朝倉 ◎「金属組織学」須藤一,田村今男,西澤泰二共著,丸善 |