5731014 Aesthetics and Art History
Numbering Code | U-LET09 35731 LJ34 | Year/Term | 2022 ・ Intensive, First semester |
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Number of Credits | 2 | Course Type | special lecture |
Target Year | Target Student | ||
Language | Japanese | Day/Period | Intensive |
Instructor name | SATO NAOKI (Part-time Lecturer) | ||
Outline and Purpose of the Course |
19世紀末から20世紀始めに活躍したベルギーの芸術家アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ(Henry van de Velde, 1863- 1957)は、1895年にパリで S・ビングのギャラリー 「アール・ヌーヴォー館」Maison de l'Art Nouveau のインテリアを担当し、アール・ヌーヴォーからモダン・デザインへの展開を促した人物として知られている。本講義では、彼のアール・ヌーヴォーへの貢献だけでなく、ドイツにおけるモダニストとしてのヴァン・デ・ヴェルデの作品とその影響を主に検証したい。ヴァイマル市民の「趣味の向上」のために招聘されたヴァン・デ・ヴェルデは、工芸学校設立や美術教育の改革を行い、さらにはモダンな建造物によってヴァイマルに新しい風をもたらした。ゲーテやシラーの文化的遺産を保ちつつ、哲学者ニーチェも住まうヴァイマルは、ヴァン・デ・ヴェルデの活躍で、文化都市としての地位をさらに固めていくことになる。 ヴァン・デ・ヴェルデの活動と作品、人的交流を辿りながら、ヴァイマルでバウハウスが設立されるまでを、当時のドイツにおける外国人芸術家の役割とその芸術的な影響とともに詳細に検討する。 |
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Course Goals |
ヴァン・デ・ヴェルデの作品を見ながら、彼が単なる建築家ではなく、デザイン、工芸、建築の分野で当時をリードする総合芸術家であったことを理解する。また、なぜヴァイマル公国では「趣味の向上」が図られたのか、ザクセン公ヴィルヘルム・エルンストの文化政策にも注目したい。当時のドイツは、フランスやベルギー、イギリスといった文化先進国から、何を学び追いつこうとしたのか、この点を明らかにすることが本講義の到達目標である。また、バウハウスがヴァイマルで設立されたのが決して偶然ではなく、ザクセン公の伝統的な文化政策がもたらした歴史的な必然あったことも理解されるだろう。 ヴァン・デ・ヴェルデが第一次大戦を機にヴァイマルを去る際、工芸学校の後継者にヴァルター・グロピウスを指名したことでバウハウスの原型が整備された。まさに、ヴァン・デ・ヴェルデが準備したアヴァンギャルドな方向性が、ドイツ人のグロピウスによって継承・展開されていくのである。2019年はバウハウス100年を祝う年であった。いま、バウハウス以前のドイツの芸術環境を振り返ることは、バウハウス成立の正しい理解に貢献してくれるはずである。 |
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Schedule and Contents |
1. ヴァイマルの文化伝統ーゲーテとディレッタントたち 2. ドイツにおけるディレッタントの伝統 3. ヴァン・デ・ヴェルデの初期ー点描画家としてのスタート 4. パリでの失敗とドレスデンでの成功 5. ベルリン移住とハリー・ケスラー男爵との出会い 6. ミュンヘン分離派展 7. ベルリンのインテリア芸術 8. アール・ヌーヴォーとは何か 9. パリ万博でのアール・ヌーヴォー 10. ベルリンからヴァイマルへ 11. ヴァイマルのニーチェ・ハウス 12. 新生ヴァイマル 13. 美術工芸学校の誕生 14. ホーエ・パペルンからハウス・アム・ホルンへ 15. 試験(およびフィードバック) |
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Evaluation Methods and Policy | コメント・シートを含む平常点(30%)、および試験(70%)により評価する。講義で取り上げた作品の造形的な理解ができていることを特に評価の対象とする。 | ||
Course Requirements | None | ||
Study outside of Class (preparation and review) | 事前に、フランスを中心としたアール・ヌーヴォーの概略を把握しておくことが望ましい。また、国際芸術展や万博などは、当時の作家たちの作品制作の契機となっていることから、これら博覧会の歴史を大まかに理解しておくことも授業理解の役に立つ。 | ||
References, etc. |
アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド自伝, アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド, ( 鹿島出版会、2012年) アール・ヌーヴォー : フランス世紀末と「装飾芸術」の思想, デボラ・シルヴァーマン, (青土社、1999年) 東京藝大で教わる西洋美術の見かた, 佐藤直樹, (世界文化社、2021年) 芸術愛好家たちの夢ードイツ近代におけるディレッタンティズム, 佐藤直樹編, (三元社、2019年) ヴァン・ド・ヴェルド展, 東京国立近代美術館[ほか]編, (東京国立近代美術館、1990年) その他、授業中に指示します。 |