History of Social Thought

Numbering Code G-ECON31 6A601 SJ41
G-ECON31 6A601 SJ38
G-ECON31 6A601 SJ34
Year/Term 2022 ・ First semester
Number of Credits 2 Course Type Seminar
Target Year Target Student
Language Japanese Day/Period Tue.3
Instructor name TAKEZAWA HIROYUKI (Graduate School of Economics Associate Professor)
Outline and Purpose of the Course この授業の目的は、20世紀後半以降の英語圏での思想史の方法論上の特徴である、過去の思想家のテクストを、その著述が向けられた他のテクストを特定しつつ当時の論争の中で理解することの重要性を理解し、かつ、思想史的センスを養成することである。
 今年度は、20世紀後半の思想史研究に多大な影響を与えたJ・G・A・ポーコックの思想史方法論とその実例としての共和主義研究の広がりと可能性を検討する。
Course Goals 1.【文献読解能力】人文社会科学に関する高度な内容を十分に読みこなす能力を身に着けること。
2.【調査能力】大学院レベルの高度な調査能力を身に着けること。
3.【説明能力】自分自身の意見や解釈を明快に提示できる能力と技術を身に着けること。
4.【分析能力】歴史的なコンテクストとの連関を十分に意識しつつ、テクストが持つ含意を的確に分析する能力を身に着けること。
Schedule and Contents  20世紀半ば以降の英語圏の思想史研究は、いわゆるケンブリッジ学派と呼ばれる一群の研究者たちの研究活動によって、大幅に様相を異にするようになった。ある思想を評価するときにそれをとりまく文脈や論争関係に目配りする必要性は、常識と見なされるようになっている。その動きの中心に位置する一人として、J・G・A・ポーコックを挙げることができるであろう。
 ニュージーランドに生まれ、その後、ケンブリッジや北米で活躍してきた同氏の研究活動の総体は非常に大きなもので、しかもその緻密で含意に富んだ分析は、近世以降の思想史研究において、誤解を含む様々な反響を呼んできた。そのような研究業績のなかで最も論争を引き起こしてきたのは、1975年に世に問われ、2003年にその後の研究動向に関する論評を付加した改訂版が出された『マキャヴェッリアン・モーメント』である。本書は三部からなり、第一部は時間認識に関わる様々な様式の概観、第二部はそれらがマキャヴェッリをはじめとする16世紀イタリアの文脈で展開される様相の分析、そして第三部ではそれまでの議論や概念理解が17世紀半ばのイングランドや革命期のアメリカにおいて展開・受容・変容される過程に関する分析を行う。この通史的記述をめぐっては、それに含まれる個々の思想家の解釈の妥当性だけでなく、それがいかなる意味での通史なのかをめぐって激しい議論がなされてきた。
 ポーコックは自らの研究活動の集大成ともいうべきギボン論を完成し、日本語での翻訳書の刊行も近年開始されている現在、同氏の提起した思想史方法論や共和主義思想分析などを振り返るために同書を再読することには大きな意義があると言えよう。
 この講読を通じて、テクスト理解におけるコンテクストの役割や両者の関係などを理解するとともに、非西洋圏の研究者が西洋圏の政治・社会思想の分析に携わることの意味や困難などについても考察したいと考えている、また併せて、思想史を学ぶ意味を考えつつ、先行研究への応答を意識した研究上の論点の設定がもつ重要性を理解して欲しいと考える。
 続けて開講する「比較社会思想史」と一体的に授業を行うので、連続しての参加を標準とする。
 この授業の主たる目的は、思想史的センスの養成と最先端の研究動向を把握することにあるが、参加者自身が自らの個別の研究テーマを扱う際にも役立つような、歴史系・思想史系の研究の進め方のトレーニングとしても位置づけられている。したがって、当該分野の研究者としてこれから研究を進めるためには不可欠の各種のデーター・ベース(Early English Books Online、Eighteenth Century Collections Online、The Making of the Modern World, Web of Science、Bibliography of British & Irish Historyなど)や、研究用CD-ROMの紹介や利用法の解説なども随時行う予定である。
 なお初回の授業は、授業のイントロダクションとともに、昨年度からの授業参加者を中心に、日本学術振興会特別研究員申請書の様式にのっとった研究計画の構想発表を行う。初めて参加するものは、相談のうえ、発表日を決めて後日、研究計画を発表するものとする。
 授業の進行は、文献の読解の程度などを考慮して変更することがあるが、現時点では以下のような進み方を想定している。
 第一回:イントロ
 第二~八回:文献講読(第Ⅰ、Ⅱ部を講読・検討の予定)
 第九~十四回:文献講読(第Ⅲ、Ⅳ部を講読・検討の予定)
 第十五回:全体のまとめ
 なお講読に合間に、日本学術振興会特別研究員の申請書に準じた形式の、各自の研究計画案の報告を行います。
 またこの授業は、Zoomで開催しますので、PandAから接続してください。
Evaluation Methods and Policy 恒常的な出席と報告の分担(50%)、ターム・ペーパーの執筆(50%)(詳細は授業の中で明示します)。
Course Requirements 1.16世紀から18世紀の英国史とその思想史の概要の把握、もしくは、授業開始までに、今井 宏編著『世界歴史体系 イギリス史2 近世』山川出版社、1990年、を読了すること。
2.邦文ならびに英文の読解能力。
3.学部卒業レベルの文献調査能力(図書館、インターネット、電子資料の利用)。
Study outside of Class (preparation and review) 1.当該文献の精読だけでなく、その内容が受講生自らの研究テーマにおいてどのような意味を持ちうるのかを授業に先立って十分に考えておくこと。そして授業での解説や議論を踏まえて、同様のことを十分に反芻すること。
2.文献読解にあたって、専門書誌や電子データベースなどを使用して関連する情報や前提知識を適宜補充すること。
Textbooks Textbooks/References The Machiavellian Moment, J.G.A. Pocock , (Cambridge University Press, 2003), ISBN:9780691172231, 2016年版を使用すること
マキャヴェッリアン・モーメント, J・G・A・ポーコック, (名古屋大学出版会、2008年), ISBN:9784815805753
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