第5回 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)合同シンポジウム「実感するサイエンス」, 2015

コンピュータは「ウイルス」と戦う 山下 和男 助教(大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC))

概要
物質―細胞統合システム拠点(iCeMS:アイセムス)は、2015年12月26日(土)に第5回 世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム合同シンポジウム「実感するサイエンス」を京都大学百周年時計台記念館で開催しました。WPIプログラムは、優れた研究環境と高い研究水準を誇り、世界から第一線の研究者が集まる 「目に見える」研究拠点の構築を目指す文部科学省の事業です。本シンポジウムは、主に高校生を対象に最先端の科学とその魅力を伝えるためWPIプログラムに採択されている全9拠点が合同で、2011年から毎年開催しているものです。今回は一般を含め約400名を超える参加がありました。
シンポジウムでは、日本科学未来館の科学コミュニケーターのヘイチク・パヴェル氏の開会トークに続き、WPI各拠点の3名の研究者の講演、京都大学の山極壽一総長の講演がありました。講演では、まずiCeMSの永田紅助教が、「コレステロールは憎まれ役?」と題し、細胞や分子のレベルで「善玉コレステロール」がどのように作られるか、細胞の“膜”や、“膜タンパク質”の研究と交えて講演をしました。その後、大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC:アイフレック)の山下和男助教が「コンピュータは『ウイルス』と戦う」、東京工業大学地球生命研究所(ELSI:エルシー)の高井研主任研究者が「ワンピースを求めて、世界の、宇宙の海へ」と題した講演を行い、特別講演では京都大学の山極壽一総長が、ゴリラ研究のフィールドワークについて語られました。
その後のパネルディスカッションでは、「東大合格生のノートはどうして美しいのか?」等の著者、太田あや氏をゲストに招き、「研究ノート」をテーマに、講演者たちが各自のノートを披露しながら語り合いました。
最後にiCeMSの北川進拠点長の挨拶の後、サプライズとして京都大学グリークラブが「もみの木」を合唱し、盛会のうちに締め括られました。
各拠点を紹介するブースにも多くの来場者があり、iCeMSのブースでも研究ノートや京都大学の山極壽一総長が実際にフィールドワークで使用している道具に注目が集まっていました。ブース前では、iCeMSの研究者がニューズレター “Our World, Your Future” を配布しながら、実際の研究生活について学生達に熱く語る場面もみられました。

講義詳細

年度
2015年度
開催日
2015年12月26日
開講部局名
iCeMS 物質-細胞統合システム拠点
使用言語
日本語
教員/講師名
永田 紅(京都大学iCeMS 助教)
山下 和男(大阪大学IFReC 助教)
高井 研 (東京工業大学ELSI 主任研究者)
開催場所
京都大学 百周年時計台記念館 百周年記念ホール

講演要旨

京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS:アイセムス)
永田 紅 助教「コレステロールは憎まれ役?」
フライドチキンやアイスクリームを食べたいけれど、コレステロールが気になるなあ、と思ったことはありませんか?世間では、コレステロールは体に悪い、という思い込みがあります。しかし、コレステロールは私たちの体にとってなくてはならない成分で、たとえ食事から摂らなくても、体の中でも作られているのです。コレステロールは、多すぎても少なすぎても健康を保てません。そこで、その濃度は非常に巧妙に調節されています。よく耳にする「善玉コレステロール(HDL)」と「悪玉コレステロール(LDL)」はなにが違うのでしょう。動脈硬化症を予防する「善玉コレステロール」はどのようにして作られるのでしょう。細胞や分子のレベルで見てみたいと思います。

 

大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC:アイフレック)
山下 和男 助教「コンピュータは『ウイルス』と戦う」

コンピュータが生まれた時から、ウイルスとの戦いは始まっていました。しかし今回はコンピュータウイルスの話ではありません。インフルエンザやデング熱といった、ヒトの病気の原因となる「ウイルス」と戦うコンピュータの話です。人間の身体にはウイルスと戦う免疫システムが備わっています。コンピュータで免疫システムを丸ごと再現できれば、病気のメカニズムを明らかにしたり、薬やワクチンの設計をしたりできるかもしれません。でも、それはまだちょっと先の話です。私たちはそんな未来へ向けて、免疫反応に重要な、抗体など分子の姿をコンピュータで予測し、それらがどのように相手を認識しているのかを調べています。今回は少し欲張って、分子の形や動きの予測だけでなく、新しい薬を作るアイデアについてもお話しようと思います。

 

東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)
高井 研 主任研究者「ワンピースを求めて、世界の、宇宙の海へ」

「ワンピース」と言えばあの人気漫画、海賊となった少年ルフィが「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を探しながら人として成長してゆく海洋冒険ロマンストーリーですね。この漫画はフィクションですが、でも私はワリと真面目に、海には「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」があるような気がしているんです。アストロバイオロジスト(宇宙生命学者)とイクスプローラー(探検家)を自称する私が探し求めるワンピースとは、「生命の起源や地球外生命の存在を解く鍵」なんです。その鍵を見つける深海の冒険的研究についてお話ししたいと思います。

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