低温科学B
授業の特色
低温研究の発展にともなって,低温科学の領域は,理学はもとより広く工学・医学・薬学・農学などの分野に応用され,多くの最先端技術の基礎となっている.この講義は,低温科学についての高校教育と大学の専門教育の間のギャップを埋め,学生諸君に低温研究に対する理解を深めてもらうための入門的基礎講義である。
授業の紹介
物質の観点から見た超伝導や磁性といった低温特有の基礎的な物性や低温での特異現象である磁性や超伝導の応用などについて,その分野を専門としている教員が具体的なテーマをあげて,場合によってはビデオや簡単な実験によるデモンストレーションも行いながらリレー形式の講義を行い,研究に関する歴史的な話題 から研究の現状・最新の成果に至るまで平易に解説する.
1. 物質の磁性と超伝導(局在電子系〜遍歴電子系・新しい超伝導物質まで):7回 吉村
2. 超伝導応用I(超伝導磁石:超高分解能核磁気共鳴MRIへの応用):2回 竹腰,清水
3. 超伝導応用II(超伝導量子磁束計の地球物理学への応用):2回 福田
4. 超伝導応用III(エネルギー貯蔵,電力輸送,超伝導発電などへの応用):2回 白井
本OCWではこれらのうち,吉村担当の7回分について紹介する.講義の中で,液体窒素の扱い方のデモ・説明や,デモ実験として高温超伝導の磁気浮上実験を行う。
講義詳細
- 年度・期
- 2008年度・後期
- 開講部局名
- 全学共通科目
- 使用言語
- 日本語
- 教員/講師名
- 吉村 一良(教授)
- 開催場所
- 理学部6号館401講義室
シラバス
開講年度・開講期 | 2008年度後期 | 対象学生 | 主として学部1回生 |
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使用言語 | 日本語 | 曜時限 | 金5 |
教員 | 吉村一良 |
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授業計画と内容 | 授業スケジュール 1. 序:低温科学 1-1. 講義日程 1-2. 磁性・超伝導と周期表 1-3. 国際磁気会議ICMと磁性の歴史 1-4. 相転移:自発的対称性の破れ 1-5. 物質の性質(物性) 1-6. 超伝導の歴史 1-7. エントロピー,熱力学,統計力学と低温 1-8. 物質波としての電子 1-9 量子論・量子力学の基礎 1-10 量子統計:フェルミ粒子とボーズ粒子 2. 低温での現象 2-1. 量子液体:液体4Heの超流動 2-2. 相転移としての超伝導現象 2-3. 超伝導思考実験 2-4. 高温超伝導とデモ実験 3. 磁気モーメントと量子力学 3-1. 磁性の起源 3-2. 3d遷移金属イオンの磁気モーメント 3-3. 希土類金属イオンの磁気モーメント 3-4. フント則とスピン・軌道相互作用 3-5. 角運動量の統計力学:磁化率のキュリー則 3-6. 磁性と無機化学 3-7. 結晶場分裂 3-8. 結晶場と高スピン・低スピン状態 3-9. 結晶場と軌道角運動量の凍結 3-10. 平均場近似と磁化率のキュリー・ワイス則 4. 高温超伝導 4-1. 銅酸化物高温超伝導体 4-2. 超伝導理論 4-3. 超伝導のGL理論 4-4. 超伝導のBCS理論 4-5. 強相関系の超伝導 4-6. 高温超伝導の相図 4-7. ミクロな実験手段としての核磁気共鳴(NMR) 4-8. 核磁気緩和と超伝導転移 4-9. 核磁気緩和とBCS理論 4-10. 高温超伝導と核磁気緩和 4-11. 磁性体の核磁気緩和 5. BCS超伝導とエキゾティック超伝導 5-1. BCS理論の概念 5-2. 超伝導電子対の波動関数 5-3. 異方的超伝導 5-4. 異方的超伝導ギャップ 5-5. 強相関系超伝導相図 5-6. フラストレーション系超伝導:パイロクロア格子系 5-7. フラストレーション系超伝導:三角格子系超伝導体 5-8. 三角格子系超伝導体,NaxCoO2?yH2O 5-9. NaxCoO2?yH2Oの核磁気緩和 6. 局在磁性の基礎 6-1. 磁気相転移 6-2. 磁性の基礎 6-3. 磁性体の統計理論 6-4. キュリーの法則,ブリルアン関数 6-5. 電子の磁気モーメント 6-6. 磁性イオンの磁気モーメント 6-6-1. 3d遷移金属イオン 6-6-2. 希土類金属イオン 6-7. 電子の軌道とスピン 6-8. 孤立イオンの磁化率 6-9. フント則,結晶場理論 6-10. 多電子系 7. 遍歴電子磁性とスピンの揺らぎ 7-1. 遍歴電子磁性の歴史 7-2. ワイスの分子場近似:平均場近似とその問題点 7-3. ハイゼンベルグの交換相互作用 7-4. 分子場理論の一般論 7-5. 金属磁性体に対する局在電子モデルの破綻 7-6. 金属(遍歴電子)磁性体とバンド理論 7-7. 遍歴電子磁性体の特徴 7-8. 磁気体積効果と遍歴電子磁性体 7-9. 弱い遍歴電子強磁性体とスピンの揺らぎの自己有無撞着繰り込み(SCR)理論 7-10. 遍歴電子強磁性と遍歴電子メタ磁性転移 7-11. 遍歴電子強磁性体の核磁気緩和 各回の授業体制 吉村,竹腰,清水,福田,白井の5人の教員がリレー式で実験などを交えながら低 |
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成績評価の方法・観点 | 出席点とレポート点で評価する. |