京都大学を目指す君たちに伝えたいこと ―恒例、難関大学合格者座談会―
大学ジャーナル(DJ)京大特集号掲載
京都大学を目指す君たちに伝えたいこと
―恒例、難関大学合格者座談会―
本年2月、昨春京都大学に入学した6名による合格者座談会が行われました。集まってくれたのは、1回生対象のポケット・ゼミでの「メディアアート〜映画監督養成講座〜」(担当:土佐尚子学術情報メディアセンター教授)を履修してきた学生たちです。憧れの大学で1年近くを過ごした先輩たちに、大学についてざっくばらんに語り合ってもらうとともに、受験や高校時代の過ごし方についてアドバイスを聞いてみました。
- 理学部 京都府立洛北高等学校出身
- 山形 優太朗
- 農学部 森林科学科 西大和学園高等学校出身
- 西嶋 稜平
- 経済学部 同志社高等学校出身
- 井藤 絢子
- 理学部 静岡学園高等学校出身
- 内田 泰央
- 農学部 食料環境経済学部 四天王寺高等学校出身
- 白木 友里菜
座談会
私が京大をめざした理由
中高一貫の進学校に通っていたので、京大を志望する人も多く、もともと意識はしていました。具体的に考え出したのは高校に入ってからです。高2の進路選択で、小さい頃から好きだった生き物に関わることを学びたいと考えて、現役で理学部を受けました。結果は不合格で、一浪中に志望を農学部に変えて、二浪で合格しました。 農学部にしたのは、センター試験が得意だったのと、理学部出身の人に生物を研究するならあまり変わらないと教えてもらったからです。フィールドワークを重視している点も合っていました。僕は外へ出たい方なので。
エスカレータで大学にいける高校だったので、受験しないつもりでしたが、高2の終わりに父親から「一番近い国公立大学に行ってほしい」と受験を勧められて、反強制的に京大を受験することになりました。初めからなんとなく経済学を志望していて、国語と英語と論文だけで受験できる論文入試※が、英語が得意で数学と世界史の苦手な自分にはベストだったので決めました。
※ 経済学部は、一般入試の他に論文入試と理系入試がある。
僕は、高校の頃から研究者になるのが夢でしたから、ノーベル賞受賞者が多いことや、最近ではiPS細胞などの研究成果を見て、研究者になるには京大が日本で一番だろうと。
高校ではサイエンス部に所属していて、SSHの指定校が集まる大会へも学校代表として参加しました。結果は芳しくありませんでしたが、逆にそれで「絶対に京大にいってやる」という気持ちを強くしました。研究したいテーマが決まっていなかったため、入学してから選択の余地のある理学部へ入学しました。
僕は商業高校や工業高校へ行きたくて、大学へは進学しないつもりでした。ただ中学時代に不運にも進学ルートに乗ってしまって、大学進学を勧める先生と自分の考えとのギャップにすごく悩みました。でも、高2の秋頃に突然、そうだ、京都にいこう、京大にいこうと思ったんです。
しかしそれまでは高校に不満を持っていましたし、成績も学年で最下位くらいでしたから、現役では名古屋大学を前期で受験して落ちてしまいました。そこでせっかくなのでもう1年がんばって、初心に戻って京都大学を目指そうということにしました。僕は、大学に入ってまで必修や課題に追われたり、進路を決めるために勉強したりすることに違和感があったので、自由の学風といわれる京大はいいなと思っています。
小4から塾へ通っていて、灘中を目指していたこともあって志の高い友人が周りに多く、この頃から漠然と大学進学についても考えていました。高校でも国公立や医学部を目指す友人に刺激を受けて、自分は京大かなと考えるようになりました。経済学部は、会社の経営をしている父の姿を見て面白そうに思えたからです。一浪して合格しました。
親からは、いまは不景気で就職も大変だから医者を目指すようにと言われていて、高2の頃から医学科を志望しました。でも高3の春に、自分は血を見たり、肉を切ったりすることが苦手だと気づいて、親に話しましたがなかなか納得してもらえず、結局10月の学校別模試の募集を機に、京大志望に変えました。京大にしたのは、親が口酸っぱく言っていた就職のことを考えて、関西で一番就職が強そうなので選びました。
学部は、医学科を目指していて勉強していたので、センターの割合が大きく、受かる確率が一番高いところを探しました。工学部か農学部か薬学部かで悩みましたが、大学案内などを読んでいて一番面白そうだった食料環境経済学科に決めました。農業という面から経済を考える学科です。
何かをしたいというより、条件をせばめていって選んだ感じですが、入ってとても満足しています。やはり、興味のある学科を選んだのがよかったと思います。
入る前、入った後の京大の印象
京大は変わった人が多いと思っていましたが、農学部ではあまり変わった人はいません。これは、理学部は基礎科学ですが、農学部は応用科学、つまり基礎科学で見つかったことを社会に役立てる実学だから、あまり個性の強い人は集まらないからだと聞いたことがあります。
僕もすごい人がいっぱいいるというイメージを持っていました。でもよく考えると自分も入れたわけですし、高校の友達もいっぱい入っています。だから実際は、ノーベル賞をとるような人はほんの一部で、こつこつ勉強してきた人が入れる大学なのだと思いました。
入る前は京大理学部という目標が金色に輝いていて、入りさえすれば人生は安泰だとすら思っていました。しかし入ってみて、その幻想は見事に崩れ去りました。入学してから気がついたのは、京大理学部はゴールではなくて、スタートだということです。ここからまた次のステップへ進むための努力を重ねていかなければならないと。それから、理学部には就職無理学部と恋愛無理学部というあだ名があると聞いて驚きました。大学院まで進まないとなかなかいいところへ就職できない、女子の割合がとても少ない、ということのようです。
経済学部もパラダイス経済というあだ名がついていて、とても楽なのかと思いましたが、いまのところそれほどでもありません。大変ではありませんが、高校の方が開放的で自由でした。
京大のココが好き
なにより規制されることが少ないことです。本当にのびのびできます。たとえば、他の大学だと入試日の学生の出入りはほとんど禁止です。でも、京大は受験生がんばれという感じでこたつと鍋を出している学生がいたり、僕の場合は高校の同級生や先生が会いに来てくれたりしました。それから謎の折田先生像ですね。
あとは、周りからどんなにつまはじきにされてきた変わり者でも、個性の激しい人でも、ここなら受け入れてもらえるという懐の深さですね。
先生とも交流しやすい雰囲気があります。自分の興味が決まっているなら、その分野の先生に積極的にアプローチしてみるとよいと思います。先生方は研究に興味のある人を歓迎しますし、いろいろと教えてくれます。授業の後に訪ねていったり、自分でメールを出して研究室に会いにいってみたり。もちろん研究室を開放するオフィスアワーもあります。
学部生だけでなく、院生や留学生、それに先生を含めて多様な人がいるので、自分の求める人に出会える大学だと思います。もちろん自分から求めなければだめですが、自分の抱いた興味にはきちんと受け皿がある。日頃何気なく習っている先生がすごい先生だったとか、そういう面でも出会いはあります。
よいところでも悪いところでもあるのかもしれませんが、変人が多くて居心地がいいところです。理学部は特に個性豊かな人がたくさんいますが、自由な学風があるからこそ、そういう仲間と出会って切磋琢磨していけるのだと思います。こういう環境はすごく魅力的です。
けっこう優秀な人が多いと思いますし、他の大学との相対的な評価はできませんが、勉強熱心な人の割合もある程度多いと思いますから、勉強したいと思っている人にはよい環境だと思います。
あとは1年遊んでいても取り返しがきくというか、4年間みっちり勉強するというより、なぜ勉強するのかを考える時間も合わせて与えられているように思います。そういうシステムなのでしょうか?
サークルの仲間でも将来のことをきちんと考えている人が多いので、いい刺激を受けられます。
武道部に入っているせいもあるかもしれませんが、芯はストイックな人が多いと感じています。学科のクラスでも根が真面目な人は多い。あまりだらだらしている人はいません。京大に限ったことではないとは思いますが、入試が難しい分、そういう人たちが集まりやすいのだと思います。
受験はこう乗り切った!
「参考書はころころ変えるな」という高校の先生のアドバイスが役立ちました。ひとつを完璧にすれば応用がきくからです。一浪した後、予備校を変えようかと悩みましたが、やはり同じ予備校に通いました。環境をあまり変えるのもよくないと思います。
高3の初めから塾に通いましたが、志望のクラスに追いつくために基礎問題のテスト勉強をしていて、志望校対策は直前までやっていませんでした。
ところで、塾へ来てまでおしゃべりに花を咲かせていた人たちは入試の結果があまりよくありませんでした。私は学校が現実逃避の場所と考え、学校では勉強の話もせずに常にリラックスして、学校が終わったら勉強することにして、塾ではほとんどしゃべりませんでした。塾の自習室を使うようにも言われますが、私は嫌いだったので行きませんでした。家でできるなら、行く必要はまったくないと思います。
僕は一浪目より二浪目でできた友達が多い。高校の友達もほとんどどこかに入っているので、どうしてもストレスがたまり、さみしくもなるので、友だちの存在は大きかったです。息抜きしたり、勉強を教えあったりできるのもよかったです。
当時の友達とはいまでも付き合いがあります。高校の同級生もたくさん全国各地の大学へ行っていますから、旅行へ行っても宿泊代がほとんどいりません。
浪人して予備校に通っていましたが、与えられるものを全てこなすのは結構大変なことだと思います。僕は自信のある科目の授業は出ずに自習室へ行って、自分のできていないところを重点的に勉強していました。苦手な分野は模試の結果などから客観的に判断していました。参考書は西嶋くんと同じで、ひとつのものを深くやっていました。
医学科を目指していた関係で、専門の塾と、地元の塾の2つを掛け持ちしていました。前者には高2の終わりから結局最後まで通いましたが、京大は問題が独自ですから、京大に志望を変えた時点でやめておけばよかったと今では思っています。必要ないものは切り捨てるのも大事だと。地元の塾へは、家では集中して勉強できなかったので、集中できる環境を求めて通っていました。先生も京大出身で、アドバイスも的確で、頼もしかったです。
僕は夏休みまで部活をしていて、9月終わりまでは生徒会長をしていたため、受験勉強を本格的に始めたのは高3の9月頃です。サイエンス部だったので、科学系、数学系の教科は好きでした。特に数学はパズルを解くように楽しみながらどんどん解いていました。
主に使っていたのは、高校の先生から配られた色々な大学の過去問の寄せ集めプリントと『京大25カ年』です。学校と参考書だけで、塾や家庭教師のお世話にはならず、通信教育も受けませんでした。西嶋くんの言うとおり、参考書は変えない方がよいと思います。25カ年があればかなりの勉強ができます。
『大学への数学』は?
やっていません。僕の場合、高校数学の範囲までが楽しかったので。大学へ入ってからは数学がわかりづらくなりました。
僕は自宅で『大学への数学』ばかりやっていました。浪人時代はほとんどそれしかやらなかったと言ってもいいくらい。予備校には一切通わず、数学以外の科目は参考書を買って、自分で勉強しました。
僕は受験テクニックという考え方は、学問を入試のためだけに利用している感じがしてすごく嫌いです。パズル的という話もありましたが、確かに楽しいけど、それは果たして勉強なのかと問いたい。受験にとらわれず、自分やりたいことや興味のある分野を高校生のうちに見つけて、取り組んでほしいと思います。
やりたいことが決まっていないと、大学に入って自由になった時、ふと何をしたらよいかわからなくなる時があると言っている友人もいますね。
現在の心境は?
森林農学科はその名の通り、木が一本生えてさえいれば研究できる学科です。ある時、うちの学科に京大フィールド研からアルバイトの募集がありました。内容は、京都、滋賀、福井の県境辺りにある芦生研究林での樹木調査です。参加すると、崖はあるし、傾斜は大きいし、危険と隣り合わせのバイトでしたがとても楽しかった。
アルバイトは色々な経験できる。僕が一番印象に残っているのは、夏休みにやった学会の補助です。仕事内容は、先生のパソコンを預かったり、受付をしたりといった簡単なものでしたが、見せていただいた発表が、意味はわからないなりに、社会に役立つ最先端の研究だということが感じられて、感動しました。自分もいつかあの壇上に立ちたいと、研究者を目指す気持ちがさらに強まりました。
高校を卒業して働いている友人と会うと、大学進学という選択が本当に正しかったのか迷う時もあります。でも、寮の先輩や学部の同期など、面白い人とも出会えたし、最近は可能性を広げることができてよかったのかなと思っています。このポケゼミをはじめ、講義も面白いものが結構あります。理系の人間だからか、社会科学系の講義が新鮮でした。
中高では水泳をしていましたが、大学ではサークルでアルティメッドというフリスビーを使ったアメフトのようなスポーツを始めました。新人戦では3位に入りました。
武道部で空手をやっています。
学内では京大カルタ会に入っています。百人一首をやるサークルです。年齢性別を問わない競技なので、試合では相手が小学生のこともあります。学外では、中2から弓道をやっています。
将来やゼミについて
最後に、アドバイスを。
応援団に入っていた関係で、高3の夏休みも半分は練習時間にあてていました。でも、大学生になって振り返ると、それが一番のよい思い出になっています。受験勉強があるからと参加しない人もいましたが、意外と両立していた人の方が受かっていたりするので、行事には積極的に参加したらよいと思います。
先ほども少し言いましたが、受験のためだけの勉強はしてほしくない。自分の興味を優先して勉強してほしいと思います。
僕は、興味のある分野がないことに気がついてあがいていたら、小学校の時にしていた公文式を思い出して、数学をやろうと思い立ちました。
人より長く浪人した分、言いたいこともたくさんあります。
まず、受験する大学の情報は調べすぎても調べすぎることはないということです。先輩に話を聞いたり、インターネットで公式情報以外にも学生さんが本音で書いたものを読んだりするなど、あらゆる方法で情報を集めておくことが大切です。ぜひ、普段の京大にも来てください。出入り自由ですから。膨大な数の立て看板や校内で演説している謎の集団、入試の日に立つ謎の折田先生像などを、自分の目で見てください。自分のやりたい研究でも、学生の気質が全然あわないなど(自分が思っているのと全く違うなど?)、入ってから後悔してほしくないからです。ただ、やりたいことや絶対に行きたい大学を見つけるのはなかなか難しいので、見つからなかったら、どこかに飛び込んでみるのも一つの方法だと思います。入ったら楽しかったということも大いにあることですから。
農学部の場合、希望の学科を書いて成績順に割りふられるので、合格最低点より上でも学科によっては落ちますから、学科選択は慎重に。ちなみに僕は第一希望が資源生物学科で、森林は第二希望でしたが、入ってみたら森林でよかったと思っています。
あとは、浪人できる環境があるなら、一度落ちても諦めない方がいい。浪人生も結構います。
それから、受験前の体調管理は絶対に大切です。僕はセンター5日前にインフルエンザにかかりました。しかも成人式の日で、成人式にも行けませんでした。
うちの学科は、農学部にありながらやっているのは経済学ですから、よく知らないまま入りやすいからと第三希望で入学して、転学科したいと悩んでいる友だちもいます。
転学科はかなり難しいらしいので、学科の情報もしっかりと調べておいてほしいですね。ただ、京大は自由な大学なので、少しはずれた?研究をしても許してもらえるとは思います。大学院で変わる方法もありますし。
あと、京大は得意科目を、ある程度評価してくれる大学だと思います。ぼくは理系選択なのに理系科目が本当に苦手で、むしろ国語や社会が得意でしたが、京大は理系でも国語の入試があり助かりました。農学部だとセンターの配点も大きい。逆に理系科目がすごく得意で他はあまり得意でない人は、理学部だとセンターは足切りのためだけで、まったく二次にはカウントされませんから有利だと思います。来年か再来年にはセンターも入れるようですが・・・。
経済の論文入試もセンターは足切りでした。今年から社会だけは入るみたいですけど。
入試方式もいろいろあるので、最初からこの科目が不得意だから京大は無理だと諦めずに、まず目指してほしい。農学部は理系の中でも文系科目が得意な人が多い学部です。男女比も半々に近くて、高校のクラスみたいです。個人的には、工学系を目指す女子がもっといていいのにと思います。
勉強の仕方も、集中できる時間も、人それぞれなので、他人と比較しすぎないでほしい。
途中で志望校を諦めてしまう人もいるかもしれませんが、最後まで自分を信じて、絶対に受かると思ってやり続けてほしい。自信が原動力になって受かることもあります。自分が興味のあることを勉強してほしいという意見もありましたが、やはり志望校に受かるためには、興味のない分野についてもある程度の学力は必要です。そこは割り切って、志望校の求めるレベルまでは、しっかりこつこつと勉強した方がいいと思います。