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最後の講義で、雑談を含めてヒントはすべて出したと思います。

1. 水について以下の問いに簡潔に答えよ。
(1) 沸点、臨界点、三重点とは何?

沸点:圧力が与えられたとき、(純粋な)水と水蒸気が共存する温度(あるいは、大気圧と水の蒸気圧が等しくなる温度)が決まり、これのこと。ギブスの相律により、気・液共存関係は自由度1の曲線となる。
臨界点:相図上で、気-液共存線(飽和蒸気圧曲線)には端があり、これのこと。これ以上の温度あるいは圧力では不連続変化を示さず、液相・気相の区別はない。
3重点:純粋物質では気・液・固の3相が共存できるのは自由度0の「点」である。この点が存在する場合、3重点という。

「液体が気体に変わる温度」など 小 学 生 なみの答えは論外。室温でも水が気化していることは問(3)までいけば気がつく。その時点で、せめてこういう恥ずかしい答を消した痕跡があれば、大学生として少しは評価できる。

(2) 圧力が下がれば沸点は上がる?下がる?根拠は?

下がる。クラペイロン-クラウジウスの関係式において、気体のモル体積は液体のそれより大きいから、飽和蒸気圧曲線の傾きは \mathrm{d}P/\mathrm{d}T \gt 0 。(水の場合、融点の振舞いは逆)

(3) 1気圧のもとでの沸点は、およそセ氏100度である。これに比べて十分低い温度の閉じた部屋の空気中に、水蒸気が存分に含まれるのはなぜ?

(2)でみたように、セ氏100度以下の室温では(飽和)蒸気圧は1気圧よりずっと低くなる。1気圧での純粋な水と水蒸気の共存温度は100度であるが、それ以下の温度の室内の水と共存している水蒸気は空気との混合気体中の水蒸気であり、その分圧が水の蒸気圧と釣りあえばよいので、ある程度の組成比まで共存できる。

正確には、空気中に含まれうる水蒸気の分圧(飽和水蒸気量)は以下のようにして決まる: セ氏100度以下の室温では蒸気圧は1気圧より低く、これより高い気圧では液体状態のギブスエネルギーの方が気体状態のそれより低いため、液体状態が平衡相である。気体状態のギブスエネルギー曲線の値が、1気圧における液体のギブスエネルギー値と同じ高さになる圧力位置を求めれば、これが空気中に含まれ得る水蒸気の分圧を与えることになる。その位置は蒸気圧より少しだけ高い。(参照図)

(4) (3)を参考にして、昇華の例を挙げよ。ちなみに、水の3重点の温度は273.16Kである。

同様に、3重点以上の圧力、例えば1気圧の空気中にも水蒸気が含まれており、273.16K以下では分圧次第で水蒸気と固体の氷が共存できる。雪や樹氷、ダイアモンドダストなどはこの条件下で水蒸気が水を介さず直接、氷になったもの。
答案には「冷凍室の氷がだんだん小さくなり、霜がつく」というのもあった。なお、ドライアイスは水ではなく二酸化炭素の固体である。

2.
(1) 1モルの理想気体が温度 T の準静的等温過程を経て、体積 VV_1 から V_2 まで変化したとき、気体が外部から受け取った熱を求めよ。

\mathrm{d}’Q = \mathrm{d}U + P\mathrm{d}V において、理想気体では内部エネルギー U は温度だけで決まるから、等温変化では \mathrm{d}’Q = P\mathrm{d}V = RT \mathrm{d}V/V 、これを V_1 から V_2 まで積分して Q = RT \log(V_2/V_1) 。[あるいは、(2)を用いてもよい]

(2) 理想気体に限らず一般の系が温度 T の準静的等温過程を経て、体積 VV_1 から V_2 まで変化したとき、系が外部から受け取った熱 Q は次式で与えられることを導け。

Q = T \int_{V_1}^{V_2} (∂P/∂T)_V \mathrm{d}V

準静的変化では \mathrm{d}’Q = T\mathrm{d}S 。等温変化だから残る変数を V として \mathrm{d}S = (∂S/∂V)_T \mathrm{d}V 、これは、 F についてのマクスウェル関係式を用いて \mathrm{d}S = (∂P/∂T)_V \mathrm{d}V 、よって \mathrm{d}’Q = T(∂P/∂T)_V \mathrm{d}V 、これを V_1 から V_2 まで積分すればよい。

3. 光子気体(空洞放射)では、(i)(内部)エネルギー密度 u=U/V は温度 T だけで決まり、(ii)圧力は P=u/3 で与えられることがわかっているとして、以下の問いに答えよ。
(1) エネルギー密度 uT^4 に比例することを導け。

\mathrm{d}U = T\mathrm{d}S – P\mathrm{d}V (および F に関するマクスウェル関係式)より
(∂U/∂V)_T = T(∂S/∂V)_T – P = T(∂P/∂T)_V – P = (T/3)(\mathrm{d}u/\mathrm{d}T) – u/3
一方、 U(V,T) = Vu(T) より (∂U/∂V)_T = u
この2式の左辺を消去することにより T(\mathrm{d}u/\mathrm{d}T) – 4u = 0\mathrm{d}u/u – 4\mathrm{d}T/T = 0
これを積分して[参考資料に公式あり] uT^{-4}=\mathrm{constant}

(2) これより熱放射に関するシュテファン-ボルツマンの法則を導け。(係数は決めなくてもよい。)

電磁波の速度は波長によらず一定であるから、エネルギー放射量はエネルギー密度に比例すると考えてよい。したがってエネルギー放射量も T^4 に比例する。 [分子気体の場合は分子のエネルギーによって速度が異なるから、こうはいかない。]

(3) (1)の比例定数を α なわちエネルギー密度を u=αT^4 と書くとき、エントロピー密度 s=S/Vs=4αT^3/3 で与えられることを示せ。

T\mathrm{d}S = \mathrm{d}U + P\mathrm{d}V = \mathrm{d}(αT^4V) + (αT^4/3)\mathrm{d}V = 4αT^3V\mathrm{d}T + (4αT^4/3)\mathrm{d}V
したがって
\mathrm{d}S = 4αT^2V\mathrm{d}T + (4αT^3/3)\mathrm{d}V = \mathrm{d}(4αT^3V/3) ,\, S = 4αT^3V/3 + \mathrm{constant}
S も体積 V に比例すると考えてよいから積分定数は0、よって s = S/V = 4αT^3/3

あるいは、エントロピーも体積に比例し、 S(T,V) = s(T)V と考えられるから
s = (∂S/∂V)_T = (∂P/∂T)_V = (1/3)(\mathrm{d}u/\mathrm{d}T) = 4αT^3/3
(2つ目の等号は F に関するマクスウェル関係式)

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