出席メール(「地球環境学のすすめ」第4回目)

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  1.  私が柏助教授の授業を聞いて感じたことは、2つあります。 まず一つ目、牛の放牧について。  牛と草地との間で循環がうまくいっていないことは、日本が輸入飼料に頼っているからだと説明されましたが、日本の狭い国土、それに対する牛の頭数を考えれば、日本国内でその循環を生み出すのは不可能なのではないかと思いました。  私は日本が農作物の大部分を輸入に頼っていることに賛成ではありません。反対です。全世界をひとつの国と見れば、適地適作のようであると言えないこともありませんが、そもそも国家間で戦争が行われているのだから、各国の農作物自給率は高くあるべきでしょう。  しかし、日本が今の経済レベルを維持したまま農業自給率も高めるのは不可能だと思うのです。だからといって経済レベルを今より低くすることは、きっと国民が許さないでしょう。この問題について、日本は農業か経済かどちらか一方を選ぶしかないのでしょうか? そして2つ目、排泄物処理センターについて。  ランニングコストが売り上げを上回ったら、ランニングできないわけですから、うまくいかないですよね。今の日本には良い堆肥を作る能力は求められていないのでしょうか?私には堆肥の良い悪いはよくわかりません。でも日本が農業の面でかなり危険な位置にあることはなんとなくわかります。大量生産の機械化は農作物の質を落とすだけでなく、きっと後の時代へ伝えるべき土や水をだんだん変えていってしまうと思います。大量生産の精神は、今楽をしたいという精神だと思います。楽なほうに落するということでしょうか。環境問題の本質である、現象面の問題の裏側にある構造的な問題とは、そういう人間の考えなのかもしれないなぁと思いました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

      「日本の狭い国土、それに対する牛の頭数を考えれば、日本国内でその循環を生み出すのは不可能なのではないかと思いました。」  畜産物を完全自給しようとすれば、あなたの言われる通りです。日本の国土条件から考えて、食料の完全自給はほぼ不可能だと言えます。どの程度の自給なら可能かと言えば、私は70%は可能だと思っています。それからするなら40%は低すぎます。それはまさに日本農業の構造的な歪みを示しています。  70%を前提に考えれば、畜産物をどの程度輸入し、飼料をどの程度自給するかの答えがでてきます。その際、当然に物質循環を保てるような方法を考えることができるはずです。 「そもそも国家間で戦争が行われているのだから、各国の農作物自給率は高くあるべきでしょう。」  まったくその通りです。戦争がなくても、異常気象や、港湾ストなどで輸入が途絶える可能性は少なくありません。 「この問題について、日本は農業か経済かどちらか一方を選ぶしかないのでしょうか?」  日本農業にとって、環境か経済かの二者択一しかないとは思いません。これまでの日本農業は、ある意味、経済性の追求さえしてきませんでした。あったのは既得権益の保持だったように、私には見えます。日本の農業界が既得権益を御破算にする勇気さえもてれば、環境と経済の両者の実現が可能だと思います。 「今の日本には良い堆肥を作る能力は求められていないのでしょうか?」  やすくて使いやすい化学肥料がありますので、これまで堆肥は注目されてきませんでした。今日、堆肥が注目されはじめているのは、有機農産物が注目されるようになってきたからです。結局のところ、消費者の意識の低さが、歪んだ構造を維持させているともいえるかもしれません。(これは、農業に関してだけでなく、日本の社会全体に対して言えることだと思います。) 「大量生産の精神は、今楽をしたいという精神だと思います。楽なほうに落するということでしょうか。環境問題の本質である、現象面の問題の裏側にある構造的な問題とは、そういう人間の考えなのかもしれないなぁと思いました。」  本当にそうですね。あなたのメールは、全体を通して指摘が鋭いですが、この箇所は、とりわけいいですね。

           柏 久

  2.  私は以前に兵庫県の酪農家で酪農を体験したことがありますが、そこでもやはり牛は つながれているだけで、糞尿は人が溝に集めてそれを牛舎の外で肥料にするために集 めていたように思います。そこは住宅地だったので牛は放牧どころか散歩すらできな いようなところでした。  今日の講義にあった「やま地」酪農はとても素晴らしいと思 いましたが本当に条件の良い限られた地域でしかできないことなんだろうと思いま す。でも条件が整っている地域でもっと普及させることはできるはずなので、政府な どの体制を変えていかなくてはいけないし、そのためにはその方法について私ももっ と知りたいし、その良さを多くの人が認識するようにしなくてはいけないと思いま す。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       あなたの体験された酪農は、日本で普遍的に見られる一般的な酪農だと思います。私はそれに意味がないとは思っていません。しかしもっと別の形もあり、いまの酪農のあり方に対する問題提起として「やま地」酪農を持ち出しているのです。広げていかなければならない、草地畜産の方法は、「やま地」酪農以外にもまだいろいろとあります。食料・環境経済学科の学生さんと言うことで、今後もいろいろな農業形態を勉強してください。

           柏 久

  3.  私はこの「やまち」酪農というものを知らなかったのですが、これから推奨していくべき方法だと思いました。環境面もありますが、何より飼料作物をアメリカにほぼ100%依存している状態で、しかも配合飼料には関税をかけず輸入して、狂牛病が出ると配合飼料に肉骨粉がはいっていることで問題になっいるのを打開するには、日本の牛が本当に日本であるものを食べさせる酪農が必要だからです。アジアは昔から土地生産性が高いといわれてきましたが、これからはそこだけにこだわらず、使える山地を広く環境にやさしく利用していけば良いのではないかと思いました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

      「アジアは昔から土地生産性が高いといわれてきましたが、これからはそこだけにこだわらず、使える山地を広く環境にやさしく利用していけば良いのではないかと思いました。」  その通りですね。食料自給率40%で甘んじているのですから、土地生産性が高い集約農業にこだわることはありません。環境ということを考えあわせると、粗放農業の重要性が増してきます。しかし、粗放農業を拡大していくには、やはり日本の農業構造、さらには日本の社会構造を変革していく必要がある、ということだと思います。      柏 久

  4.  今日の講義と教科書を読んだ中で知った事は、放牧型の「やま地」酪農は物質循環を乳牛にやらせ、自然の全体的調和を重視したものであるために、環境保全型の農業であるということだ。また経済性も高いということで舎飼型よりも明らかにいいように思われるが、広大な土地が必要であったり、効率面から考えてあまり普及していない。しかし、その根本的な原因は政府の利益重視の農業政策にあるのだと分かり、環境問題と人間の利益を調和させていく事は逃れられない問題だということを痛感した。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       要領よくまとめられていますね。ただ学問とは悩みからわき出してくるべきものです。学生時代、青春の悩みに懊悩することがあってもよいような気がします。

           柏 久

  5.  先生のパソコンはアップル社のでしたね。どうしてアップル社のマークは1口かじられたようなりんごの形をしているのでしょう?あれじゃあ1口かじられたアンパンマンのような気がいたします。  さてそのパソコンを使ってのパワーポイントの講義でしたがのどかなやま地やとぼけた顔の牛の写真が登場していましたね。でも1番頻度が高かったのは糞尿だったような気がします。牛の糞とばしもさぞかし豪快なんでしょうがカバのそれもすごいらしいですよ。先生は研修で糞尿処理や草の運搬をなさったそうですが動物園でカバのビチババ処理をするのとではどちらが辛いんでしょうね。  写真ではやま地はのどかに見えますが実際行ってみると家畜の体臭とビチババののせいですごい臭いがするんじゃないですか?絵や写真では味や臭いを伝えられませんからね。ちと残念(さすがに不快な臭いは嗅ぎたくありませんが)。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       物事を斜に眺める姿勢、私は嫌いではありません。ただ、世の中は多くの人間の犠牲的努力の上に成り立っているものであり、それへの敬意を失ってしまっては、結局は自らを貶める結果になってしまうように思います。

           柏 久

  6.  途中からの参加なので話がよくわからなかったのですが、環境の改善と人間がどこまで謙虚になりきれるのかということに少し興味があります。この講義で環境の現状について具体的に知りたいと思っています。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       一つ前のメールと対極的な印象を受けました。人間にとって謙虚さは、非常に重要な徳目です。確かに地球環境問題は、人間が謙虚さを失ったことから起こっている問題かもしれませんね。

           柏 久

  7.  授業を聞いて、何だかもどかしい気持ちになりました。 政策によって、合理性のあるものの普及が阻害される…。 私の祖父もいわゆる舎飼型の酪農をしてしていますが、 それがこんなにうまく循環していないものだとは 思ってもみませんでした。 人の利益と環境保全の調和がとれた形で、物質循環が うまくいくような体制をつくることが大切だということが わかりました。 それは、専門家や現場の人々の声がきちんと反映するような体 制であるべきだと思います。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

      舎飼型の酪農すべてで物質循環の輪が切れているわけではありません。淡路島の酪農なども、当初はタマネギという大量に肥料を吸収する作物と結びついていたわけであり(三毛作も同じ意味を持つ)、物質循環がその中心にあったといえます。ところが政策担当者の見識のなさが、今日のような状況を作り出したと言えます。そして、環境を持ち出すことによってしか農業保護を主張できない状況に直面して、自らの失敗を棚上げして農業の多面的機能を声高に言う、これでは説得力はないですよね … 。  このあたりに構造的問題を感じてもらえれば、私としては満足です。      柏 久

  8. 「地球環境学のすすめ」第4回目の授業を聞いて:  今回の授業は字だけではなく、写真を使っていたのですごく見やすかったです。現象だけでなく、その背後にある構造的問題の解決が必要であることには、同感です。貴重な時間を頂きありがとうございました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       喜んでもらえて嬉しいです。後期の講義もわかりやすさを心がけたいと思っています。

           柏 久

  9.  本の内容だけでなくプラスαがもう少しききたかった。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       講義中に言いましたが、教科書の内容以上のことを聞きたいのであれば、講義の環境形成基礎論を履修してください。

           柏 久

  10.  講義を聞いて、どうにか物質や経済がうまく循環する世の中にならないかと思いました。日本の食糧自給率がなんとか上がってほしいなぁ。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       今日の日本においては、食料自給率を高めることが大きな課題の一つだと思います。農学士は、まさにそのために努力すべき人です。単に望むだけでなく、実現のために尽くしてください。

           柏 久




    第1回目表紙

    「地球環境学のすすめ」第4回目出席メール



    作成日:2002年5月15日
    改訂日:2002年5月15日
    制作者:柏 久