出席メール(「地球環境学のすすめ」第4回目)

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  1.  僕の実家は淡路島なんですが、酪農はそこまで盛んじゃなかったと思います。昨年亡くなった祖父は米を作っていたけどあんなコンクリートで固めて欲しいなんて言ってなかったと思います。他の話は面白かったけどそれが少し疑問に感じました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       淡路島は、北部と南部で、農業状況が大きく異なります。酪農のさかんなのは、三原町を中心とした南部です。また、コンクリートの畦畔を、もちろん淡路の農民すべてが求めているわけではありません。

           柏 久

  2.  地球環境問題には表面的な問題だけでなく構造的な問題も横たわっていることに改めて考えさせられた。農地と牛とが能率よく関わっている関係には感心させられた。

     僕も四年間は批判的に生きようと思う

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       地球環境問題だけではなく、社会の問題においては、表面的な現象の背後にある構造的問題が重要です。理系の学生であっても、社会の問題に目を向け、構造的な問題に対して自らの見解が述べられるよう、大学でしっかりと勉強をしてください。

           柏 久

  3.  コンクリートで囲まれた畑の写真にはびっくりしました。 いくら循環型の農業を行っているとしても、別の部分で環境を損なうような行いをするのはおかしいと思いました。

     「やま地」酪農は非常に合理的で環境にも配慮した酪農だと思いますが、写真を見て気になったのですが草地部分がはげ山のようになっていますよね?
    草が生えているとはいえもともとは森林だったところを開発してあのような状態にしたんだと思いますが、「やま地」酪農が普及すると今度は森林破壊が進んでしまいませんか?

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       農業は、本来、物質循環が維持されるところに、工業とは異なるよいところがあるはずです。ところが、現在の農業ではこの物質循環の切れてしまっているものが大半です。農業が環境保全に貢献することを主張するためには、現代農業のあり方を変革していくことが必要です。

       「やま地」酪農の写真、私が撮ったものは、確かに春先でまだ草の成長が十分でない上、写真の撮れ方で土が露出しているように見えます。春の甲子園のシバは、最初、緑でなかったのに、高校野球の期間中に緑に変わっていくのと同じように、牧場のシバも日に日に緑を拡大していきます。また、シバは地下茎によって、土壌浸食が防いでいる点が重要です。

       確かに草地は日本の風土の中では、特別な場所を除き、遷移の極相ではありません。しかし、極相の状態がすべてよい、というわけではないはずです。森林と草地とのバランスをどのように保つかを考えていくのが、われわれの課題だと言えるかもしれません。

           柏 久

  4.  感想……農業の奥深さを知りました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       農業の奥深さだけでなく、大学の講義の奥深さも知って欲しいと思います。

           柏 久

  5.  構造的なところに問題があることはわかったが、それを解決するために個人としては具体的にできることはあるのでしょうか?

     やはり税金をうまく使ってくれるような人に票を入れるしかないのかなぁ。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       非常にシニカルですね。しかし、一面、真理をついているともいえます。構造的な問題の解決は、非常に難しい。だからこそ、挑戦する甲斐があります。また、ひとりの力での解決は無理ですので、多くに人々の力を合わせなければならないと言えます。

           柏 久

  6.  穀物の自給率が下がっていることは知っていましたが、それが政策によって促されているとは知りませんでした。高知県の牧場のような循環システムをできるだけ多くの牧場で実現できたら、と思います。

       メール、ありがとうございました。

       しかし、署名がなければ、出席にさえできませんよ。学部、回生、名前を書いて送りなおしてください。

           柏 久

  7.  「食糧自給率の向上」や「循環型の農業」といった目的が正当なものだからといって、お金をつぎ込めばいい というものではないと思う。むしろそうした政府の対応は農家の政府依存体質を生み出すばかりではないだろうか。政府丸抱えの農業に今後の躍進が期待できるとは私には到底思えないし 補助金によりかかった施設に基づき、採算も合わないようなサイクルは見せかけに過ぎないだろう。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       ご意見、まったくその通りだと思います。私が主張する構造的問題とは、まさにこのことなのです。環境問題を考える上で、農業は非常に重要なものなのですが、今のままの農業のあり方では、とても期待に応えられません。いかにして農業の構造を変えていくか、その点をしっかりと見据えなければなりません。

           柏 久

  8.  牛が段差につけた足跡が(芸術的な意味で)綺麗だと思いました。また、そういった牛の糞尿が国外からの穀物の輸入の為にかなり過剰に余っているという事実も初めて知りました。

     国外からの輸入に依存するということはそれ自体が問題であるだけでなく、そういったよく知られていない面においても日本の危機を招くということは早急に考慮すべき重要な問題だと私は思います。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       物事は、単独にあるのではなく、無限に連関しあいながら存在しています。人間は無限を捉えることはできませんが、できる限り幅広い捉え方をしなければ、現実を見誤ってしまうものです。近代科学は部分を切り取って深く認識することで成功を収めてきましたが、そこには現実を見誤る危険がはらまれています。幅広いものの見方を身につけてください。

           柏 久

  9.  今日の授業を聞かせていただきました。飼料作物の輸入が環境問題に絡んでくるとは驚きでした。やはり物質の循環というものは大切なんだなと改めて認識させられた気がします。

     それと「やま地」酪農というものにも興味がもてました。授業前日に教科書を読んでなんとなく思い描いていたものとまったく異なり、非常に急な斜面でも可能なのですね。土地利用の面でも効率が上がりそうな酪農方法だと思いました。教科書にもお書きなっておられましたが、こういうことは畜産を営んでいる人にもっともっと知ってもらいたいと思いました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

        環境問題というものは、一言でくくるにはあまりにも幅広い概念です。私には行き詰まっている社会が、何か誤魔化しのために持ち出しているようにも思えます。われわれは、何が問題なのかを、しっかりと見据えなければならないといえます。

       「やま地」酪農は、現在の日本農業に対する一つのアンチテーゼです。日本農業や、日本社会が見失っているものを教えてくれます。農業においても、他の分野においても、同じようなものがたくさんあると思います。われわれは、そうしたものに目を向け、耳を傾けて、社会の変革の道筋を見出していかなければならないのではないでしょうか。

       あなたが、大学生活の中で、社会変革の道筋を見出すような勉強をされることを期待しています。

           柏 久

  10.  教科書を読みはじめた時の僕の感想は、酪農がテーマなんてマニアックな先生なんだろうなというものでした。しかし酪農の飼料作物や物質循環の話が突き詰めるとスケールの大きな話になっていくのを目にして驚きました。

     講義もカラー写真でそれなりに面白く、あからさまな批判を展開する講義は入学前に僕が描いていた大学の講義に近いものがありました。

     ただし、疑問も生じました。先生は現在哲学的考察に研究テーマを置かれているようですが、真の循環型農業の普及を、地域の農家から目指す立場なのか、政府を変革させて目指す立場なのか、それとも教育者として次代に託すのか・・・。学者として自分の主張の実現に向けてどこに重点を置こうとされているのでしょうか。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       なかなか鋭い指摘ですね。私の現在の姿勢ですが、「教育者として次代に託」したいという気持ちが一番強いかもしれません。政府を動かそうとすれば、多かれ少なかれ御用学者とならなければなりません。それは結局のところ社会のためになりませんし、私の目指すところと正反対の方向です。また、農村社会は「むら」構造となっており、変革とは対極にあるといえます。もし行動するとするなら、草の根的な市民運動に参加するのがベストかもしれませんが、いまの自分のおかれている位置を考えれば、教育者としての活動がもっとも意義深いように思えるからです。

           柏 久

  11.  農業と牛との関係がすごくわかった。地球環境問題は構造的な問題があることがわかった。4年間 批判的にいきてみよう!

      **様へ  メール、ありがとうございました。

       大学4年間、生き方次第で、その意義が大きく変わります。勉強するだけがよいとは思いませんが、何をするにしろ(例えばスポーツに一途になるなど)、そこから何かを学ぼうという姿勢が重要だと思います。意義深い大学生活を送って下さい。

           柏 久

  12. 本日の講義の感想
    やはり環境問題を解決するにはお金の問題を何とかせねばならないと思った。
    農家もコストがかかるから輸入肥料に頼るのだろうし、
    金がかかるから廃棄物処理もままならない。
    それが(今回の話には関係ないが)不法投棄という問題にもつながってくる。
    先生のおっしゃるとおり、日本の構造全体を改革せねば、
    根本的な解決は難しいだろうと思う。
    しかし私は施政者になるつもりはないので、
    できるところからこつこつと環境によいことをしていくつもりだ。

    柏先生へ
    干されてもめげずに批判の精神を失わず頑張って下さい。
    それと、個人的に初めの十数分の先生の話は雑談のように思われましたので、
    次回からは省いてくださることを願います。

      **様へ  メール、ありがとうございました。  物事、すべて金の問題に還元することは、非常に危険だと思います。とりわけ環境問題は、物事を金で解決しようとしてきた姿勢が生み出したものだとも言えるのですから。金をかけて廃棄物を処理するのではなく、廃棄物をできる限り少なくする社会システムの構築が必要なのではないでしょうか。それには日本社会の構造を変えていかなければなりません。目指す社会は、拝金主義的社会、効率主義的社会では決してないはずです。また、為政者に頼る社会ではなく、市民が力を合わせて変革を成し遂げていく社会だと思います。

       講義をどのように考えるかは、人により様々だとは思いますが、大学は決して予備校ではありません。無駄に思われるものにこそ大きな意義があるともいえます。大学を卒業して35年以上経ちますが、印象深かった講義で、いまだに覚えていることは雑談が多く、しかもその雑談が人生において非常に役立ってきているように思います。

       前期は、この後、私が教壇に立つことはありませんが、もし、雑談を排する講義を望まれるのであれば、後期に私が担当する「環境形成基礎論」は、履修されない方がよいと思います。

           柏 久

  13.  農業と環境の意外な実態の話は興味深くて面白かったです。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       環境という問題を考える上で、農業は避けて通ることができません。幅広い見識を持てるような勉強をしてください。

           柏 久

  14.  コンクリートで囲まれた田んぼがとても印象的でした。現代の人間の自然をあまり顧ない一面を見た気がしました。また、環境問題は現象だけでなく背景も含めて考えていかなければいけないというのは、確かにそうだと思ったしとても納得できる結論でした。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       コンクリートの畦畔に、環境という点で問題があることは言うまでもありませんが、あれができる背景にはそれなりの理由があります。社会は無数の要因が絡み合って成り立っており、それを解きほぐしながら、ある一定の視点から見てもっとも重要な構図をつかみとることが大切です。自分自身の視点を確立できるよう、頑張って勉強してください。

           柏 久

  15.  今回の講義は、今までの中で一番分かりやすかったです。「農業経済学」という言葉を聞いたときは、経済というからまたややこしい数字が出てきて・・・と思っていましたが、そんなことはなく、理解しやすかったです。

     私は兵庫県出身で、昔淡路島に行ったことがあります。その時に、牧場へ行き、実際に牛舎の牛や放牧しているところを見学しました。牛舎の中で両側から牛が顔を出しているのに驚き、ちょっと怖かった記憶があります。観光者もくる牧場だったからかもしれませんが、草地に出されている牛もいたと思います。その時は、その牧場や周囲にとても自然があふれているなと感じましたが、今回の講義で実はこのような牧場にも、環境問題があるということに驚きました。

     また、今回の講義で見せていただいた写真も興味深かったです。牛が斜面を歩いてできた斜面の模様のようなものや、港でとうもろこしの輸入を行っている写真など、普段は見ることがないものが見れてよかったです。

     私は文学部なのですが、環境問題には興味があります。環境問題というと、理系のイメージがあるんですが、文系の立場から何か考えることができたらな、と思います。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       私は、確かに農業経済学から出発したましたが、これまでの日本の農業経済学を強く批判する書物を出しています。それだけでなく、経済学一般に対しても大きな疑問を持っています。いま私の学問的関心事は、科学、とりわけ私が専門とする農学、および社会科学がどうあるべきかということです。私が環境学という新しい領域に飛び込んだのも、それによって新しい境地が開けるのではないか、と思ったからです。

       淡路島は農業のさかんなところです。しかし今大きな環境変化が起こりつつあります。20年前に淡路島で調査をしたときには後継者問題はあまりなかったのですが、いまや若い人たちは阪神地域に働きに出ることを望み、後継者問題は非常に深刻になりつつあります。

       淡路に限らず、観光者に開放されている牧場は、牧場の一般的イメージに沿った形で作られています。京都の丹後半島にある碇高原牧場は、京都府のものですが観光スポットでもあり、牛も多く放牧されています。公共牧場の場合、地域の畜産農家から育成牛を預かるという例が多く見られます。

       地球環境学舎にも文学部出身の院生が何人もいます。というより、私の分野(人間環境共生基礎論分野)の教授は、京大文学部、西田・田辺の伝統を持つの純粋哲学の出身です。大学卒業後の進路として、地球環境学舎大学院進学も一つの選択肢として考えてみてください。

           柏 久

  16.  授業については、「やま地」酪農が興味深かったです。確かに牛と草地が直接結び付いているのは理想ですが、農家にとっては免税されている配合飼料が魅力的だし、国内で作るとコストがかさみ値段をあげると、デフレーションの今日、売れなくなります。また、淡路島でのパネル写真をみても、酪農家が作る堆肥の牛の糞尿が行き場に困っているということですが、一次発酵ぐらいではなんとなく含まれている悪い影響をもつ細菌が多いような気がするし、センターでの堆肥も高くつくしで、外国に頼る気持ちはよく分かります。だから私は環境保全型の農業がしたいなら日本のデフレーション解決が先だと思います。

     パネル写真で妙に感激したのはトウモロコシがポンプで吸い上げられているものでした。今の今までコンテナに積み込まれて輸入されるものだと思っていたからです。きっと微妙につぶれて液がでてるのもあるんだろうなとも思いました。トウモロコシでビニールが作られることは初めてしりました。そのビニールは食べられるのかなぁ、きっとたべられるなら寒天みたいな味なんだろうななど、あんまり授業に関係ないことが気になるので 機会があればぜひ実物をみたいです。

     先生の授業は結構楽しかったです。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       肉牛生産に比べて酪農は、牛と草地が結びつきやすいはずなのに、日本では必ずしもそうなっていません。乾草の輸入量が急激に増大していることは、ますます状況が悪くなっていることを如実に示しています。

       経済的に言うなら、円高が飼料の輸入を有利なものとしたところがあります。そして、日本の畜産農家が飼料を輸入に頼る構造になった結果、大量の家畜から排泄される糞尿は行き場を失って、環境問題を引き起こしているのです。家畜排泄物法をつくって堆肥の生産を促しても、それを使う場所がないのでは意味がありません。

       トウモロコシから作られたビニールは、石油由来のビニールと、外見上、区別が付きません。また食べられるものでもありません。夢を壊すことになって申し訳ありません。

       淡路島の酪農(農業)は、見ようと思えば簡単に見ることができると思いますが、「やま地」酪農やトウモロコシの輸入現場は、見る機会をつくることは難しいと思います。だからこそスライドをお見せした次第です。

           柏 久

  17.  僕も農業は基本的に自然に近い状態にあるべきだと考えていますが、人口の割に農業に従事している人が少ない状況ではやはり難しいと思う。(それを解決するのが今からの課題?)実際「やま地」酪農も多くすることになれば土地は足りるんですか?

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       マルサスの人口論に象徴されるように19世紀初め、それまでの農業形態では、産業革命とともに増大する人口に食糧を十分に供給することができなくなる、と心配されました。リービッヒ農学の出現などが、この心配を杞憂にしました。しかしこの近代農学の出現により、農業が自然の呪縛から解き放たれたかのような錯覚に陥ってしまったのです。農業は自然生態系との調和なくして存続は不可能です。「やま地」酪農は自然生態系と調和した農業の一つです。日本は、国土の8割が山地です。その1割を草地利用するとしても、相当な畜産拡大になると思います。

           柏 久

  18.  農業、牧畜と社会構造のつながりを感じました。

    先生の学生時代さかんだったという社会構造の議論は、『構造主義』のことでしょうか?私が高校の時、学校で概論だけ学びました。それで興味をもって自分でも新書を一冊買って読みました。

    あまり、深くは理解していないのですが、やはり、人間が行動する上でその社会体制にも支配を受けていると思います。だから、農業の上でも、対策を講じるにはまずその構造、つまり社会体制の枠組みを作りかえる必要性を実感しました。
    だから、先生のお話の中にあった配合飼料の無関税にはすごく問題を感じました。

    農業が環境にやさしいとは、私は思えないのです。それは、確かに現在の農地が工場にかわってしまうよりは、農地の方がいいです。しかし、自然に人間の手を加えている以上環境を破壊しているという他ありません。人間が生きていく以上環境を破壊するのは仕方がない(自然からすれば人間のエゴでしょうが)ことなので、そこでいかに環境に寄り添うかが重要だと思うのです。

    だから「やま地」酪農やそれに類似した農業形態が確立されることの重要性を実感しました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       私の学生時代、大学紛争がもっともさかんな時期で、大学は1年近く授業がありませんでした。最近きれいになった時計台は学生に占拠され荒れていました。しかしあの時代、大学生には、社会を変革していこうというエネルギーが満ちあふれていたように思います。いまの大学生は社会変革をあきらめているように見えるのは、私だけでしょうか。なお、構造主義がブームになったのは、もう少し後だったと思います。

       配合飼料の問題だけでなく、また農業関連のことだけでなく、社会には納得できないことがたくさんあります。理系の学生であっても社会の問題に深い関心を寄せ、よりよい社会の実現のために努力していく必要があるはずです。

      「農業が環境にやさしいとは、私は思えないのです。それは、確かに現在の農地が工場にかわってしまうよりは、農地の方がいいです。しかし、自然に人間の手を加えている以上環境を破壊しているという他ありません。人間が生きていく以上環境を破壊するのは仕方がない(自然からすれば人間のエゴでしょうが)ことなので、そこでいかに環境に寄り添うかが重要だと思うのです。」

       その通りだと思います。農業が環境にやさしいというのは、工業に比べて、というだけです。農業もまた、生態系との調和を重視していかなければ、環境破壊の張本人となってしまいます。今日の日本農業にとって、環境保全型農業の拡大は、大きな課題です。

           柏 久

  19.  現象だけでなく、構造にまで目を向けないと根本的な解決にはいたらないという考え方にとても共感しました。環境問題だけでなく、他の様々な問題についても構造にまで目を向ける努力をしていきたいと思います。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       現象の背後にある構造に目を向けることの重要性に気づいていただいたとするなら、私は講義をした甲斐があります。その姿勢で大学生活を送られるなら、きっと有意義な大学生活を送ることができると思います。頑張って下さい。

           柏 久

  20. 感想
     斎藤牧場では牛が勝手に道をつくるなんてすごいなあと思いました。日本は食糧自給率が低くてダメだなあと思いました。馬鹿丸出しの感想だなあと思いました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       メール、ありがとうございました。京大生は入学したときが一番賢く、バカになって卒業していく、ということをよく聞きます。自由の校風がなせる業なのでしょうが、自由な校風は、主体的な努力によって大きな成果を生み出す可能性をも秘めています。有意義な大学生活を送って下さい。

           柏 久

  21.  現在の農業について、この前NHKの番組で非常に興味深く思ったのが不耕起農法が行われている地域があるという事だ。
    その農法の方が、地面が固いので根は強く、大きく張り、稲もより多く実るのだそうだ。
    また、今日の授業であったように、水田をコンクリートで区切るのは生態系を壊してしまうので反対である。
    確かに、便利な面もあるが、いかに生態系を壊さずに自然を保ちながら農業をするかが大切だと思った。

      **様へ  メール、ありがとうございました。

       あなたがテレビで見られた不耕起農法は、おそらく自然農法という範疇のものだと思います。自然農法実践家に福岡正信さんという有名な方がおられますが、彼によれば「やま地」酪農はまさに自然農法そのものだそうです。畦畔をコンクリートで固めるのは、自然農法とは対極のもので、環境という視点からすれば、どのように理由付けしようと賛同できないと言えます。

           柏 久

  22.  テレビで乳牛の放牧をよく見るが、その大部分は一年中行なわれているのではなく、一時的なものであると知ってショックを受けた。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       先入観というものは恐ろしいものです。情報化社会においては、われわれはイメージを植えつけられて商品を買わされていることが多くあります。賢い消費者になることも、社会をよくしていく一つの道筋かもしれません。

           柏 久

  23.  日本の酪農は飼料と糞尿の物質循環が成り立ってないことを知った。また、コンクリートで埋め立てられたたんぼがあることに驚いた。この講義をもとに、農業の構造政策について調べてみたいと思った。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       いまやボーダーレスの時代。工学部の学生も農業に関心を持ち、農学部の学生も工業に関心を持っていかなければならないと思います。専門的に勉強する必要はないと思いますが、他の分野にも絶えず興味を持つようにして下さい。

           柏 久

  24.  今日の講義は、自分としても考えさせられることが多くありました。まず、やま地酪農という形式の酪農には大きな可能性があると思います。講義の中にもあったように、日本の食料時給率は非常に低いので、それを改善できること、また、自然循環を利用した環境保全型農業であること等がやはり強みになってくると思います。

     一方で、日本の社会の構造が今だに環境よりも経済を重視し、長期的な視点を持てていないことは残念に感じました。保守的で新たな取組に対応し切れていないところが日本の悪いところでしょうか。ダム建設等、数十年前の計画に従ってしまう行動の遅さにも日本の保守的なところが現れていると思います。環境に配慮することが、最大の利益につながるような体制に日本が変わっていくことが、今後は要求されていく気がしました。

     最後になりますが、幾つか質問があります。牧草地からの土壌の流失はないと言っておられましたが、森林と比べるとどの程度のものなのでしょうか?また、家畜の糞尿が河川に流入してしまうことはないのでしょうか?何はともあれ、わかりやすい講義をありがとうございました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       後期の環境形成基礎論でお話ししますが、食料自給率が下がった最大の理由は、日本人の食生活の変化です。畜産物消費の増大に飼料の輸入で対応したことが穀物自給率を下げたのです。ですから、草地畜産の拡大により飼料の自給率を上げれば、食料自給率の上昇につながります。

       重要なのは環境だけで経済は重要ではない、とは思いませんが、日本人、とりわけ日本の政治家に長期的ビジョンがないことは非常に大きな問題だと思います。しかも大義を持たず、自らの利益に汲々としている。これでは日本はどんどん悪くなっていきます。国民一人一人が意識を高め、力を合わせてよりよい社会の実現のために努力することが重要だと思います。

       シバ草地と森林と保水力の比較、土壌流失の抑止力の比較などに関しては、私はその専門家ではありませんので正確なことを言うことができません。また、家畜糞尿の河川への流入に関しては、家畜頭数と草地のバランスがとれていれば問題はありません。山地の利用に関しては、草地か林地かというような問題ではなく、林間放牧や混牧林といったことを含め、土地利用のバランスの重要であり、関係専門家の叡智を集めてどのような土地利用がもっとも環境によいかを考えていく必要があると思います。

           柏 久

  25. [感想]
     農業は緑に溢れ、いかにも自然と調和しているようなイメージがあり、その裏の諸々の問題については全く知らなかった。

     飼料の大量輸入問題についての解決策を考えてみると、自分の頭では日本で作るという案しか浮かばない。しかしこんな狭い土地で飼料の自給なんか試みたら飼料不足になるのは目に見えている。

    糞尿の廃棄についてだがそういったものをエネルギー資源として利用する試みもあると聞いたことがある。エネルギー源の少ない日本であるのだから悪い話ではないと思う。

    技術によって起こしてしまった環境問題なんだから技術で改善していこうというのが自分の見解です。

      **様へ  メール、ありがとうございました。

       「 技術によって起こしてしまった環境問題なんだから技術で改善していこうというのが自分の見解です」。

       きわめて工学的発想ですね。もしそれで問題が解決するのであれば、悪くありません。しかし環境問題は、それでは解決できないのではないかという不安に基づいているように思います。家畜糞尿を使って発電という試みは、確かに緒についています。しかしコスト面など、まだ問題提起の段階を出ていません。また飼料穀物を運んできたタンカーで家畜糞尿をアメリカに運ぶという発想を工学部の先生から聞いたことがあります。これまたきわめて工学的発想ですが、その実現性はほぼありません。

       技術が不可逆的環境悪化をもたらしているのではないか、ということをもう少し考えてみる必要があるのではないでしょうか。

           柏 久

  26.  環境問題を考える上で、現象面からのアプローチだけでなく、構造的問題の解決も同時に図ることが大事だ、という考えは僕も同じです。

     環境問題に限らず、あらゆる場面その場しのぎの解決策をとるべきか、もっと抜本的な解決策をとるべきか、という二元的な考え方が多いように思います。「どちらか一方」ではなく、「どちらも同時に」というのがベストなんでしょうね。

    大変でしょうから、お返事は別にいいですよ。(笑)

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       「環境問題に限らず、あらゆる場面その場しのぎの解決策をとるべきか、もっと抜本的な解決策をとるべきか、という二元的な考え方が多いように思います。「どちらか一方」ではなく、「どちらも同時に」というのがベストなんでしょうね。」

       その通りだと思います。ただ現在の日本を見ていると、あまりにも長期的展望がなく、抜本的な問題解決のアプローチがされないでいる、と言わざるを得ません。目先の問題をその場しのぎで解決するだけでは、気づいたときにはどうしようもない状態になっている、ということになります。いまの日本は、すでにそのような状態になっているのかもしれません。

      「 大変でしょうから、お返事は別にいいですよ。(笑)」

       お気遣いありがとうございます。後期の環境形成基礎論で、どこまで返事を書けるかはわかりませんが、前期はリレー講義で1回のみですので、約250通すべてに時間をかけて返事を書くつもりです。(このメールは26通目で先は長く、いつまでかかるかはわかりませんが … )

           柏 久

  27. 感想:僕は高校3年生の時に地理の授業で、輸入飼料に翻弄される 日本の畜産農家の姿を描いたテレビを見て深い衝撃を受けました。 とうもろこしをできるだけ高く売ろうとして売り惜しみしている外国 の農家、農家からとうもろこしを買い込み価格を安定させようとする 穀物メジャー、日本の畜産農家に価格の安定したとうもろこしを供給 しようと穀物メジャーにかけあう丸紅の職員が織り成す苛酷な取引の 世界がありました。

       なんと立場の弱い日本の畜産農家よ!

    という言葉がただただ浮かぶばかりでした。同時になぜこんなにも 外国の飼料にばかり頼らざるをえなくなったのだろうか、という疑問を 持ちました。そのため、今回の授業で国の飼料政策にその一因があった ということを知ることができ、僕にとっても有意義な授業でした。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

        高校の授業であなたにこれだけの強力な印象を残す授業があることに驚いています。ただ、それがテレビによってもたらされたものであることが気にかかりますが、しかしそのようなテレビを選択された先生は、やはり見識が高いのだと思います。私にトウモロコシの輸入現場を見せてくれた同級生は、まさに丸紅で飼料や砂糖の輸入に携わってきた男であり、あなたの見られたテレビと重なっていますね。

       戦後における日本人の食生活の変化を悪いと断定することは難しく、となると国民に畜産物を供給する手段は、肉や卵といった完成品を輸入するか、飼料を輸入するかという方法があったと思います。完成品には高い国境障壁を設け、飼料には障壁を設けず、むしろ輸入を奨励した政策は、あまりに歪んだものだったと言わざるを得ません。その背景には、政策当局の生産者に偏った政策、縦割りの官僚制の問題などが様々な問題がからんでいます。

       社会科学は、一つの現象からどんどん問題を深く掘り下げて、それがどのような構造的問題から発していくかを明らかにして行かなくては、真実に近づくことができません。そこにこの学問の醍醐味があるともいえると思います。

           柏 久

  28. 今日の授業の感想を書きます。

    まず、「やま地」酪農というものに興味をそそられました。通常の放牧とは違い、物質の循環がうまく行われていることが、自然のサイクルに調和していると思いました。普通は環境にやさしいとなると、コスト面での負担というイメージがあるのですが、経済的にも通常の酪農よりも優れているということはすばらしいと思います。

    また、飼料用穀物であるとうもろこしの輸入の現状をスライドで見たのも印象的でした。人間の技術でもって問題をねじ伏せて解決しているようで、われわれの生活がそういった不自然なシステムの上で成り立っているということは一考に値することと思います。これは田をコンクリートで固めてしまうことにもつながる気がします。人間の知恵を、もっと自然に合うよな技術の活用に向けていくべきだと思いました。

      **様へ  メール、ありがとうございました。

      「人間の知恵を、もっと自然に合うよな技術の活用に向けていくべきだと思いました。 」

       まったくその通りだと思います。書かれている感想もきわめて的確に問題点が指摘されており、あなたの理解能力の高さを感じます。

       講義の時にもいいましたが、私は、20年以上前に「やま地」酪農を題材に「もっと自然に合うような技術の活用に向けていくべきだ」ということを主張しましたが、誰も相手にしてくれませんでした。社会の価値観は、時代とともに変化します。多くの人は付和雷同しているだけですが、社会のリーダーとなっていく人がそれではダメなことは言うまでもありません。大学4年間、自らの確固とした価値観を確立する努力をしてください。

           柏 久

  29.  今日の授業で先生は「リレー講義は意味がないと思う」とおっしゃっていたが、私はそうは思はない。この講義を受講している学生の多くは、地球環境問題の解決について学びたいと思っているはずだし、将来、地球環境問題について研究したいと思っているはずだ。しかし、地球環境問題のアプローチには様々な方法があるため、どのような分野からアプローチしようか迷っている学生も多いと思う。そのような学生にとって、この講義のように、様々な分野の先生が様々なアプローチ方法を教えてくれるリレー講義は、将来の自分の専攻を考える上で大変意義があると思う。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       お説ごもっともだと思います。結局、リレー講義というのは顔見世興行であり、予告編を集めたものといえるかもしれません。専門科学を前提とする限り、そうなります。したがって、教育という点では、必ずしも効果の高いものだとはいえませんが、どのような研究があるのかを知ってもらうためには、意義があります。私が1回だけの講義を引き受けたのも、このためです。

       しかし実践を前提とすれば、少し話は違ってくるように思います。地球環境学舎(教育部)は、実務家養成をうたっており、実務家にとっては浅くても幅広い専門知識が必要になります。幅広い専門知識となれば、ひとりで教育することができませんので、リレー講義も意味を持ってきます。ただし、その場合、講義担当者がその点をよく理解していることが、教育を効果あるものにするための前提条件だと思います。

       一般教育科目をどのように理解するかで変わってくると思いますが、この2つの点では、私もリレー講義を否定しているわけではありません。ただし、私の教育観からすれば、ひとりの人がその人間性と思想をかけて教育するのがもっとも望ましい教育方法だと言えます。

           柏 久

  30.  とうもろこしの輸入の写真には驚きました。その量もさることながら、飼料用のとうもろこしには関税がかからないということをはじめて知りました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       工学の専門家になる場合でも、幅広い知識、社会の構造にまで思いをはせる思考方法は重要だと思います。大学生活の中で、幅広い教養を身につけてください。

           柏 久

  31.  今、学問の細分化は止めることのできないものだと思います。僕は地球工学科であと数年もすると専門を勉強して一部分には詳しくなると思います。しかし今日の講義を聞いてそういう知識はあまり役に立たないと思いました。人間を含めた地球にあるものすべてが地球であり、すべてのものがなにかしらの形でつながっていると思いました。その形を人間が完全に理解するのは不可能だと思いました。

     だから人間は今の地球環境の破壊のスピードをできるだけ遅くするように努力すべきであると思います。そうすればもしかしたら地球が今のおかしな生態系のバランスを立て直してくれるかもしれません。この努力というのは例えば洗剤の量を減らすなど明らかに地球環境に悪く、また個人の努力でなんとかできるものをいいます。ちりも積もれば山となるのように小さな努力から始めるべきです。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

      「学問の細分化は止めることのできないものだと思います。」

       その通りです。しかし、「そういう知識はあまり役に立たないと思いました。」というのは、必ずしも正しくないと思います。科学というものは専門分化によって、真理に近づくことができるものだと思います。問題は、専門分化した科学をいかにして総合するかです。ただこの総合化は、それほど簡単なものではありません。

      「人間を含めた地球にあるものすべてが地球であり、すべてのものがなにかしらの形でつながっていると思いました。その形を人間が完全に理解するのは不可能だと思いました。」

       これもその通りだと思います。しかし人間が人間である限り、よりよく理解しようと努力せざるを得ません。また「人間は今の地球環境の破壊のスピードをできるだけ遅くするように努力すべき」であることも、間違いありません。そのためには、人間はすべての叡智を動員しなければなりません。その際、専門科学も例外ではありません。

       それでは、われわれはどうすべきなのか。これまたあなたの言われるように、個人がやれるところからやる、しかないのです。意識の高まりの輪を広げれば、「ちりも積もれば山とな」って、「もしかしたら地球が今のおかしな生態系のバランスを立て直してくれるかもしれません」。

       それぞれがそれぞれの任務に邁進することによって、素晴らしい地球を取り戻しましょう。

           柏 久

  32.  今回の講義で、環境問題について考える際にも、多角な知識が必要だということを感じた。環境問題から自給率といった農業に関する分野、更には貿易にまで。今日の講義の内容自体も勿論面白かったし、淡路島という身近な場所でも物質循環のバランスが乱れていることに驚きを感じたが、やはり環境問題を考える際にいろんな側面から考える必要があると痛感した。 いい勉強になりました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       社会的事象は無限の要素が絡み合って成り立っています。われわれをその部分を切り取って認識するのですが、その際、一面的な理解では、間違った認識をしてしまいます。幅広い見識を持てるよう、他の専門にも好奇心を向けて、しっかりと勉強してください。

           柏 久

  33.  今日の授業はとてもおもしろく、興味深く聞くことができました。

     実際本当に、普段の授業では聞かせてくれないような、現代のコスト削減、合理化に基づく産業の現状は大変悪い状況にあるとゆうことがよく分かりました。

     乳牛の畜産での飼料と糞尿の問題にしろ、関税がかかったりかからなかったりする意味不明な輸入ルートにしろ、淡路島におけるいろいろな環境の問題にしろ、普通に考えてなんでこんなことが行われているのか、小学生でも疑問に思うようなことが平然と行われている現状にはとてもおどろいたし、それを進めていて、解決策を進めているのかどうか分からないけど、この現状を作り出した日本の官僚には嫌悪さえ感じました。

     社会の一部になると、こんなほんとに誰でもおかしいと思うような状況に口を閉ざさざるを得なくなってしまうのでしょうか。

     僕も来年くらいからいわゆる官僚なんかにつながる国家公務員試験第1種の勉強をしてみようかなと思っていただけに考えさせられました。

     おかしいとおもいつつもそれに口出しできない、という状況がなぜ生まれているのか、どこかに利権が発生しているからなのか、国際的な圧力みたいなのもあるのかもしれませんが、そこらへんについても知りたいなと思いました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       社会には、理解不能なことがたくさんあります。そしてそれを掘り下げていくと、既得権益というものにぶつかることが多いものです。日本社会は政官業の癒着構造が重要な柱となっています。農業においてもしかり、というよりそれが非常に典型的な形で成立しています。私はそれを官僚主導型農業構造と呼んでいます。もし興味を持って下さるなら、後期の「環境形成基礎論」を履修してください。

       「誰でもおかしいと思うような状況に口を閉ざさざるを得なくなってしまう」ということが典型的に現れる社会が日本社会です。「むら」社会が社会の基本になっているわが国では、村八分を恐れて「沈黙は金」という姿勢が蔓延してしまいます。そうした社会構造を変えていくことも、日本がよくなっていくために必要なことだと思います。

       日本の社会においては、官僚になるのがもっとも社会を動かす近道かもしれません。私の影響を受けて、社会変革、官僚制の変革を志して官僚になった卒業生がたくさんいますが、管理職になったとたんに組織防衛に回ってしまいます。志を貫ける人が出てくることを待っています。

       官僚になることは悪くありません。初志を貫ける官僚を目指して下さい。

           柏 久

  34. まず質問です。
    1、傾斜地で放牧されたウシはどうやって搾乳してるんですか。
    2、放牧は収益/利用土地面積の値が相対的に小さいと思うのですが、多くの農家がこの様式をとると空間的な限界がきませんか。
    3、体制批判をすると脅迫電話とかかかってきませんか?

    次に感想です。
    先生最高!非御用学者だからです。将来的には先生のような学者が増えてもっとまともな世の中になることを願っています。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

      1. 「やま地」酪農の搾乳は、朝夕2回、搾乳場で行います。牛(ホルスタイン)は群行動をします(私が研究していた当時、ホルスタインが群行動をするということすら、日本の畜産学会では知られていませんでした)。私が研修を受けていた牧場では、牧場主が呼ぶとリーダーを先頭に牛は搾乳場に降りてきて、搾乳する順番を待ちます。まさに人間と牛との共生ですね。

      2. これを粗放的といいます。粗放的農業には広い土地が必要なことは間違いありません。しかし山間地域には未利用な土地が多く残されています。また輸入材に押されて、放置され荒れている林地もたくさんあります。林地と草地をうまくバランスさせた土地利用計画が重要になってきます。それに、農業に意欲を示す農家がどんどん減っているのですから、空間的限界がくるとは思えません。

      3. 残念ながら、私は、脅迫電話がかかってくるほど、大物ではありません。しかし、脅迫怪文書が、郵送されてきたことがあります。

       私の学生時代、私はノンポリバカ学生でしたが、大学には反体制学者がたくさんいました。彼らの多くが今や守旧派、保守反動となっているのを見ると悲しくなってしまいます。

           柏 久

  35.  これまで環境問題というと工業だとか政策だとかの視点からしか考えたことがなかったので、農業や酪農という視点から考えるということは僕にとっては少し新鮮なことであり、少し興味を引かれました。また同時にそういった視点も非常に重要なものであるということに気づかされました。

     トウモロコシのことにしても淡路島の牛の話にしても先生は政策や方法を批判していらっしゃいましたが、やはり環境問題等が絡んだ話はああいった人たちには簡単なことではなく専門家の意見が必要不可欠な問題ではないかという印象を受けました。またそのためにも農業や酪農等が自然に与える影響というものを皆が知っておく必要があるのではないかと思います。

     最後に、先生はリレー講義という形式について疑問があるといったようなことを少しおっしゃってましたが、地球環境学というテーマの場合このようにいろいろな視点から見た環境学の話を聞けることは非常にプラスになることではないかと思います。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       環境問題は、地球環境に限定しても、農業と非常に深い関わりを持っています。これを機会に、農業に目を向けてもらえれば、私としては非常に嬉しく思います。

       私は専門家の役割を否定していません。他の方への返信メールで、その点について書きましたので、HPのその箇所を参考にしていただければ幸いです。ただ、あなたも書かれているように、皆が意識をためていくことがもっとも重要だと思います。

       リレー講義についても、他の方に私の考え方を書いて返信しました。それを参考にしてください。

           柏 久

  36.  私は今まで、酪農・農業といった活動が、非常に自然とふれあい向き合ったものであると思ってきた。

     しかし今回の講義を聴いて、そういった業界で行われている作業の中に 本来の生態ではありえない、またあるべきでない現象を起こさせる行為が多く行われていることを知った。

     これからは自分の中にあった意識を一度取り去り、食という自分の生活に密着した業界の現状を正しく把握して考えていきたい。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       高校までの授業は、正しいと考えられている考え方が、正しいことを前提に教えられてきたはずです。しかし大学では、正しいと思われていることを疑ってかかるところから始まるような気がします。少なくとも私はそのように考えながら研究・教育を行ってきました。

       今日、日本社会で食の安全性神話が次々と崩壊してきました。雪印の事件が起こったとき、国民はまさかこんなことが起こるとは、と思いましたが、業界関係者は、雪印はミスったものだ、としか感じていなかったようです。当時、私はそのような話を何度も聞きました。

       将来、国のリーダーとなっていく人たちは(私は皆さんがそうなる人だと思っている)、与えられたものをそのまま受け取るのではなく、主体的な理解にもとづき、主体的に社会や環境を形成していくための教養を身につけるための努力していくことを望んでいます。

           柏 久

  37.  たしかに、「やま地」酪農は経済的に有利であるという良い点があるが、 広い土地が必要であり、また、草の育成に時間がかかるなどの欠点も多いと思う。 また、取れる牛乳の量も穀物飼料を与えるときより遥かに少なく損に思えるから、 あまり普及しないのだろう。

     また、別のことに目を向けると、堆肥センターなどの施設や田のあぜをコンクリートで固めることはかなり無駄であり、こんなことに税金を使うべきでない。
    もっと他に使うことがあるはずだ。生態系にもっと配慮すべきだと思う。

     また、家畜排泄物の処理方法を考えるべきだと思う。そうしなければ、富栄養化だけにとどまらず、さまざまなことが起こるであろう。とはいえ、金がかかることは確実であり、対策を立てるのに、今までは消極的だったかもしれないが、税金は無駄な公共事業などにかけるよりもこのような環境対策にかけるべきだと思う。

     最後に一つ質問であるが、コーンの上に載っていたマシンはどこからもってきて、 どのようにメンテナンスをするのか?
    あれが乗っているとコーンが傷ついたり、汚れたりするような気するのですが・・・

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       まず、質問に答えることからはじめます。あのブルドーザーは埠頭におかれています。5万トン級の輸送船からトウモロコシはサイロに詰め込まれるだけでなく、区分けして小さな船に積み替えられ、畜産地帯に運ばれることも多いからです。

       トウモロコシは生ではなく乾燥されたものです。そして飼料として用いるのであり、大勢に影響ありません。

       さて感想部分に関しては、私は現状を是認して対策をたてるのではなく、社会システム、さらにはわれわれの生活のあり方まで変える方向で大きな変革を成し遂げていかなければ、地球環境問題を解決できないと考えています。この歳になり青臭いかもしれませんが、皆さんは若いのです。それくらいの気概を持って欲しいと思います。

           柏 久

  38.  物質循環という観点から、今日日本で広く行われている酪農よりもやまち酪農の方が優れているということは理解できた気がする。やまち酪農で、山に牛が作った道筋はすごかった。

     「大学の4年間は批判的な精神を持って社会に出てからその一部でも改善できれば社会は良くなる。」という教授の言葉が今日の講義で一番印象的だった。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       どのような社会であっても、矛盾がないなどということはあり得ません。いくら努力しても矛盾はなくならないかもしれません。しかし何とかして矛盾をなくしていこうという努力の中にしかユートピアは生まれないのではないでしょうか。人間は死すべき存在です。だからといって死を座して待つべきでしょうか。よりよい社会、よりよい環境を求めて努力しましょう。

           柏 久

  39.  確かに農業においても環境の事を考えていかなければいけないと思う。何事においても利益や効率だけを重視すれば何らかの形で損失がでると思うからだ。農家の人にしてみれば死活問題かもしれないけど環境問題は決して無視する事はできないので国が保護するなどして非効率的でも環境にやさしい農業を目指さなければいけないと思う。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       環境は与えられるものではなく、作り出していくものだと私は考えています。国にまかせて作ってもらうものではなく、われわれが主体的に作っていかなければならないのではないでしょうか。そのためには意識の高まりを広げていかなければなりません。

           柏 久

  40.  先生が授業の最初に見せて下さった写真を見て、私はトウモロコシだと分かりました。何回か目にする機会があったからです。

     日本の環境構造、食料自給率の問題を考えるのに、(トウモロコシ等の)飼料をその観点として据え、様々な構造上の問題が浮き彫りにされるのを見て驚くと同時にひどい危機感を感じました。

     普段日常生活を送る上で、僕たちが意識しない所で問題が起こり、進展する。以前から、諸問題に対する国の対応(特に、社会的ですが三セク問題等)について、「このままで本当に大丈夫かな」との疑念を抱くことが多々あります。今回して下さった講義でまた新たに(環境)面での具体的問題を教わることができました。

     僕たちが社会に出て、現役として担っていく危険を、主体的に・構造的に理解し、対応しなければならないと思いました。そして、そのためには様々な人の考えや意見をよく聞くことから始めなければならないとおもいます。また、それができる環境作りも大切かと思います。

      **様へ  メール、ありがとうございました。

       最初の写真を見て、トウモロコシとわかるというのは、かなりすごいことだと思います。1枚の写真の裏に大きな構造的問題が潜んでいる、これと同じ事は無数にあるでしょう。

       1枚の写真を見て、その奥底にある問題まで見抜く力を養う、そのための勉強が、大学においてもっとも重要なものだと、私は思っています。その意味で、「主体的に・構造的に理解し、対応しなければならない」というあなたの記述は非常に大切です。また「様々な人の考えや意見をよく聞くことから始めなければならないとおもいます」というのも、まったくその通りです。

       そして大学もまた、学生さんの期待に応えられるよう変わっていかねければならない、と私は考えています。

           柏 久

  41.  出席しました。このアドレスに送ればいいんですよね?ちょっと不安です。

     先生がおっしゃっていた「構造的問題」はとても重要だと思います。環境保全が農業でできる、というのはいまいち納得できないのですが、現在の日本の農業を考えると構造を根本的に変えなければこのまま衰退していってしまう気がします。

     物質循環がうまく行われているといわれている(先生によるとですが・・)淡路島の場合でも明らかに問題が生じているし、さらに悪化していくかもしれません。先生は原因を政府の農業政策にあるとおっしゃっていました。私もそう思います。(でも何とか日本国内で牛を育てようとしたことは評価してもいいのでは・・・結局それが大きな問題へとつながっているのですが)やま地酪農は物質循環が適切に行われる優れた方法だと思いますが、人々にその有効性を示し農家に実践してもらうには、お金と時間がかかりますよね?政府が政策として行ってくれる可能性はあるのでしょうか ?なかなか厳しい気がします。

     最後につまらない質問ですが、やま地酪農の成功例として挙げていた高知県(ですか?)の場合はどうやってやま地酪農へシフトできたのですか?

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       食料環境経済学科といえば、浅野先生や私の後輩ですね。

      「現在の日本の農業を考えると構造を根本的に変えなければこのまま衰退していってしまう気がします。」

       まさにその通りです。私にいわせれば、すでに遅きに失しています。しかし人間にとって食べることはなくならないのですから、状況次第で復活する可能性は残されています。日本の農業構造をどのように変えていけばよいのか、4年間でじっくりと探究してください(ただし学科の教育が期待に応えてくれるかどうかは何とも言えません。もちろん反面教師ということもありますが … )。

      「何とか日本国内で牛を育てようとしたことは評価してもいいのでは … 」

       私は、日本に畜産が育たない方がよかった、などとは思っていません。要はバランスの問題です。国民に畜産物を供給すため、どれくらい生産し、どれくらい輸入するか。これは国土条件を勘案して決めるべきことでした。ところが、畜産物をすべて国内生産でまかなおうという政策決定をしました。それが飼料穀物の大量輸入をもたらしたのです。このことは政策当局の見識のなさを示しています。

       「やま地」酪農の普及可能性が厳しい、と言うあなたの見解、正しいと思います。私も一つの問題提起としてこれを持ち出しているだけです。より詳しくは、後期の環境形成基礎論でお話しします。

       政策的には、以前より「やま地」酪農は評価されるようになっているとはいえ、日本の酪農の中心に位置づけられるようなことはないと思います。

       高知県の「やま地」酪農は、ひとりの先駆者(岡崎正英)と指導者(猶原恭爾)の出会いから広がっていきました。どのような分野でもパイオニアの存在が重要となります。

           柏 久

  42. 感想:私は今まで地球環境問題に対して、国が補助金を出してこの問題に取り組むことは良いことだと思っていました。しかし、先生の講義を聞いて、はたしてそれが本当に良いことだろうかと疑問視したり、批判的な面で見るということもあるということを学びました。実際に地球環境問題に取り組むにはどうすべきかを改めて考えさせられました。

    質問:どうしてトウモロコシに関税がかけられなくなる抜け道があるのかいまいちわかりませんでした。教えてください。

    コメント:講義の内容とはあまり関係がないかもしれませんが、山の傾斜に牛道ができるなんて牛と自然の力に驚かされました。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

      「実際に地球環境問題に取り組むにはどうすべきかを改めて考えさせられました。」

         地球環境問題の解決にどう取り組むかは、非常に難しい問題です。世の中の流れに流されることは簡単ですが、それで問題が解決するとは思えません。一人一人が身の回りのやれることからやる、という以外に方法はないのかもしれませんが、その際に、表面的な取り組みだけではダメなことはいうまでもありません。物事を深く考え、行動していく習慣を身に付けてください。

       日本は貿易立国ですが、原料を輸入し、加工、付加価値を高めて輸出することによって外貨を稼いできました。したがって、トウモロコシに限らず、原料は海外に頼るものだという意識が一般的なのかもしれません。とするなら、原料となるものは少しでもやすく国内供給しなければならず、トウモロコシを飼料と使う場合には免税するという制度が出来上がったものと思われます。

           柏 久

  43.  山を切り開いて作った、傾斜の大きな草地で牛によって道がたくさん作られるということには驚かされた。自分に不利な場所においても快適に暮らしていく知恵なのだろう。

     本題だが、牛と草地との間の、酪農における物質循環が実際には輸入干し草などの利用のために崩れてしまっているということに改めて気付かされた。

     また、淡路島などの後継ぎのいない農場では、牧畜など続けていけないばかりか、農場を取り壊す費用として2000万円という高い額の出費が待っているという現実は目を覆いたくなった。

     あと多少疑問に思うのは、食品など日本の自給率の低いものが、現実問題として輸入ストップしてしまうという恐るべき事態が起こり得るのかということである。たとえば、食品ではないが、石油。日本と中東地域で亀裂が生じ、石油の輸入をとめられてしまうということになれば日本はやっていけなくなるのではないだろうか…。そう考えると恐ろしく思うのだが…。

     授業の感想としては、改めて考えさせられることが多く、いい機会になったと思う。そして、後期でお世話になることがあればよろしくお願い致します。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       人間によって飼い慣らされた牛も、未だ野生の性格をすべて失っているわけではありません。群行動をしたり、アセビなどの毒性のものを食べなかったりするのは、その証拠だと思います。そうした性格をうまく利用して、生態系を維持しながら畜産を展開すれば、物質循環が崩れることはないはずです。

       とはいえ、増大した人口に畜産物を十分に供給するには、これだけで十分なわけではなく、人間の手で耕種と畜産を結びつけていく努力も必要です。よりよい農業のあり方、食料供給のあり方を実現するためには、やはり構造改革が必要だと言えるでしょう。

       食料の輸入がストップするということは、決して起こり得ないことではありません。このことに関しては、後期の「環境形成基礎論」でお話しするつもりです。

           柏 久

  44.  「やまち酪農」にはすごく感心しました。あんな斜面で酪農が出来るとなれば、山がちな日本にもって来いの農法だと思います。しかし、これが普及しないのは、日本の構造的問題が関与しているというのは、他の問題にしても同様のように思われます。

     日本の食糧自給率が低いのは知っていましたが、政府による承認工場制度と飼料需給安定法が深く関わっているというのは驚きでした。低自給率の原因である政府が食糧安全保障論を展開するのは本当に矛盾していて腹立たしいくらいです。

    今、世界は冷戦が終わったとはいえ、いたるところで紛争が起こっていますし、今話題の朝鮮半島問題、台湾問題もあり、いつ食糧輸入がストップするか分かりません。先日のBSE、鳥インフルエンザ問題で、日本の国民も食糧自給率について真剣に考えなければならない時が来たのではないでしょうか。

     かつてECが域内自給を達成したのは、生産性の向上と保護貿易でした。しかし、それでは環境を無視した経営が行われ、効率優先の農業が行われてしまいます。結果、土壌侵食が進行したり、例えばアラル海の減少のような深刻な問題が起こってしまうと思います。これらの自給率向上策は、真に国内の構造を環境保全型に変えず、既存の構造を改良、拡張したに過ぎません。それらの農業を20世紀型と呼ぶなら、環境保全型の21世紀型農業へと革命を起こす必要があると思います。

    それには、やはりフィールド研究の果たす役割は大きいと思います。真の変革が行われる事を僕は願います。手遅れになっては遅いと思います。これからも、多くの人に環境保全型の農業を伝えて下さい。小さな流れが大きな川になるように、小さな意見が大きな意見となり、いつしか日本のみならず、世界も変われると思います。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       日本農業の将来を展望するということは、非常に重要なことだと思います。安全な食料の確保は生きていく上で不可欠ですし、また環境という点から見ても、農業と工業の産業バランスがとれていることは重要です。農業においても経済性は重要ですが、経済性だけで農業を見ることには、やはり問題があります。その意味では経済性だけで判断して、食料は輸入に頼ってもよいと考えることは間違いでしょう。

       しかし、農業の構造変革は、決して容易ではありません。それは日本の構造変革と連動しているからです。

      「小さな流れが大きな川になるように、小さな意見が大きな意見となり、いつしか日本のみならず、世界も 変われると思います。」

       その通りだと思います。われわれが意識を高め、その意識の高まりの輪を広げていくことによって、困難な構想変革も実現可能となるのだと思います。お互い頑張りましょう。

           柏 久

  45.  今回の講義で、自分が何となく疑問に感じていた日本の構造的問題についての具体的一例を知ることができて、ますますこの問題の深刻さを思い知らされた。日本の飼料政策の問題点などは手を打てば(免税システムをなくす等)時間さえかければ必ず改善されていくと思う。

     しかし、「やま地」酪農にしても、日本人口を養う量の牛は生産できないと思う。これを考えると構造的問題の深刻さがよくわかってきた。今こそ手を打つ時期だと思う。



      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       日本の構造変革は容易ではありません。何よりも政治が変わらないことには前へ進めないはずであるにもかかわらず、国民の政治不信は無関心を導いてしまっています。このあたりから変えていかなくては、日本はよくならないと思います。

       「やま地」酪農は、日本の畜産ないしは農業の構造変革への問題提起として理解すべきだと思います。

           柏 久

  46.  僕自身農学部に在籍しているということもあり、今回の講義は今まで自分の興味のあったバイオテクノロジー以外の点で農学について新たな視野にたって考えることができた。という点ですごく参考になりました。将来自分が研究していく時もやはり地球環境について考慮する必要があるのだ。と再確認できました。

     特に自分の興味をひいたのはやまち酪農についてです。僕個人の意見としては収入を求めて環境を考慮しない集約的酪農よりも収入は少し劣るけれども環境にやさしいやまち酪農を進めるべきだと思います。地球は限りある資源なのでこれを大事に使い、そして次の世代へとキチンと受け渡すことは僕たちの果たすべき義務だからです。

     実際に自分がフィールドワークに行ったとき今回の講義の内容を覚えているかどうかはわかりませんが、今日の時点では将来について考える良い機会となりました。

    PS:コンピューターを使っての初めてのレポートです。短くても疲れました。これから慣れていくしかないですね(笑)

      **様へ  メール、ありがとうございました。

       近年、バイオテクノロジーの進展により農学が注目されています。地球環境問題に関しても、バイオテクノロージーは大きな期待が寄せられています。90億を越すと思われる人口、食生活が高度化するであろうという予想の下で、飢餓か環境破壊かという未来を変えられるのは、バイオテクノロジーしかないかもしれません。自らの道で頑張って下さい。

      「地球は限りある資源なので これを大事に使い、そして次の世代へとキチンと受け渡すことは僕たちの果たすべき義務だからです。」

       その通りですね。そのために何ができるのかを、しっかりと考えていきましょう。

      「PS:コンピューターを使っての初めてのレポートです。短くても疲れました。これから慣れていくしかないですね(笑)」

       これからの時代、コンピュータが使えずには生きていけません。実際、手で字を書くより、コンピュータに打ち込む方が何倍か早く書けるものです。しかも手で書いたものは修正が難しいですが、コンピュータ入力なら簡単です。頑張ってコンピュータに習熟してください。

           柏 久

  47.  トウモロコシのビニールはとても地球に優しいと思うので、どんどん普及していって欲しい。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       「トウモロコシのビニールはとても地球に優しいと思うので、どんどん普及していって欲しい」。その通りですね。こういった技術開発のために貢献できるよう、頑張って勉強してください。

           柏 久

  48.  僕は農学部の食料環境経済学科です。

     今日の講義を聞いて、「環境問題は現象面での問題解決だけでは不十分で、本当に大事なのは現象の背後にある構造的問題の解決である」と先生が言われたことがとても印象に残りました。

     僕は日本の食糧自給率が低いことに問題意識を感じていて、日本では畜産用の飼料のとうもろこしのすべてを輸入に依存しているということを知識として知っていましたが、その背後に日本の飼料政策の構造的問題があるということは講義を受けるまで知りませんでした。日本の食糧問題の解決のためには現在の構造の改革が必要不可欠なのですね。

     草地酪農はとても良い物質循環型農業の形だと思いますが、生乳生産のための近郊での酪農形態としては無理があると思います。僕は両祖父母が農家なのでかなり農業に近い立場にいます(ゴールデンウイークは田植えに行ってました)、農業はたぶんかなりつらい部類にはいる労働だと思いますがそのわりにはもうけが少ない職業だと思います。農家のもうけがもう少し増えてもいいんじゃないかと思うこのごろです、消費者が買う価格のたった17.5%が農家の取り分だというのはあれだけきつい仕事に見合ってないような気がします。僕は農業政策において改革をするとともに、農家がまっとうな利益を出せるような流通体系を構築することが大切だと思います。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

      「日本の食糧問題の解決のためには現在の構造の改革が必要不可欠なのですね。」

       その通りです。しかも構造の改革が必要なのは、農業という領域だけのことではありません。日本の社会構造そのもの改革が必要なのです。さらに私が主張したいことは、日本の社会構造は、「むら」社会構造と呼べるものであり、それが日本の農村、とりわけ稲作農業の「むら」に由来しているということです。このような話は、後期に行う環境形成基礎論でお話ししたいと思っています。

       草地酪農が都市近郊地域で無理なことはいうまでもありません。しかし日本における酪農が、都市近郊の搾乳業から始まったことを考えると、都市酪農や、平場地域での酪農を否定することはできません。ここでの物質循環をどのように保つかについても考えていかなければならないことです。

       最近はIターンが注目されていますが、農業は決して楽な仕事ではありません。今後、農業を担う主体が農家でなければならないのかについては議論の余地のあるところですが、いずれにしろ農産物に対して正当な対価が付けられることは不可欠です。また野菜などに関しては、流通経費が非常に大きいことも間違いありません。現在のような市場流通システムをとっている限り、この状態を改善していくことは難しいでしょう。生産者と消費者の産直など、新しいシステムが意味を持ってきそうですが、それが拡大していくには、やはり日本の社会構造全体が変わらなくてはならないように思います。

           柏 久

  49.  トウモロコシが今まで石油で作られていたグリーンハウスの原料になるとは知りませんでした。あと、「やま地」農業は非常に理想的なやり方であるということはわかりましたが、これがなかなか実行されない理由はトウモロコシに50パーセントの関税が含まれているから、で良かったのでしょうか。聞き逃してしまったのでよろしかったら教えてください。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       トウモロコシから、ビニールハウスやマルチ、レジ袋に使われるビニールやボールペンなどが作られるようになってきたことは、驚くべきことであり、環境にとって非常によいことです。しかし、その際の原料であるトウモロコシの輸入に際しては、50%の関税がかかります。他方、飼料原料として輸入されるトウモロコシは免税されるのです。いったいどのような根拠があるのでしょうね。

           柏 久

  50.  以前から日本の食糧自給率が低いことは知っていたが、半分以下だとは思わなかった。しかも輸入飼料のことなども考えると、日本の自給率などないに等しいような気がしてくる。自分達の食べるものすら他人に任せっ切りなんてよく考えれば自立していない子供と みたいだと思った。これからは人口も増えてきて外国も食糧に余裕がなくなるかもしれないし、「やま地」酪農のような、その地域で物質循環が完結している生産方法を採るべきだと思う。

     最後に、政治 の重要性を改めて感じた。

      **様へ

       メール、ありがとうございました。

       日本の食料自給率の問題、より深く考えていく必要があります。後期の環境形成論で話をしていきます。

       人間、食べなければ生きていくことはできません。確かに食べ物を人任せにしていては、自立していないといわれても仕方ありませんね … 。「最後に、政治 の重要性を改めて感じた。」その通りで、私は若い人たちが、政治に関心を持ってくれることを、心から望んでいます。

           柏 久



第1回目表紙

「地球環境学のすすめ」第4回目出席メール



作成日:2002年5月15日
改訂日:2002年5月15日
制作者:柏 久