有機分子たちを考えて日常生活を理解しよう

第1回 水と油 年光 昭夫教授 (化学研究所)

授業の特色
最小限の有機化学の基礎知識で日常生活の有機化学を理解できることを示す。例えば、炭素―水素結合と酸素―水素結合の違いを認識できれば、油と水の違いが理解できる。この手法により、知識の使いこなし方を身につけられることが、本セミナーの特色である。

 

授業の紹介
有機化学の基本(共有結合の本質は2つの原子核による2つの電子の共有である。炭素や酸素の電子の最外殻の軌道は2sと2pであり、これらの軌道は形が異なり、混成することができる。ヘリウムやネオンと同等の電子構造になると(共有している電子を含む)、その原子は安定である。)のみを用いて、日常生活の(有機)化学を理解できるよう、ゼミに参加する学生にその考え方を身につけてもらう。身近な題材(授業計画に示す)を用い、最初はこちらから考え方を提示するが、その後、発展問題については学生自らが自分の考え方を述べ、さらに学生相互での議論を行えることを期待する。

講義詳細

年度・期
2012年度・前期
開講部局名
全学共通科目
使用言語
日本語
教員/講師名
年光 昭夫

[授業体制]
第1回から第6回までは講義が中心で分子模型を用いた演習が少し加わる。 第7回と第9回は分子模型を用いた演習が中心となり、第8回と第10回以降は演習の比率が高くなる予定である。

シラバス

開講年度・開講期 2012年度 前期 授業形態 ゼミ
配当学年 1回生 曜時限 火5限
授業の概要・目的
序 本セミナーで用いる基礎知識 共有結合の本質は2つの原子核による2つの電子の共有である。炭素や酸素の電子の最外殻の軌道は2sと2pであり、これらの軌道は形が異なり、混成することができる。ヘリウムやネオンと同等の電子構造になると(共有している電子を含む)、その原子は安定である。

その後、以下のような各課題について、1課題あたり1-2週を用いて、考え方の提示、討論を行う予定である。1. 水と油 2. 水と汚れと洗剤 3. お酒と酢 4. 純米酒と吟醸酒 5. 酸化と燃焼 6. デンプンとセルロースの違い 7. オリゴ糖とダイエット 8. アミノ酸と蛋白質 9. 絹、木綿、ナイロン 10.薬とホルモン

 
授業計画と内容
第1回 序論(本講義で用いる有機化学の基礎である、電子の軌道について解説する)
第2回 水と油が混じり合わない理由を理解できるように討論する
第3回 水と混じり合わないはずの油汚れが洗剤を用いると水相に移動する理由について討論する
第4回 お酒はデンプンや糖を発酵させて作るが、さらに酸化されると酢になってしまう。これらの反応について討論する。
第5回 純米酒以外は、何故アルコールを添加するのか?吟醸酒では、何故米粒の表面を削り取った後に発酵させるのか?これらの疑問について討論する。
第6回 有機化合物が燃えるとは、一種の酸化反応であるが、炭素と炭素の結合開裂を伴うことが多い。この反応を討論する。
第7回 有機化合物の三次元の構造(立体化学)を考えることが重要であることを議論する。
第8回 デンプンとセルロースの違いは、一つの炭素の立体化学の違いである。この影響について議論する。
第9回 炭素に異なる四つのグループが結合したときの立体配置について議論する。
第10回 何故オリゴ糖がダイエットに効果があるのかについて議論する。
第11回 アミノ酸は必ず窒素原子を含むが、中にはイオウ原子も含むものもある。このようなアミノ酸が結合してできている蛋白質について考察する。
第12回 絹とナイロンは同じ結合様式を持っているが、置換基や鎖長が異なる。木綿はセルロースであり、全く違う構造である。これらの差について考察する。
第13回 薬とホルモンは有機化合物であり、人間の代謝などを調節する。医学はいつの日か有機化学で語られるべきことを指摘する。
第14回 総合討論とまとめ
教科書・参考書等
[教科書]
元素周期表、分子模型を用いるが、これらはゼミの場で貸与する。
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