生物機械計測学

現代は,規格化された工業製品だけでなく,自然界の植物,動物をも計測したり,制御・生産する時代である.本授業では,複雑で多様な自然現象および植物の挙動等に内在する法則,現象を理解すると同時に,不定形で多様な対象物を計測する装置およびその原理,構成,仕組みなどを学ぶ。これにより,自然界における工学的計測に関わる用語,知識を幅広く身に着けること,植物の成長,挙動に関連する特性およびルールが理解できること,計測装置を備えた生物機械システムの原理が理解容易となることを到達目標とする。
具体的には,太陽と自然界の色のしくみ(夕焼けはなぜ赤いか?葉はなぜ緑色か?虹のできる理由など),マシンビジョンシステムとその計測(果実の色,形状,寸法,欠陥計測),各種センシングシステム,計測装置,ならびに信号処理に関して解説すると共に画像処理演習を行う。

講義詳細

年度・期
2012年度・前期
開講部局名
農学部
使用言語
日本語
教員/講師名
近藤 直(農学研究科)

シラバス

開講年度・開講期 2012年度 前期 授業形態 講義
対象学生 地域環境工学科 3回生 曜時限 水1
教員
近藤 直 (農学研究科)

授業の概要・目的
複雑で多様な自然現象および動植物の挙動等に内在する法則,現象を理解することにより,不定形で多様な対象物を計測する装置およびその原理,構成,仕組みなどを学ぶことのできるユニークな授業である。一部,PCを用いた実習を行うことも本授業の特色である。

第1回 種々の色の表現方法(HSI,L*a*b*,色度等)を学ぶ
第2回 自然界の色の不思議を知り,その理由を考える
第3回 マシンビジョンシステムの構成要素とエネルギの流れを学ぶ
第4回 照明の種類と特徴を学ぶ
第5回 種々の電磁波による農産物の画像の特徴を知る
第6回 植物の分光反射特性を学ぶ
第7回 土壌,食肉,昆虫の分光反射特性を学ぶ
第8回 画像処理ソフトを用いて,農産物の色の計測方法を学ぶ
第9回 画像処理ソフトを用いて,農産物の寸法の計測方法を学ぶ
第10回 画像処理ソフトを用いて,農産物の形状の計測方法を学ぶ
第11回 画像処理ソフトを用いて,農産物の欠陥の計測方法を学ぶ
第12回 果菜類の葉序の規則性ならびに自然界におけるフラクタルの形状を有する対象について考察する
第13回 人間の目,昆虫の目,機械の目を比較し,その特徴を学ぶ
第14回 機械式センサの原理,構成を学ぶ
第15回 流体式,光電変換方式センサの原理,構成を学ぶ
授業計画と内容
1.自然界における色の発現のメカニズムとその計測方法
 ・色の三属性ならびにその計測方法(色度,HSI,マンセル記法,L*a*b*)
 ・太陽光の放射特性と色温度
 ・空が青い理由,夕焼けが赤い理由,虹のできるわけ,葉が緑の理由
 ・葉色の計測方法
2.マシンビジョンシステム
 ・マシンビジョンシステムの構成要素とエネルギの流れ
 ・電磁波の分類と照明の基礎
 ・偏光イメージングによる高品質画像入力(植物の各部位のクチクラ層とハレーション)
 ・光学フィルタの設計
 ・カメラの感度特性と種類
 ・画像入力装置の種類
3.照明の基礎
 ・種々のランプ
 ・ガンマ線からテラヘルツ波まで
4.生物の光反射特性
 ・植物各部,土壌,食肉,昆虫の分光反射特性
 ・反射特性,蛍光特性に基づく画像
5.画像の構成と画像処理ソフト
 ・WINROOFの使用方法
6.果実等を対象とした画像処理・計測演習
 ・果実の色,形状,寸法,欠陥の計測
 ・ステレオビジョンに基づく果実までの距離の計測
7.自然界の形状の規則性とその計測方法
 ・果菜類の葉序の規則性
 ・自然界におけるフラクタルとその次元
8.人間の目,昆虫の目,機械の目
 ・人,昆虫,機械の目の機能の比較とその違い
 ・昆虫と植物の共進化
9.種々のセンサと計測システム
 ・機械式センサ
 ・電気電子式センサ
 ・流体式センサ
[授業スケジュール]
第1回 ガイダンスと色の表現方法
第2回 自然界の色のしくみと太陽の放射特性
第3回 マシンビジョンシステムとは?
第4回 照明の基礎,光及び電磁波の分類とその特徴 (1)
第5回 照明の基礎,光及び電磁波の分類とその特徴 (2)
第6回 生物の光反射特性(1)
第7回 生物の光反射特性(2)
第8回 画像処理手法の基礎(1)
第9回 画像処理手法の基礎(2)
第10回 画像処理手法の基礎(3)
第11回 画像処理手法の基礎(4)
第12回 自然界の形状の規則性とその計測方法
第13回 人間の目,昆虫の目,機械の目
第14回 種々のセンサと計測システム(1)
第15回 種々のセンサと計測システム(2)
第16回 期末試験

[授業体制]
第1回から第7回までは講義
第8回から第12回まではPCルーム(S-284)で演習(2班に分かれる)
第13回から第15回までは講義
成績評価の方法・観点
レポート,期末試験等により評価する。

履修要件
「物理学基礎論A,B」を履修していることが望ましい。

教科書・参考書等
[教科書]
農業ロボット(I), 近藤 直, (コロナ社) ISBN:978-4339052152

[参考書]
ファイテクHow to みる・きく・はかる, ファイトテクノロジー研究会 (養賢堂)

農産物性科学(2)-音・電気・光特性と生化学特性-, 近藤 直 他 (コロナ社)
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