農学の新戦略

授業の特色
農産物や畜産動物は交配により優良品種が作り出されてきたが,魚類については今なお天然資源依存性が高い.この授業では,近年発達してきた「増養殖」・「染色体操作」などすでに実用レベルにある魚類生産技術に加え,「遺伝子組換え技術」について解説する.

 

授業の紹介
近年,特にわが国において区切られた一定水域において魚類を畜養する「養殖」技術が発達し,現在ではマダイやブリなどではその生産量の多くをこの養殖に頼っている.さらに,天然では産卵後の短期間に多くの仔稚魚が死滅するため,人工環境下である程度まで飼育した後に天然に放流する「栽培漁業」とよばれる方法も魚類生産の向上を目指して開発されている.しかし近年では,このような放流授業が天然の遺伝子資源に与える影響も考慮するべきであるとの見解もあり,生物多様性の維持と人工的魚類生産との間には解決すべき問題も多い.染色体操作は水圧負荷や熱ショックにより染色体をセットごと操作する方法で,この方法を用いることにより3倍体,4倍体,性の統御,クローン系統の作出が可能となる,この技術はすでに実用レベルにあり,サケ科魚類などに適用されている.遺伝子組換え技術は特定の有用形質を規定する遺伝子を導入することにより,短期間に有用形質を付与しようというものである.成長ホルモン導入による大型化などすでに実験室レベルでは成功例があるが,遺伝子組換え生物に対する社会的受容の問題など,この方法は今後,解決すべき多くの課題を抱えている.

講義詳細

開講部局名
農学部
使用言語
日本語
教員/講師名
豊原 治彦(農学研究科 准教授)

シラバス

開講年度・開講期 (〜2010年)
教員
豊原治彦は農学研究科、応用生物科学専攻、海洋生物機能学分野の助教授である。彼は本学の農学部と農学研究科において教鞭をとっている。彼の研究は120報余の原著論文と15編の著書として出版されている。彼はこれまで8年間にわたり、農林水産省の遺伝子組み換え魚類プロジェクトに関わってきており、その安全性評価委員会のメンバーでもある。
授業の概要・目的
バイオサイエンス・バイオテクノロジーの進展により生物産業に変革が起きている.バイオサイエンス・バイオテクノロジーは,ヒトと地球が直面している食糧,エネルギー及び環境など多くの問題の解決に全く新しい方策を提示する.この技術の展開により,農学は21世紀に向けて変貌する.この現状と展望を農学に関連する様々な分野により講述する.本講義は13人の教官のリレー講義であるが,ここに紹介するのはそのうち特に水産業とかかわりのある「魚類生産とバイオテクノロジー」を扱ったものである.
授業計画と内容
第1回 魚類生産とバイオテクノロジー
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