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第2回「京大おもろトーク:アートな京大を目指して」 『京大解体』 第2回「京大おもろトーク:アートな京大を目指して」 『京大解体』
2015年7月30日(金)

司会:NTアソシエイツ取締役 中津良平先生(以降敬称略、司会)
パネリスト:美術家 森村泰昌氏(以降敬称略、森村)
京都大学人間・環境学研究科教授 酒井敏氏(以降敬称略、酒井)
京都大学農学部資源生物学科4回生 大塚亮真氏(以降敬称略、大塚)
司会
前回は『垣根を越えてみましょか』というタイトルだったのですが、今回はなんと『京大解体』という、もろに、本陣に突っ込むという感じですね。
司会の中津と申しますがちょっと自己紹介も兼ねて、このテーマに関してちょっと追加と言いますか、補足説明をさせていただきます。
実は私、昭和44年京都大学の学生紛争のちょうどピークの時に京大を卒業しまして、当時京大の時計台が封鎖されたり、当然卒業式もなかったですし、そういう時代でございました。
それがほとんど50年の時を経て、今、『京大解体』という文字を再び見るとは私も思いませんでした。実はこういう文字を見るとワクワクしてくるんですね、未だに。
私はノンポリでしたから、参加したことはございませんでしたが、それでも他の学生さんの後についてちょっとデモらしきことをやったり、石を投げてみたりして、非常に楽しいひと時を過ごさせていただいたことを覚えています。
我々も当時京大を解体とか京大を粉砕とか言ってたんですが、当時の京大は、こんなこと言うと怒られそうですけど、今とは比べ物にならないほど、というとちょっと言い過ぎですかね、自由の雰囲気に満ち溢れていて、本当に、京大独自のアイデンティティーを持っていた時代ですね。あのノーベル賞の湯川秀樹先生がまだおられましたし、人文科学研究所ですね、桑原武夫先生、梅棹忠夫先生とか、こういう有名な先生方が本当に綺羅星のようにいらっしゃって、単に学問的にだけ有名なだけでなくて、やはり一般の方にも非常によく名前を知られていましたし、マスコミにもよく出てくる先生方が非常にたくさんいらっしゃった。そういう時代ですね。それに比べると現代の京大は残念ながら、皆さん誰でもよく知っているのは山中さん一人じゃないかなと、山極さんもそうですね。そういったように世の中の日本国民だれでも知っていると言ったような先生方が当時は10人ぐらいいらっしゃったんじゃないかなと。それに比較すると、今、ちょっと情けないなというのが現状でございます。
今日はね本当はこのテーマの発案者でございます山極総長に来ていただく予定だったのですが、急用で来れないということになりました。その理由を聞くと、今日は京大の寮の、ご存知ですね、吉田寮とかございますが、断交の日だそうです。学生たちが先生を離さないという、山極先生がこちらへ来ようとすると学生さんたちがついてくるということなので、これないということらしいです。 なんと京大解体というテーマにふさわしい出来事なのではないかなと。私自身、もしかしたら、ですよ、もしかしたらこの会場に途中で京大粉砕と言って叫びながら学生さんが押し寄せてくるんじゃないかなと、ある種の期待を持って、多分ないと思いますけど、そういう状況でございます。
それからもう一つ。実は私去年まで国立シンガポール大NUSというところで教授をしておりました。そういう意味で、ご存知のようにNUSとは京大とか東大と大学の国際ランキングを競っている、いわばライバル同士。そういうところで私はNUSの中身をよく知っているんですが、一言で言うと、『大変おもろくない大学』ですね。先生方が何をやっているかというと、世間一般、基本的にはアメリカで流行っているテーマを取り上げて、その論文を一生懸命読んで、それにちょっと+αして、論文を書いてジャーナルに出すと。そうすると結構他の先生方引用してくれるんですね。だから今流行っている領域で論文を書いてそれをどんどん投稿して、みんなに認めてもらうと。まさに優等生がやるようなことばっかりやってるわけです。だからおもろくないわけなんですよね。だから京大も双いう風にはなってほしくないんですけど、そうなりつつあるんじゃないかなと。その辺は後でですね、現役の教授であります酒井先生の方から話があるかなぁという風に思います。私自身そういう想いがあるので、今日は山極総長いらっしゃいませんけど、我々で『京大解体』ということで盛り上がってみようという風に思います。

それではですねパネリストの方を簡単にご紹介します。詳しい紹介はそれぞれの方からやっていただけると思います。
まず私の隣ですが、森村泰昌さんでございます。ほとんどの方、ご存知のことと思います。いわゆるセルフポートレートというんでしょうか、自分自身が、例えばレーニンのようにですね、過去の有名な出来事や過去の有名な芸術家、有名な人物になりきるという写真と言いますか、それで世界的に非常に有名な作品を作ってこられている芸術家でございます。これは森村さんから行っていただくことになると思いますが、ともかく彼の写真を見るとですね、おもろいわけですよね。レーニンの。なんでこれがおもろいんでしょう。レーニンの写真の真似と言ったら怒られますけど、だけどみんなおもろいと思うのか。と、この辺にアートの持つ秘密の力が隠されているようですので、それを森村さんに今日はお話ししていただこうと思います。
それから向かい側に酒井敏先生、京都大学、いわゆる総人と呼んでおりますが、昔の教養ですね。残念ながら昔の教養科学部はなくなりまして、今、総合人間学部という名前になってしまいましたが、そこの教授でございます。地球流体力学がご専門だそうです。地球流体力学がなぜ『京大解体』に関係するのか。これはもう酒井先生からダイレクトにお話ししていただくことになると思います。
それからその隣が大塚亮真さん。京大の現役の学生さんでございまして、先ほど言いましたようにこの後ろのゴリラの写真は大塚さんが撮った写真でございます。本人曰く、ゴリラ写真家だそうです。これから、ゴリラ写真家としていきたということで、私としては京大解体した後の再構築するときの、一つの典型的な望まれるような学生像ではないかなと思うんですが、そういう風な話をしていただければと思います。
森村泰昌氏
森村
皆さんこんにちは。森村泰昌です。どうぞよろしくお願いいたします。
ここに四人いるんですけど、私は京大卒業生ではないので唯外部からの人間です。こういうのがあるんだけど、参加してくれないかというご依頼を頂 きましてその時にタイトル、年四回するこのイベントのタイトルがおもろトークだと聞きましてかなり腰を抜かしました。そうですね、京大東の東京大学、西の京都大学なんですね。そこが、総長が音頭をとって、それでやるタイトルがおもろトークだと聞きまして、これはおもろいと思いまして、喜んでお引き受けした次第なんです。おもろトークというタイトルはなかなかよいんですけど、もうちょっとひねってくれてもよかったのかなと思ったりしますね?
つまらない他の例ですけど、おもろナーレというものがあるんですよね。大阪によく行くの人はご存知かと思うんですが、よしもとが、内容は知らないですよ。何をやっているかよくわからないんですが、難波、あの辺りに行きますと、去年、一昨年あたりに行きますと垂れ幕があって、おもろナーレと書いてあるんですよ。おもろナーレというのは、ちょっと芸術が入ってましてナーレというのは大きな芸術の祭典。これにナーレと使うんですね。3年に一度のこれはトリエンナーレです。2年に1度のビエンナーレ。ナーレという言葉を使うんですね。これをかけて、面白くなれというナーレですよね。ナーレとナーレをかけてるんですね。おもしろくないんですけど、いちおう掛け言葉にはなっているんですが、おもろトークはそういうひねりがあるのかと思うと、あんまりないんですね。もう少し考えてもよかったかなと思います。
おもろいっていうのは関西弁ですが、発想は結構いいなと思ってます。というのは、芸術という分野で作品を作っているんですが、特に僕の作品はさっき中津さんと話していたら、今もおっしゃってくださったんですけど、森村の作品はおもろいと言ってくださってるんですが。
一般論として現代の芸術というのはなかなかわかりにくい。花が描いてあって美しいとか、顔が描かれていて人間味が出ているとか、考え抜かれていてよくわからない。
人間はだいたい、わからない時、反応するんですが、よくわからないものはおもしろくないとなってしまう。ここってポイントでちょっとしたひっくりがえし方をすることで世界が広がってくるような気がするんですよ。どういうことかというと、わからないから。ちっとも楽しくないから、面白くないと思うのか、わからないから面白いと捉えるか。これってちょっとしたことです。ちょっとしたことなんだけど、わからないから面白いという風にちょっと前のめりになると、世界がバーッと開けていくはずなんですよね。だからこのおもろトークというのは、何をおもしろいと見るのかがタイトルには盛り込まれているような気がしますし、この催しにもそういうことがあるのかなと思いましてね面白いものがあるといいなぁと。
別に司会者ではないんで解説するわけではないんですが、楽屋で色々と話をしてたんですね。これから酒井先生がお話すると思うんですが、僕は理数科系の人間ではございませんので、非常に分からない部分がたくさんあるんですがむちゃおもろい。
大塚さんのゴリラの写真ありますけども、なんでこういうことするんだろう。ゴリラ写真家。普通は人間に興味を持って、人間のポートレートをとる。これが普通なんだけど、それがゴリラなんだ。むちゃおもろいなとこんな風に興味をもちました。
その中でここにこさせて頂いているんですけど、まず最初にこう私が話をして いるんですが、お話をする人間ではなく、芸術作品を創る人間なんですね。ですから、自己紹介といいますか、私こういうことをしていますと自己紹介するよりも、作品を見ていただこうと思いまして、いろいろあるんですけど、作品といっても私の作品は、結構大きかったりするんですね。3メートルくらいあるのもございまして、ここに持ち込むことができなかったんですね。そこでそこの土佐先生にご協力いただいて、スライドショーを作ってみました。
このスライドショーの中には私の作品、だいたい150カットくらいあります。私の作品というのは中津先生からご紹介を頂きましたが、セルフポートレートっていうのをやってるんですが。セルフポートレートというと日本語に訳しますと自画像。小学校なんかでもよくやりますけど、自分の顔を鏡に映して、それでそれを絵に描くなんていう自画像ですね。
いろんな画家がやっているんですが、私の場合は、絵ではなく、それを写真でやっている。自分を写真に撮って、作品にすると。ですから自画像というより、自写像ですかね。そういうのをやっているんですが。じゃあどんな自分を自画像として作品化するといいますと、日常生活の中ですごしてる自分の一コマを写真に撮るとか、そういうのではないんですね。全然そうではなくて全く逆で何者かにばけるということをやってるんですね。
今日お見せする150カットばかりの作品なんですが、まず分類してみました。まず初めに見てもらうのは、美術の歴史をテーマにしたものです。有名な絵がありますね。ゴッホとかレンブラントとか、いろんな絵がありますね。その絵の中に登場人物が出て参ります。その登場人物に私がばけるというそういう作品です。
パート2。みなさん映画もご覧になると思うんですが、映画の中でもっとも光り輝いてるのはなんだろうな。たぶん女優だろうと。20世紀において、もっとも女性が光り輝いている場所。それは何だろうと考えると、意外とフィクションの世界のことなんですね。それが映画女優。その映画女優に私が、男性なんですけど、男性が映画女優にばけるという入りくんだ構造になっているんですが、これをみていただきます。
3つ目。1951年生まれなんですね。ですから20世紀を半分くらい生きてる。だから20世紀は、今21世紀ですけどかなり気になる時代なんですね。映画というのも20世紀的なもの。
現実の20世紀といいますか、様々なことが起こりました。その20世紀を返り見る時、そこで出てくる人々というのは男たちなんですね。現実の世界、報道写真とか、そういうものの中に様々な男が出てきたり事件が映されたりしますから。そういったものをテーマにして20世紀の男たちに私がばける。先ほどのレーニンもその一人ですが。そういったものをテーマにしたもの。これが三つ目。
4つめ5つ目というのは、これは最近少し手がけていることで、私は美術をやっているということで関係上、美術館ってなんだろう?というのは気になる。美術館と私といったテーマですね。一つ目はプラド美術館というこれはスペインのマドリードにある美術館でその中でとりわけベラスケスのラスメニーナスという作品があるんですね、日本語でいうと侍女たちと言いますか。この作品と、自分自身とが出会うというその中で普通じゃない美術館の中での展開をみてもらおうと。
それから最後、もう一つ、今度はえエルミタージュ美術館という これはあの、ロシアのサンクトペテルブルクにあるんですが。これも見てもらおうと。今度はプラド美術館との出会いとは違いまして、若干説明をしておきますと、最後の方なんですけど、ずいぶん前の第二次世界大戦のあたりの話、1,941年から42年にかけまして、役900日くらいなんですけど、当時はレーニングラードと呼ばれていた。レーニングラードにドイツ軍が攻め入るんですね。レーニングラードの待ちを包囲してしまうんですね。包囲するとエルミタージュ美術館のものすごくたくさんの所蔵品、これもあぶないということで包囲される直前に作品150万点を疎開させるということが起こるんですね。
美術館は空っぽなんだけど、大戦名画、大きな絵がたくさんありますから立派な額縁に入ってますでしょ。額縁ごと持っていくと大変なんで、額縁の中身をを抜いて、150万点全部を疎開させて、1941年から1944年の間、エルミタージュ美術館は額縁だけの作品、そういう美術館になるんですね。そのころのことをロシアの方が絵にしている。その絵をもとにして私が作品を作りました。ただし、その場所、これは現代のエルミタージュ美術館。たくさんのお客さんが見に来るんですが、展示されてる場所は、何十年も前の空っぽになった額縁の中が空っぽになった、そういう状況になっている状態になっている。現代と過去の重なり合ったような幻を見るというか幻視の世界。エピローグとして変な三点、これを入れてまとめております。
ライトを消して、約10分間になりますが、ぜひ見てください。

(ボレロの曲をバックに作品のスライドショーが流れる。)

はい、ありがとうございました。
ということで、ちょっとだけエピローグの三点だけ話をしますと、一つ目が三億円強奪事件の犯人。ただしその犯人というのはモンタージュでしかありませんので、お化けにお化けがなったみたいな感じ。
それから二番目の牛の横に裸で立っているというのがありますが、あれはあのーレンブラントの絵の中にさばいてないお肉があるんですね。それがあの、肉感と油絵の感じがうまくマッチした絵なんだけど、それを現代の風景に置き換えたもので。
三つ目が、これは子供になっているんですけど、この子供はあのフランツ閣下という小説家がございますが、そのフランツ・カフカのこども時代の写真もとにしています。それをフランツ・カフカの時代に、写真館で撮った写真なんですけど、5歳くらいだったんです。私のバージョンは本を持っているんです。だけど本を持っがているその本は何かというと、カフカの変身という本の初版本、それをもっているというありえないものなんですけど、変身というのは私のやってるテーマとも近いものがありまして。ということで、ありがとうございました。
司会
ありがとうございました。3人の方のディスカッションは後でやろうと思うんですけど森村先生にこれだけは聞いておきたいという質問がございましたら…。
酒井
いいですか?ご本人が変身されるのはいいんですけど、バックとか、絵画の中に入り込んだのもありますよね。ああいうセットはどういうものになるのか?観光地の首から出すようなやつになるんですか?
森村
一応ね、企業秘密なんですよね。技法的には多種多様なんですよ。ロケをして、撮ってるもの。実寸の舞台を制作するもの。こういうミニチュア、そういうのをつくって、それを撮影するやり方。首から出すっていうもののもうちょっと精度の高いもの。とかですね、様々なんです。様々な技法のものをその場その場でやって、一緒くたに見てもらおうと。そういう風にしてやっているので。どうやっているのだろうという興味は持ってもらえると思いますね。
大塚
中盤くらいにですね、ヨーロッパの街の中で凶暴にみえるゴリラが出てきたシーンがあって、それが気になったんですけども、なんの写真かもともとの写真がわからないのに、もとの写真を知りたくなるような求心力を感じました。
みなさんこういう芸術というものを知りたいと思ってると思うんですけど、こういう芸術をやろうと思ったきっかけというか、なぜ芸術をやろうと思ったのかお聞かせいただきたいです。
森村
逆に大塚さんに聞きたいところなんですけどね。もうディスカッションで、後でお話しましょうか。