財産法の基礎2(Civil Law (Basic) 1)

授業の概要
「財産法の基礎1・2」は、2年次以降の民事法関係科目を履修するうえで必要となる、民法(財産法)の諸制度に関する基礎的・体系的理解を得させるとともに、法的思考力を養成することを目的とする。
「財産法の基礎2」は、債権法(債権総論・債権各論)を対象とし、諸制度の趣旨・内容・機能につき、確実な基礎的知識を習得させるとともに、単純な事案の法的分析・構成につなげる。

講義詳細

年度・期
2011年度・後期
開講部局名
法科大学院
使用言語
日本語
教員/講師名
松岡 久和
講義ノート
1 不法行為 (1)
9/26  一般不法行為の成立要件(709条)について学習します。
不法行為法から始めるのは、この講義の対象範囲である399条〜724条の最初の債権総則部分(399条〜520条)は、抽象性が高く理解しにくいこと、逆に、不法行為は刑法総論と似たところがあり具体的で直感的に問題を理解しやすい、ということが主な理由です。
教科書『債権 エッセンシャル民法』(以下「E」と略称する)279頁〜290頁
2 不法行為 (2)
9/30 要件論の残りと一般不法行為責任を否定する抗弁事由(違法性阻却事由・責任阻却事由・過失相殺・損益相殺・消滅時効など。712条・713条・720条・722条・724条)をまとめて検討します。
上記1回目の範囲の残りに加えてE290頁〜292頁・301頁〜303頁・307頁〜308頁
3 不法行為 (3)
10/3 一般不法行為の効果として損害賠償の範囲などの諸問題(710条・711条)を取り上げます。
E293頁〜309頁(前回すでに扱った部分を除く)
4 不法行為 (4)
10/7 いわゆる特殊な不法行為(714条・715条・717条・719条、自動車損害賠償保障法、国家賠償法、製造物責任法、失火責任法など)の要件とそれに特有の効果についてまとめて検討します。
E309頁〜319頁
5 契約総論 (1)
10/14 契約の成立と効力(540条〜548条)の諸問題を取り上げます。
E149頁〜166頁、170〜175頁(多くが売買契約の中で説明されていることに注意)
6 契約総論 (2)
10/17 債務不履行を理由とする契約の解除(540条〜548条)の諸問題を取り上げます。
E189頁〜200頁(売買契約のところで説明されている)
7 契約各論 (1)
:売買契約 (1)
10/21 売買契約の諸問題のうち、瑕疵担保責任(570条)以外を取り上げます。
E166頁〜170頁、176頁〜181頁、200〜208頁
8 契約各論 (2)
:売買契約 (2)
10/24 瑕疵担保責任(570条)を集中的に取り上げ、債務不履行制度との関係・錯誤との関係など諸問題を検討します。
E181頁〜189頁
9 契約各論 (3)
:消費貸借契約と無償契約
10/28 消費貸借契約(587条〜592条)の問題と、贈与契約(549条〜554条)・使用貸借(593条〜600条)を取り上げます。
E209頁〜230頁
10 契約各論 (4)
:賃貸借契約 (1)
10/31 賃貸借契約(601条〜621条)のうち、契約当事者間の問題に絞って取り上げます。
E230頁〜239頁、244頁〜248頁
11 契約各論 (5):賃貸借契約 (2) 11/4
賃貸借契約(601条〜621条)のうち、第三者との関係で生じる諸問題を取り上げます。
E241頁〜244頁
12 契約各論 (6):賃貸借契約 (3) 11/7
借地借家法を中心にした特別法によって民法の原則的な規律が、なぜどのように修正されているのかを取り上げます。
E230頁〜248頁をもう一度特別法関係に注目して読み直してみて下さい。
13 契約各論 (7):請負契約 (1) 11/11
請負契約(632条〜642条)のうち、請負目的物の所有権の帰属以外の諸問題を取り上げます。
E249頁〜258頁(254頁〜256頁を除く)
14 契約各論 (8):請負契約(2)ほか 11/14
請負契約(632条〜642条)のうち請負目的物の所有権の帰属に関する問題と、委任契約(643条〜642条)、寄託契約(657条〜666条)の重要問題を取り上げます。
E254頁〜256頁、258頁〜265頁
15 契約各論 (9):組合契約・和解契約ほか 11/18
組合契約(667条〜688条)、和解契約(695条・696条)を取り上げる。雇用契約と終審定期金契約については取り上げない。事務管理(697条〜702条)は、前回の委任契約との関係を意識しつつ、要点だけを取り上げます。
E261頁、267頁〜276頁
16 中間的総括 11/21
前半に学修した範囲内の比較的簡単な記述式の事例問題につき、答案を書いていただき、解説を行います。これによって、学習のポイントや各自の勉強法を反省的に確認します。
2008年度の問題と解説を参考までに掲載しますので、予め練習する際に利用して下さい。
17 債権総論 (1):種類債権ほか 11/25
この回から債権総論に入る。債権の目的の節(399条〜411条)の規定のうち、重要な種類債権・利息債権に重点を置いて取り上げます。
E3頁〜15頁
※以下では2008年度と講義の順序が異なっていますが参考資料は対応するように掲載します。
18 債権総論 (2):債務不履行 11/28
現実的履行の強制(414条)と、債務不履行による損害賠償の諸問題を(不法行為による損害賠償との対比をしつつ)取り上げます。
E17〜43頁
19 債権総論 (3):債権者代位権 12/2
債権者代位権(423条)をめぐる諸問題を、とりわけその転用事例にも留意して取り上げます。そのため関連する登記請求権、賃借権や抵当権に基づく妨害排除請求権など主として物権法の領域の問題についても復習して欲しい。
E45頁〜55頁
20 債権総論 (4):詐害行為取消権 12/5
詐害行為取消権(424条〜426条)の性質論に関わる錯綜した判例・学説の状況と、重要な諸問題について取り上げます。
E55頁〜63頁
21 債権総論 (5):弁済 12/9
弁済に関する諸規定(474条〜504条)のうち、最終回に回す代位(499条〜504条)を除いて取り上げます。受領遅滞(413条)と弁済の提供との関係もここで整理します。
E39〜40頁、123頁〜136頁
22 債権総論 (6):相殺 12/12
相殺の担保的機能に留意しつつ、相殺(505条〜512条)の諸問題を取り上げます。
E136頁〜145頁
23 債権総論 (7):債権譲渡 (1) 12/16
債権譲渡の規定のうち、債権の譲渡性の原則と譲渡禁止特約(466条)、債務者対抗要件(467条1項)までを取り上げます。
E97頁〜106頁
24 債権総論 (8):債権譲渡 (2) 12/19
債権譲渡の諸問題のうち、第三者対抗要件の問題と債務者の抗弁の対抗に関する問題(466条2項、468条)に重点を置いて取り上げます。動産債権譲渡特例法についてもカバーします。
E106頁〜121頁
25 債権総論 (9):多数当事者の債権関係 (1) 12/26
多数当事者の債権関係のうち保証を除く前半部分(427条〜445条)を取り上げます。
E65頁〜79頁
26 債権総論 (10):多数当事者の債権関係 (2) 1/6
多数当事者の債権関係のうち、保証(貸金等根保証や特別法の身元保証法も含む:446条〜465条の5)を取り上げて、その重要問題を検討します。
E79頁〜95頁
27 不当利得 (1) 1/16
不当利得の一般的な要件・効果(703条・704条)を、物権法や債権法の規定・制度との関連性を意識して取り上げます。ただし求償利得は、最終回の求償と代位のところに委ねます。
E321頁〜329頁
28 不当利得 (2) 1/19(変更・確定)
特殊の給付利得(705条〜708条)を概観し、多数当事者間の不当利得のうち重要なもの(騙取金による弁済、転用物訴権、誤振込、第三者の強迫など)を取り上げます。
E329頁〜333頁
29 求償と代位および総合問題 1/19(確定)
求償と代位(499条〜504条)の諸問題を、共同抵当の場合の負担割付と代位(392条)や、多数当事者の債権関係における求償規定、事務管理、不当利得等とも関連づけて取り上げます。あわせて総合的な事例問題演習を行います。このような理由から、この回を最終回に回しました。
E127頁〜129頁、E物権165頁〜170頁
30 定期試験 1/30・追加試験 2/15
六法貸与、持ち込み一切不可
2007年度・2008年度の問題と解説を掲載します。試験のための練習に活用して下さい。

シラバス

開講年度・開講期 2011 後期 配当学年 1年
曜時限 月1・金1
授業計画と内容
双方向・多方向形式を基本としつつ、講義形式を併用する。
各回の授業は、受講者が教科書および予習課題に基づいて入念な予習をしていることを前提に、対話形式により基本的知識を確認しつつ、発展的事項の解説を加えるかたちで行う。

1. 不法行為 (1)・一般不法行為の成立要件
一般的不法行為(709条)の成立要件を概観し、重要な論点を確認する。

2. 不法行為 (2)・一般不法行為の責任阻却事由
一般的不法行為責任の阻却事由(712条・720条など)をまとめて検討する。

3. 不法行為 (3)・一般不法行為の効果
一般的不法行為の効果(709条~711条)としての損害賠償の範囲や過失相殺(722条2項)等の諸問題を取り上げる。

4. 不法行為 (4)・特殊な不法行為
責任無能力者の監督者責任・使用者責任・土地工作物責任・共同不法行為責任など民法上のもの(712条・715条・717条・719条等)のみならず、自動車損害賠償保障法・製造物責任法・失火責任法など特別法をも含め、特殊な不法行為の要件とそれに特有の効果について概観する。

5. 契約総論 (1)
ここから契約法に移動する。契約の成立と効力(521条~539条)をめぐる諸問題を検討する。

6. 契約総論 (2)
債務不履行を理由とする契約の解除(540条~548条)の諸問題を取り上げる。

7. 契約各論 (1)・売買契約 (1)
売買契約(555条~585条)の諸問題のうち、瑕疵担保責任(570条)以外を概観する。

8. 契約各論 (2)・売買契約 (2)
売買契約に基づく瑕疵担保責任(570条)を集中的に取り上げて、債務不履行制度との関係などを含め、その諸問題を検討する。

9. 契約各論 (3)・消費貸借契約と無償契約
消費貸借契約(587条~592条)の諸問題を中心に、贈与(549条~554条)・使用貸借(593条~600条)という無償契約をも合わせて取り上げる。

10. 契約各論 (4)・賃貸借契約 (1)
民法の定める賃貸借契約(601条~621条)のうち、第三者に関する部分を除いて、賃貸借契約の諸問題を概観する。

11. 契約各論 (5)・賃貸借契約 (2)
民法の定める賃貸借契約(601条~621条)のうち、第三者に対する関係で生じる諸問題(605条、613条等を参照)を取り上げる。

12. 契約各論 (6)・賃貸借契約 (3)
借地借家法を中心に民法の賃貸借契約の規律がなぜ、どのように修正されているかを検討する。

13. 契約各論 (7)・請負契約 (1)
請負契約(632条~642条)のうち、請負目的物の所有権の帰属を除く部分を取り上げる。

14. 契約各論 (8)・請負契約 (2)ほか
請負契約(632条~642条)のうち、請負目的物の所有権の帰属に関する問題と、委任契約(643条~656条)・寄託契約(657条~666条)の諸問題を概観する。

15. 契約各論 (9)・組合契約・和解契約と事務管理
契約各論の最後として、組合契約(667条~688条)と和解契約(695条・696条)を取り上げる。雇用契約と終身定期金契約については取り上げない。委任契約との関連性に留意しながら、事務管理(697条~702条)をも合わせて取り上げる。

16. 中間的総括
記述式の事例問題にチャレンジしていただき、簡単な解説を加える。

17. 債権総論 (1)・種類債権・利息債権等
この回からは、債権総論に入る。この回は、債権の目的の節(399条~411条)の諸規定のうち、とりわけ重要な種類債権、利息債権に重点を置いて取り上げる。

18. 債権総論 (2)・債務不履行
現実的履行の強制(414条)のほか、債務不履行による損害賠償をめぐる諸問題(損害賠償の範囲、賠償額の算定など)を検討する。

19. 債権総論 (3)・債権者代位権
債権者代位権(423条)の諸問題を、とりわけ、本来的適用と転用に重点を置いて取り上げる。

20. 債権総論 (4)・詐害行為取消権
詐害行為取消権(424条~426条)に関する複雑な判例・学説の対立状況を正確に理解することに重点を置いて、この制度の意義と諸問題を概観する。

21. 債権総論 (5)・弁済
弁済による債権の消滅に関する諸規定(474条~504条)のうち、代位(499条~504条)を除き、他方で、受領遅滞(413条)を弁済の提供との関係に留意して一緒にここで取り上げる。

22. 債権総論 (6)・相殺
とりわけ相殺の担保的機能に留意しつつ、相殺(505条~512条)の諸問題を検討する。

23. 債権総論 (7)・債権譲渡 (1)
債権譲渡の諸問題のうち、その有効性・債権譲渡禁止特約の問題と債務者対抗要件の問題に限定して取り上げる(466条・467条1項)。

24. 債権総論 (8)・債権譲渡 (2)
債権譲渡の諸問題のうちの残り、すなわち、第三者対抗要件、譲受人に対する債務者の抗弁の対抗の可否を中心に検討する(467条2項・468条)。指図債権に関する諸規定(469条~473条)は取り上げない代わりに、条文のない債務引受けと契約上の地位の移転についても触れる。

25. 債権総論 (9)・多数当事者の債権関係 (1)
多数当事者の債権関係のうち、保証を除く部分(427条~445条)の諸問題を概観する。

26. 債権総論 (10)・多数当事者の債権関係 (2)
多数当事者の債権関係のうち、保証(446条~465条の5)を取り上げる。身元保証や損害担保契約についても言及する。

27. 不当利得 (1)
不当利得の一般的な要件・効果(703条・704条)を、契約制度や物権制度との関連を意識して取り上げる。ただし、求償利得の問題は、最終回の求償と代位のところに関連づけるため、詳しくは取り上げない。

28. 不当利得 (2)
不当利得の特殊問題のうち、特殊の給付利得(705条~708条)、多数当事者間の不当利得について検討する。

29. 求償と代位および総合問題
求償と代位(499条~504条)の問題を、共同抵当の場合の392条の代位や、多数当事者の債権関係における求償の問題、さらには不当利得とも関連づけて取り上げる。
最後に、総括的な事例問題演習を行う。

30. 期末試験
成績評価の方法・観点
成績評価は、筆記試験の成績を基礎として、中間試験(出来が悪くても挽回可能な措置を考慮する)を加味し、さらにプラス・マイナス5点の範囲内で平常点を考慮して最終成績とする。
なお、7回以上欠席した場合には、単位を認めない。
授業外学習(予習・復習)等
[リサーチペーパー]


[その他]
1. 夏休み前くらいを目処に、本システム上に、より詳細な指示等を掲載する。
2. 標準の授業日程では所定の授業回数(29回)に足りないため、1回分は別の時間帯に授業を行う。
3. 前期の『財産法の基礎1』をしっかり履修して、前期試験後に知識の不足部分を自ら補充しておいてください。
教科書・参考書等
1. 教科書
a) 教科書は、以下の①または②。予習範囲の指示もこれによる。
①永田眞三郎=松本恒雄=松岡久和=横山美夏『債権 エッセンシャル民法*3』(有斐閣、2010年)
②潮見佳男『基本講義 債権各論Ⅰ(契約法・事務管理・不当利得)』(新世社、第2版、2009年)+潮見佳男『基本講義 債権各論Ⅱ(不法行為)』(新世社、第2版、2009年)
b) 判例集も必携で、以下の③または④。
③松本恒雄=潮見佳男編『判例プラクティス 民法Ⅱ 債権』(信山社、2010年)
④瀬川信久ほか『民法判例集 担保物権・債権総論』(有斐閣、第2版、2004年)+瀬川信久ほか『民法判例集 債権各論』(有斐閣、第3版、2008年)

2. 参考書
上記の教科書に代えて、以下を利用してもよい。
⑤内田貴『民法Ⅲ 債権総論・担保物権』(東京大学出版会、第3版、2005年)+内田貴『民法Ⅱ 債権各論』(東京大学出版会、第3版、2011年)

3. その他
各回の予習課題を、本システム(WestLaw教育支援システム)を通じて事前配付する。
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