熱力学

授業の特色
物理学、工学、物理化学等に必要な熱力学について講義を行う。特に、高等学校では扱わない熱力学第二法則とエントロピーの導入に主眼が置かれる。初学年でも受講可能にするために、初回に必要な数学的準備も行う。

 

授業の紹介
我々の身の回りの巨視的な物質系は、必ず熱現象をともなう。熱現象は、物質系を構成する原子・分子の微視的な力学法則とは異質な法則性を持つ。巨視的な系は無数の原子・分子から構成され、その原子・分子は追跡不能の振舞いをしているにもかかわらず、系の巨視的な振舞いはきわめて単純な法則に従う。これを体系化したのが熱力学である。温度、相、非可逆性などはすべて、巨視的な系で初めて成り立つ概念である。中でもとりわけ重要な概念は、エントロピーである。熱い物体は放置すれば必ず冷める、あるいは気体は放置すれば必ず広がる一方であるという物理化学における非可逆性の概念と、熱効率100%のエンジンは実現不可能であるという熱工学的な経験が、エントロピーの導入により統一して理解することができたという、科学史上の重大な発見に力点を置いた講義である。

講義詳細

年度
2010年度
開講部局名
全学共通科目
使用言語
日本語
教員/講師名
冨田 博之(教授)

シラバス

教員
冨田博之 教授
研究科長・学部長/京都大学理学博士
京都大学大学院人間・環境学研究科、総合人間学部

資料提供科目:
熱力学
統計物理学
計算理学基礎論

冨田博之教授は、人間・環境学研究科教授(総合人間学部兼担)であり、大学院、学部で物理学ならびに計算理学の講義を担当している。専門は統計物理学、特に非平衡統計物理学・熱力学であり、40編以上の学術論文、ならびに4編の著書がある。日本物理学会会員。
授業の概要・目的
まず、講義を始める前の準備として、熱力学で必要となる偏微分の諸公式、物理学において法則を微分形で書くことの意味について、一通り説明する。

次いで、熱は物質系が有する状態量ではなくて、仕事と同じくエネルギーの変化をもたらす原因であることを強調し、全微分という概念の正確な理解を要求する。このあたりは、講義に出席して肌で感覚をつかんでもらわないと、我流の理解で試験だけ受けてもらっても無理なところである。

こうして、熱、内部エネルギー、温度などの基本的概念の正確な理解の上に立って、巨視的現象の非可逆性と熱機関(サイクル)の熱効率の問題、次いで熱力学で最も重要な概念である熱力学的温度、エントロピー、自由エネルギーの導入に向かう。

あとは、熱力学の応用に際して重要なマクスウェル関係式、相と相転移の概念、混合エントロピーと物理化学的応用を、時間の許す限りで順次、講義する。

* 高等学校の数III程度の微分・積分、および物理のうち力学の知識(仕事、エネルギーなど)に習熟していること。
授業計画と内容
第1回 導入と数学的準備
第2回 熱力学的状態と温度
第3回 熱力学第一法則(その1)
第4回 熱力学第一法則(その2)
第5回 熱力学第二法則(その1)
第6回 熱力学第二法則(その2)
第7回 熱力学第二法則(その3)
第8回 熱力学諸関数
第9回 熱平衡条件と安定性
第10回 相と相転移
第11回 開いた系と混合系(その1)
第12回 開いた系と混合系(その2)
第13回 開いた系と混合系(その3)
成績評価の方法・観点
基本的には定期試験で評価するが、小テストを実施した場合、あるいは自由研究レポートが提出されている場合には、追加評価する。
授業外学習(予習・復習)等
<試験問題集>
講義ノートに演習問題をつけていませんから、その代わりと思ってください。

92年度前期 「物理学4」前半 (後期の統計物理学 は省略)
93年度前期 「物理学基礎通論2」半年科目に変更、内容は熱力学
93年度後期
94年度前期
95年度 長期出張のため開講せず
96年度前期
97年度前期
98年度前期
99年度前期 「熱力学」に改名
2000年度前期 解説
2000年度後期 解説
2001年度前期 解説
2001年度後期 解説
2002年度前木1 解説
2002年度前木2 解説
2003年度前木1 解説
2003年度前木2 解説
2004年度前木1 解説
2004年度前木2 解説
2005年度前木1 解説
2005年度前木2 解説
2006年度前木1 解説
2006年度前木2 解説
問題のみ一括 [PDF] for Windows [PS] for Linux (use gv command)
教科書・参考書等
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