統計物理学

授業の特色
統計力学に至った経過、すなわち、気体分子運動論、古典力学的位相空間とエルゴード性などに重点をおき、必ずしも統計力学を必要としない分野を目指す学生諸君にとっても、現代物理学の重要な分野である統計力学の世界に興味を持ってもらえるような講義である。

 

授業の紹介
まず、多数の分子からなる系に対して、その性質を解明するのに統計的な考え方がどのように役立つかを見るため、高等学校の物理にも出てくる気体分子運動論をくわしく扱う。さらに、系の力学的状態を記述する位相空間を導入し、物理量の観測値である時間平均がどのように表されるか、熱平衡状態が成立するにはこれがどのような性質を持たなければならないかを述べる。これにより、現在の統計力学の基礎である統計集団の考えに自然に行き着くことができる。あとは、種々の統計集団の定義と応用を扱い、最後に量子統計にもふれる。1,2回生でも十分に興味が持てるように、できるだけ平易な内容にとどめている。

講義詳細

年度
2010年度
開講部局名
全学共通科目
使用言語
日本語
教員/講師名
冨田 博之(教授)

<試験問題集>

2002年度後木1
2002年度後木2 解説
2003年度後木2
2004年度後木2
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解説は講義ノートと演習問題解答をよく見てください。

シラバス

授業形態 講義
教員
冨田博之 教授
研究科長・学部長/京都大学理学博士
京都大学大学院人間・環境学研究科、総合人間学部

資料提供科目:
熱力学
統計物理学
計算理学基礎論

冨田博之教授は、人間・環境学研究科教授(総合人間学部兼担)であり、大学院、学部で物理学ならびに計算理学の講義を担当している。専門は統計物理学、特に非平衡統計物理学・熱力学であり、40編以上の学術論文、ならびに4編の著書がある。日本物理学会会員。
授業の概要・目的
まず、気体分子運動論では、圧力だけでなく高等学校の物理では扱わない衝突数をも求め、これから導かれる平均自由行路を計算することにより、気体の実態を明確に把握することにつとめる。これにより初めて、多数分子系を統計的に扱うことが現実的であることを理解できる。

次に、気体に限らず一般の多数分子系の力学的状態の記述に必要な位相空間を導入する。これを用いて、熱平衡状態が存在するためには、代表点の軌道がどのような性質を持たなければならないか、いわゆるエルゴード性の概念にふれる。これにより、現実には不可能な時間平均計算を統計平均計算で置き換える「統計集団」の考え方を導入することができる。

まずミクロカノニカル集団とその応用としてのマクスウェル・ボルツマン分布の導出、さらに統計力学の基礎となる、エントロピーに関するボルツマンの関係式、すなわち異質な法則である力学と熱力学を結びつけた重要な公式を扱う。

ついで、カノニカル集団、大きいカノニカル集団を導入し、分配関数の方法など、その処方を講義する。

後半は、古典系、調和振動子系、固体比熱、プランクの熱放射式などの応用を扱い、最後に、量子統計にもふれる。

* 高等学校数学の「順列と組み合わせ」の基礎が必要となる。1回生でも受講可能であるが、力学の運動方程式、熱力学のエントロピーや自由エネルギーの概念を理解していることが前提となる。後半では量子力学の離散的エネルギー準位の考え方を知っていることが望ましい。
授業計画と内容
第1回 気体分子運動論(その1)
第2回 気体分子運動論(その2)
第3回 位相空間(その1)
第4回 位相空間(その2)
第5回 ミクロカノニカル集団(その1)
第6回 ミクロカノニカル集団(その2)
第7回 カノニカル集団
第8回 応用(1)古典系
第9回 応用(2)調和振動子系(その1)
第10回 応用(2)調和振動子系(その2)
第11回 量子統計(その1)
第12回 量子統計(その2)
第13回 量子統計(その3)
成績評価の方法・観点
基本的には定期試験で評価するが、小テストを実施した場合、あるいは自由研究レポートが提出されている場合には、追加評価する。
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