有機化学実験
低分子有機化合物の反応と合成および分離・精製の基礎技術を習得する。また、化合物の構造確認のための物理定数の決定法とスペクトル分析の基礎を学び、生物検定を取り入れた生理活性物質の取り扱いを習得する。
講義詳細
- 年度・期
- 2011年度・後期集中
- 開催日
- 2011年12月05日 から 2012年1月17日
- 開講部局名
- 農学部
- 教員/講師名
- 森 直樹
中川 好秋
宮下 正弘
小野 肇
村井 正俊
安部 真人
吉永 直子
シラバス
開講年度・開講期 | 2011年度 後期集中 | 授業形態 | 実験 |
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対象学生 | 3回生 | 曜時限 | 週5回 3・4・5限 |
教員 | 森 直樹 中川 好秋 宮下 正弘 小野 肇 村井 正俊 安部 真人 吉永 直子 |
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授業の概要・目的 | 第1回 ガラス細工:ガラス管、ガラス棒を用いて、目皿抑え棒、キャピラリーを自作する。 第2回 植物生長調節活性を持つ2,4-Dの合成(1):試験管内で試薬を反応させ、結晶を目皿で濾過後、デシケータで乾燥まで。 第3回 植物生長調節活性を持つ2,4-Dの合成(2)、殺虫剤tebufenozideの合成(1):① 2,4-Dをトルエンで融解し、再結晶する。② 酸クロリドとアミンを反応させ、分配・抽出する。その後、濃縮し、再結晶まで。 第4回 植物生長調節活性を持つ2,4-Dの合成(3)、殺虫剤tebufenozideの合成(2):① 2,4-Dを濾過し、デシケータで乾燥する。② Tebufenozideの結晶をデシケータで乾燥する。 第5回 甘味剤サッカリンの合成(1)、2,4-Dを用いたレタス試験、Tebufenozideを用いた殺虫試験:① Toluenesulfonamideのメチル基を過マンガン酸カリウムで酸化する。② レタス種子を2,4-Dで処理し、レタスの成長を記録する。③ 重要害虫のハスモンヨトウをtebufenozideで処理し、殺虫活性を評価する。 第6回 甘味剤サッカリンの合成(2)、2,4-D、Tebfenozideの生理活性評価:① 酸性条件下、サッカリンへ変換する。② レタス、ハスモンヨトウの観察(以下、毎日観察・記録する) 第7回 天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製(1):サワラ抽出液を濃縮・分液し、トルエン可溶酸性部を得る。 第8回 天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製(2):シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ピシフェリン酸を精製する。 第9回 天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製(3):ピシフェリン酸を結晶化により精製する。 第10回 Diels-Alder反応を利用した2,3-ジメチルアントラキノンの合成(1):1,4-Naphthoquinoneと2,3-dimethyl-1,3-dieneを加熱し、テトラヒドロ体を合成する。 第11回 Diels-Alder反応を利用した2,3-ジメチルアントラキノンの合成(2):テトラヒドロ体をアルカリ性条件下で空気酸化し、2,3-dimethylanthraquinoneに変換し、結晶化により精製する。 第12回 天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製(2):シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ピシフェリン酸を精製する。 第13回 ±)-1-フェニルエチルアミンの光学分割(2):メタノールに対する溶解性の違いを利用し、ジアステレオメリックな塩を分離する。これを強塩基で処理し、弱塩基のアミンを遊離する。 第14回 Wittig反応を利用した(E)-、(Z)-スチルベンの合成(1):ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド・ナトリウムアミド混合物とベンズアルデヒドから(E)-および(Z)-スチルベンを合成する。 第15回 Wittig反応を利用した(E)-、(Z)-スチルベンの合成(2):シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、(E)-、(Z)-体を分離する。 第16回 機器分析(1):合成した化合物のUV、MSスペクトルの測定。 第17回 Wittig反応を利用した(E)-、(Z)-スチルベンの合成(2):シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、(E)-、(Z)-体を分離する。 第18回 抗菌試験(1):精製したピシフェリン酸や身近な抗菌物質を用い、抗菌性試験を実施する。 第19回 抗菌試験(2):抗菌試験の結果を判定する。 |
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授業計画と内容 | 1)基本操作の説明 実験の進め方と器具の取扱いについての説明を行う。ガラス細工によって,実験に必要なピペット,攪拌棒を作成する. 2)E- および Z-スチルベンの合成 ベンズアルデヒドとベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイドとの Wittig 反応から E- および Z-スチルベンを合成し,両者を分離精製する。 3)(±)-1-フェニルエチルアミンの光学分割 (±)-フェニルエチルアミンの (+)-酒石酸塩を調製し,分別結晶法により (–)-フェニルエチルアミンを回収する。 4)サッカリンの合成 甘味剤サッカリンを o-トルエンスルホンアミドから過マンガン酸カリウムによる酸化反応を利用して合成する。 5)2,4-Dの合成と生物検定 植物生長調節活性をもつ 2,4-D を合成し,植物幼苗の生長に対する作用を検定する。 6)2,3-ジメチルアントラキノンの合成 炭素-炭素結合形成反応の一つである Diels-Alder 反応を利用して 1,4-ナフトキノンと 2,3-ジメチルブタジエンから 2,3-ジメチルアントラキノンを合成する。 7)天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製 ヒノキ科植物サワラより抗菌性ジテルペンのピシフェリン酸を単離精製し,各種機器分析法による構造確認と抗菌活性の測定をおこなう。 8)昆虫成育制御型殺虫剤のひとつであるテブフェノジドの合成を行い,その殺虫活性を調べる。 9)合成した化合物の核磁気共鳴スペクトル,質量スペクトル,紫外吸収スペクトルなどを測定し,構造確認の手法を習得する。 [授業スケジュール] 第1回 ガラス細工 第2回 植物生長調節活性を持つ2,4-Dの合成(1) 第3回 植物生長調節活性を持つ2,4-Dの合成(2),殺虫剤tebufenozideの合成(1) 第4回 植物生長調節活性を持つ2,4-Dの合成(3),殺虫剤tebufenozideの合成(2) 第5回 甘味剤サッカリンの合成(1),2,4-Dを用いたレタス試験,Tebufenozideを用いた殺虫試験 第6回 甘味剤サッカリンの合成(2) 第7回 天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製(1) 第8回 天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製(2) 第9回 天然抗菌物質ピシフェリン酸の単離・精製(3) 第10回 Diels-Alder反応を利用した2,3-ジメチルアントラキノンの合成(1) 第11回 Diels-Alder反応を利用した2,3-ジメチルアントラキノンの合成(2) 第12回 (±)-1-フェニルエチルアミンの光学分割(1) 第13回 (±)-1-フェニルエチルアミンの光学分割(2) 第14回 Wittig反応を利用した(E)-,(Z)-スチルベンの合成(1) 第15回 Wittig反応を利用した(E)-,(Z)-スチルベンの合成(2) 第16回 機器分析(1) 第17回 機器分析(2) 第18回 抗菌試験(1) 第19回 抗菌試験(2) [授業体制] 各回,簡単な講義後,学生実験室で実験を行う。担当教官全員で学生実験を指導する。 質問がある場合には,学生実験時間中に随時受付ける。 |
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成績評価の方法・観点 | 出席,実験態度およびレポートにより,総合的に評価する。 |
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履修要件 | 関連講義:応用生命科学入門IV 有機反応機構論I・II 有機構造解析学(B114) を受講しておくこと。 |
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教科書・参考書等 | [教科書] 授業中に指示する |